それ、リスキリングじゃなくてスキルアップやないかい!事案
個人的に「リスキリング」という言葉の氾濫が好きくないだが、どうにかならないものか。ねぇ、それ、従来の「スキルアップ」でいいじゃないの?という事案が、マイナビ転職の調査とかでも見られる昨今で、毎度やきもきしてしまう。
マイナビ転職「リスキリングに対する意識調査」で、リンク先の中ほど「リスキリング経験者が習得したスキル」の上位3つは、こうだったのだそうで。
1位:AI・生成AI活用
2位:会計・財務・簿記、ファイナルシャルプランナー
3位:ビジネス英語・語学・グローバルスキル
2位の会計、3位の語学、はて何を「リ」したのか、何を「手放した」というのかと。「それ、スキルアップやないかい!」「もう、それ完全にスキルアップやがな」というツッコミが、ミルクボーイ内海さんの声で私の脳内に響き渡る。
当初、リスキル(re-skill)という言葉は、アップスキル(up-skill)と手をたずさえて欧米から入ってきたと記憶しているが、2つ並んでいるときには、リスキルの意味を分別して、とらえやすかった。
つまり、アップスキルは「今もっているスキルに上乗せして」習得するのに対して、リスキルというのは「これまでに習得・活用してきたスキルを手放した上で(アンラーニング)」新たなスキルを習得するもの、使うスキルをこれまでと差し替えるもの、と特徴づけられていた。「アンラーニング」過程を含むために「捨てる」痛みを乗り越える、それがリスキルを特徴づけるポイントだったはずなのだ。だからこそ「リ」は、「アップ」と別立てで爆誕したのだもの。
しかし最近は「アップスキル」が鳴りをひそめ、「リスキル」だけが一人歩きするようになった。そして気づけば、それって従来の「スキルアップ」って言ったほうが誰にも誤解が生じないし、適正な言葉選びなんじゃないの?別に、いま話していること、いま質問していることって、「これまでの知識・スキルを手放して、捨てて」って過程を含んでいないし。そういう事案が散見されるようになった。
結果、リスキリングの調査レポートなんぞ読んでも、丁寧にやっていないものは、調査元、調査対象者、調査レポートを読む人の「リスキリング」の意味解釈がばらばらで、スキルアップ全般の広義なものをイメージしている人、アンラーニングを伴う狭義の「リスキリング」をイメージしている人が入り乱れ、まともな情報伝達やコミュニケーションが成立していないのだ。
言葉は、その意味を変えていくもの。今は広く「スキルアップ」の代替として「リスキリング」が使われるように語釈が変化したのじゃと言われれば、私自身に認識のアップデートが必要なだけかもしれないけれども。まだ、そこ整備されていないんじゃないかなぁ。そういうわけで調査の精度が落ちている気がする。きちんと調べたい調査なんだったら、きちんと調査元と調査対象と調査レポートの読み手で共通理解できる言葉を選んだり、説明を加えながら調査するなど、工夫を凝らしたほうがいい時期だと思うけどなぁ、と思っちゃうんだな。






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