スタートアップに限らない「スタートアップのための人事制度の作り方」を読んで
金田宏之さんの著作「スタートアップのための人事制度の作り方」が大変ためになったのだけど、この本に掲載されている「従来の日本企業とスタートアップの人事制度の特徴」という表に改めて目を通してみて思ったことメモ(クリックかタップすると拡大表示する)。
上の表は本の始めのほうにあって、従来企業と対比的にとらえた「スタートアップの人事制度の特徴」を示したもの。「スタートアップのための」本なので、表の右側のスタンスで行くよという本作の方針を指し示しているわけだが、これって「スタートアップ企業のための」に限らないよなって思ったのだ。
現在の人材市場を前提にすれば、これまで左側の「従来の日本企業」型をとってきた企業も、「スタートアップ」型の人事制度に移行・改訂せざるをえない情勢にあるんじゃないかなと。
少なくとも一旦検討プロセスを踏んだ上で、あえて差別化するために移行しないという意思決定をするならいいが、なんとなくそのままというのでは、この先の人材マネジメントがうまくいかなくなるんじゃないかと危惧する。
上の項目一つとっても、外の会社が「実力と成果と経験をベースとした昇格管理」をしている世の中で、「年齢と勤務年数をベースとした昇格管理」を続けているには、それなりの採択理由と説明責任が問われる。そこで納得いく理屈が説明できないと、有能な若手の離職リスクが高まる。
「従来こうだったから」「うちはこうだから」だけで従来方針を固持するのは早晩無理が出てくるというか、すでに無理が出てきているというか、けっこう今がぎりぎりの局面なのかも。検討の上「それでも、あえて」という会社があっても、それはそれで差別化とも言えるし、労使関係が双方で納得しているならありじゃないかと思うけれども。
この表のうち私が、これは「従来の日本企業」型でも「スタートアップ」型でも、各社でどちら型で行くか方針決めたらいいと思ったのは4項目に過ぎなかった(青色の背景色をしいてある項目)。この4項目は、各社ごとに色が違っていいだろうなぁと普通に読んだ。
1.「職種共通」の等級要件か、「職種別」の等級要件か
どれくらい「職種」ごとの分化して等級要件を定義するかは、事業ステージや各社の方針次第では?と思うので
2.「1次評価者・2次評価者」体制か、「メイン評価者・サブ評価者」体制か
後者は、直属上司をメイン評価者にして評価裁量を与えたほうが納得感高くないか?という話で、それはもっともだと思う。ただまぁ、どちらも評価者2名体制。制度上どちらにしても、結局どちらがメイン裁量権をもつかはその2人次第になりそう(運用圧が強そう)なので、一旦その会社の人たちが受け入れやすいほうを採用するのが現実的かも?ケースバイケース。こだわる人がいるなら、ここは譲りどころ
3.報酬の上下移動を「安定的」にするか、「刺激的」にするか
これは各社のポリシー次第、きちんと方針を決めて社員に共有すべきところ
4.報酬に「賞与、豊富な諸手当」を設けるか、「ストックオプション、最低限の諸手当」とするか
ここも各社の事業ステージとポリシー次第、きちんと制度化して全社共有すれば良いかと
逆に、この4項目以外は、スタートアップ企業かどうかを問わず、移行・改訂(少なくとも、その検討)に迫られている気がしたが、どうなんだろう。私は、従業員が万単位とか十万単位とかの企業とつきあいがないし、業種・業態的にもクライアントが偏っているので、もっと視野を広げたら見解を異にするのかもしれない。あまり決め込まずに、今後も目と心を開いて事にあたっていこう。
とにもかくにも、この本は「スタートアップ企業のための」じゃなくて「スタートアップ企業に限らず、今の時代のあらゆる企業に」有用なエッセンスが詰まっている良書だなぁと、ありがたく拝読した。
金田宏之「スタートアップのための人事制度の作り方」(翔泳社)
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