2022-04-28

「Web系キャリア探訪」第39回、語られがたい光

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第39回が公開されました。今回はSBテクノロジーでWebフォントサービス「FONTPLUS」を手がけ、エバンジェリスト(またの名を「フォントおじさん」)としても知られる関口浩之さん(の裏の顔?というか、今日に至るまでの分厚いキャリア)を取材しました。

「50歳を過ぎたら知見の伝承を」Web黎明期を支えた“フォントおじさん”が長年働いて気づいたこと

関口さんの講演を以前に拝聴したことがあって、私のような門外漢でも、お話を聴く数十分のうちに「フォント」への関心がぐいっと引き上げられるのを感じて、これがエヴァンジェリストの手腕かぁと感心してしまったのが数年前のこと。

表層的なプレゼンの巧さっていうのではなくて、ほんと(あ、ダジャレじゃなくて)フォントへの造詣が深くて、一つひとつの書体の個性にも通じていて、それぞれを愛情豊かに紹介する雄弁さも人並みはずれていて。

その一方、私たち聴衆に向ける表情は好奇心旺盛な少年そのもの、ずっとにこやか&なごやかで、会場中みんなが快く関口さんの語りに巻き込まれていく舞台パフォーマンスには、ものすごいインパクトがありました。

そのイベントの懇親会で少し立ち話をさせていただいたのですが、当時は定年を間近に控えていらした時期だったかな、それまでの激動のキャリアにも話がおよび、ぜひゆっくりお話をうかがえたらなぁと思っていた方だったのです。そんなわけで、この度そのものずばりキャリアについて取材させていただく縁に恵まれて、記事としてシェアできることを大変うれしく思っています。

あれから数年が経ち、現在はすでに定年を迎えられて、SBテクノロジーには嘱託社員という契約に切り替えてお仕事されていますが、今も超ご活躍。SBテクノロジー在籍27年をひも解き、1995年からビジネスプロデューサーとして数々の新規事業を立ち上げ、今に至るまでのキャリア変遷をうかがいました。

記事内の「二人の帰り道」にも書いたように、旺盛な好奇心が底力として働いてきたのであろうなぁと強く思う次第なのですが、そうした少年の魂と同居するようにして関口さんに一貫して感じられるのは、人・こと・ものに真摯に向き合う姿、それをすごく大事にしていること。

その心持ちが、関口さんの包容力、にとどまらず、深い洞察力や、多方面への目配せ力、いろんな人を巻き込んだり巻き込まれたりする中での事業推進力やチーム統率力、関わる人・こと・ものの全部を有機的につないで事業を軌道にのせていく、もう一つの底力としてずっと働いてきたのだろうことが察せられました。

関口さんも記事内で、専門職へのコンプレックスがあったと言及されていますが、上に書いたような働きというのはなかなか具体的な言葉が追いつかなくて、周囲もそこに専門性を見出して褒めたり評価したりというのが、その場で直接的には難しかったりする。

けれど関口さんだからこそ場面場面で人から引き出せたこと、目配せできたこと、あって気づいたけど口にせず相手を信じて待ったこと、誰かの訴えを咀嚼して別の誰かに翻訳してうまく伝えられたこと、一見つながらない何かと何かを結びつけて発想できたこと、リスクを前もって回避できたこと、いろんな壁を乗り越えて前進させられたことが、これまでにたくさんたくさんあったんだろうなって思うのでした。関口さんがそこにいなければ、そうは成らなかったということが。

結局私も「なんとなく、そう思いました」にとどまっているのが、まったく力不足なわけですが…。でも、誰に認められるか、どれだけ多くの人に認められるかって話とは別に、「こういう役割を果たせた」って自分で自分を認められるキャリアの満たされ方もあるんじゃないかって思っていて、そういう充実感を関口さんの笑顔に覚え、勝手に受け止めながらお話をうかがいました。

いろんな世代、いろんな職種の方に、何か思ったり思い出したり、考えたり感じたりするきっかけをお届けできるんじゃないかなと願っています。自分がごきげんに仕事を楽しめるように、深い自己理解のもとにキャリアを舵取りしてこられた軌跡も読みごたえあり。ぜひお時間よろしいときに、ご一読いただければ幸いです。

2022-03-31

「Web系キャリア探訪」第38回、文化人類学とUXリサーチをつなぐふらっと

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第38回が公開されました。今回は大学で文化人類学を専攻し、リクルートを経て、現在はメルペイで活躍するUXリサーチャーの松薗美帆さんを取材しました。

「リサーチは思ったより深い沼だった!」ストイックに学び続けるメルペイUXリサーチャーのキャリア観

今のところデジタルプロダクトのUXリサーチ業務を手がけている実務家の中で、もともと大学で文化人類学を専攻していたという方は、まだ希少ではないかなと推測。松薗さんも就活していた時には「UXリサーチ」という仕事領域があることを認識していなかったそう。

「文化人類学とUXリサーチ」のように、実は深いつながりをもつんだけど、今の自分の中では点と点がつながっていないコンセプトをぱっと結びつけてくれるのって、ふらっと訪れる機会、周囲の人の一言だったりしますよね。自分の内から生まれるというより。

ある外的なきっかけによって、自分の内にあるバックグラウンドと、外にある新しいものが「ぱっ」とつながって、「はっ」とすることがあるなって思うんです。それを活かすも流すもあなた次第ってところ含めてキャリアを歩む醍醐味かなとも。

松薗さんのお話からは、そういう機会をオープンな眼差しで受け入れて、自分のキャリアの可能性をぐんぐん広げて舵取りしていく様子が存分に感じられました。

キャリア論として「キャリアはデザインすればするほどいいわけじゃなくて、一旦大まかに定めたら、そこでキャリアドリフト(漂流)の期間をもってしっかり目の前の仕事・役割を果たす中で経験・能力をものにしていく」重要性が説かれますが、松薗さんのキャリアはそれを地で行く。

今自分がいる場所、役割、立ち位置、周囲との関係性の中で「今の自分ができること」を導き出して、着実に成果を出して組織に貢献し、人の信頼を得て、次のステップを手繰り寄せていく丁寧で誠実な仕事ぶりも、キャリアの初期からうかがえて脱帽。

それからまた「リサーチ1本、これの専門家」というのではなく「リサーチの軸を持ちつつ、事業をリードするキャリア」を目指したいというふうに、自身の役どころを別に立てているところにも、ご自分の志しや心模様をこまやかに汲んでいる感じがうかがえて素敵でした。

本業を務めながら、本を執筆する、大学院に通う、大学の非常勤講師を務めるなど、様々な活動を並行して展開する様子も、今どんどん遭遇機会が増えている「本業一本ではない働き方、社会とのつながり方」を模索する方の刺激になるかも。ご興味ある方は、ぜひお時間のあるときに読んでみてくださいませ。

2022-02-24

「Web系キャリア探訪」第37回、バリバリ働きたい人の実現法もやり

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第37回が公開されました。今回はDMMで50を超える事業のマーケティングを横断的に手がける武井慎吾さんを取材しました。

転職を重ねた“Mr.ジョブチェンジ”、DMMに見出した「おもちゃ箱」のような魅力とは!?

工業高校で電気・機械を学んだ武井さんは、新卒で機械メーカーに就職、メカニックエンジニアとして働きだすも程なく退職。その後、片手では足りない数の会社を転々として、自分のキャリアをオリジナルに育んでいきます。

「やってみないとわからないから、やってみよう」というシンプルな行動指針で、実際に行動してきた武井さんのキャリア変遷には、とりわけ「やる前から情報に埋もれて行動停止」してしまいがちな昨今、頭でっかちになっている自分に問いを投げかけ、身を軽くしてくれるお話だったなと思います。

とにかくフットワークが軽く、バイタリティがあって、自身で仕掛けたチャレンジを、方々で着実にモノにしていく。その経験を無駄なく肥やしにして自分ができることを増やし、動けるフィールドを広げ、自分がやりたいことをさらに鮮明にして、それが実現できそうな場所に身を移して新たなチャレンジを仕掛ける。現職の、言わばカオスな環境を「おもちゃ箱」と見立てて存分に楽しむ姿は、実に清々しい。

「過去の/自分の育て方」と「今の/部下の育て方」を分けて、より確度の高い部下の育成法について語ってくれた話も、経験に裏打ちされたお話でありがたかった。ご興味ある方は、ぜひお時間のあるときに読んでみてくださいませ。

そして、ごくごく個人的な編集後記的にネットの片隅でメモりたいのは、「バリバリ働きたい」という今の若者が「働きにくい」と不自由を感じないよう、バランスをとっていきたいんだよなぁという考えごと。

以前、大学生にキャリア講話をする機会があって、その後のアンケートに「自分は社会に出たらバリバリ仕事したいと思っていて」って書いてくれた学生さんがいた。そりゃ、そうだ。ワークライフバランスに向かう今の時代であれ、「24時間戦えますか」なバブル期であれ、バリバリ仕事したい若者もいれば、仕事ほどほどにプライベートを重視したい若者も社会に出てくる。仕事を始めてみたら、その価値観に変化を覚える人だっているし、ライフステージによって同じ人の中でも優先順位が変わるのが人の常だ。

今はどちらかというと、過重労働にならないよう社会で改善活動を進めている最中って感じだけど(そして、それ自体を否定する気はないけれど)、度を越して社会の縛りをきつくして、バリバリ働きたい若者が「バリバリ働けない」不自由を強いる環境を構築するのも、なんか、それはそれでバランス悪いんだよなって思ったりしてしまう。

AかBの行ったり来たりじゃなくて、1つ高い次元に引き上げて止揚したCを創り出すのが人間の知性。AもBも、その人の希望やライフステージによって選べる選択肢を用意する社会を目指すほうが健全な気がするんだけれども。まだもんやりしすぎていて、今それ以上語るな、もっと考えてからものを言えと言われれば、そうですねとしか返しようのないところで空を見上げている。

1社に就職して、そこだけで「バリバリ仕事」を実現するのは社会制度的に無理が来るとしたら、今後はそういう人たちの選択が「本業と副業」とか「本業とボランティア」とか、あるいは会社員ではなく雇用する側に立つこととするのか。そういう選択を、本人が自らすれば実現しうる社会制度が充実していくことになるのか。もんやり考える。もんやりすぎる。

2022-01-27

「Web系キャリア探訪」第36回、自分の興味って何よりの源泉

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第36回が公開されました。今回は不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME'S」をはじめ、さまざまな生活関連サービスで事業を多角化するLIFULL(ライフル)の小川美樹子さんを取材しました。

コーダーからUXリサーチャーへ! 興味あることを追求して築き上げたキャリア

小川さんとは「CSS Nite」というWeb制作者向けイベントが立ち上がった2000年代後半から面識はあって、セミナーや懇親会の会場などで顔を合わせていたのですが、きちんとお話を伺うのは今回が初めて。気がつけば、最初にお目にかかったときから10数年の年月が…。

記事内でインタビュアの森田雄さんが解説くださっているとおり、1990年代から2000年代にかけてHTMLやCSS、Adobeのグラフィックツールなど使ってWeb制作の仕事を始めた人は、これまでの道中で「今後あなたは、どこ専門で極めていくんですか?」っていうキャリア選択の分岐点があった方、多いと思うんですよね。

Webまわりの市場発展、制作技術の専門高度化、業務の複雑化、職種の専門分化とあれやこれやの変化にもまれて、そのままの職能を発揮しているだけでは、このさき自分の労働市場価値を維持できない壁が立ちはだかってきたというか。

JavaScriptに抵抗がない人は、フロントエンドエンジニアとして実装力を高めていく。一方で、どうにもそっち方面は肌に合わないという人は、別の路線にシフトチェンジを余儀なくされたりして。

グラフィックデザイン出自の人は、それを足場にしてWebサイトやスマホアプリのUIデザインを極めていったりとか。紙もWebも媒体特性を使い分けてビジュアルデザインできるところを強みにしていくとか。

あるいは、文章を中心としたコンテンツ作りを極めていくと、Web媒体のライターというのもあったり。情報を構造的に扱うというのだと、インフォメーション・アーキテクト(IA)に進む人も。

またマーケティング、ビジネス寄りに軸足を移す人もいれば、アクセス解析を極めてデータの扱いに長けたアナリスト、データサイエンティストに転じる人もいたのかな。

新しい技術、潮流を取り込んで仕事化する技術者な人だと動画編集とかもあるかと、とにかくいろいろな展開を見せている感じ。

そして小川さんが関心をもって追求したように、ユーザビリティ、HCD、UXデザインの方向に向かった人も少なくない。

小川さんのキャリア話をうかがうと、就職してからここ20年とかで起きた技術進化、Web制作まわりの労働市場の変化、そして自分自身の関心の変化や広がりを、見て見ぬふりすることなく都度、正面から丁寧に受け止めて適応してこられた様子がうかがえます。力みなくお話しされる中には、彼女の着実さと大胆さ、自主性と受容性が健やかにバランスされている感じがして、大変聴きごたえがありました。

時と場合によって、転職を選ぶこともあれば、今の組織の中で自分の役立てどころを模索して自ら作り出していく選択もしてこられた。事業ステージに応じて、いま自分がどう組織に貢献できるか、それは自分の関心事とどう結びつけることができるか、主体的に問いを立てて、組織と良い関係をつむぎながら仕事に向き合ってこられているんですよね。

組織の中での自分の役割や仕事内容を、組織がこしらえた枠組みありきではなくて、自分で思案して、上司や周囲と相談しながら作り出していく。組織内にとどまらず、社外も含めて活動を広げ、経験を積んでいっている。それを地で行っている感じが素敵だなぁと思いました。

「自分の興味の向くところ」って、大事な自分のキャリアの道先案内人になる。自分の中に芽生えてきた関心ごとを、適当に扱っちゃもったいないな、それを育てて役立てたいなら、注意をもって拾い上げて、実務で活かせるレベルまで自分で引き上げていく活動に出るべきだよな、そうしたらきっと楽しいよなって、シンプルに背中を押してくれるようなお話です。私もそろそろ元気を取り戻さねば。ぜひお時間の良いときに、読んでみてくださいませ。

2021-11-25

「Web系キャリア探訪」第35回、自分の配置・配役を再定義する

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第35回が公開されました。今回は、ビジネス・アーキテクツ等でWebサイト構築のプロジェクトマネージャーとしてキャリアを積んだ後、現在はふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンクで取締役、事業本部長を務める和田正弘さんを取材しました。

自分の適性を模索した20代。「ものづくり」で切り開かれたキャリア

今回は、1年半ぶりのリアル取材。訪れたのは渋谷スクランブルスクエア内のWeWork。エレベーターで高層階に上がると、通常の2~3倍はあろうかという高い天井、そのてっぺんから足元まで全面ガラス張りの窓に囲まれ、遠くの遠くまで夕景が見渡せ、フロアを行き交う人たちが全員ラグジュアリーに見える空間が広がっていました。フロアに立った私の脳内にはなぜか「金持ちの空中庭園や〜」という彦摩呂の声が響きました。

それはそれとして今回は、インタビュアとしてご一緒している森田さんの前職時代の後輩がゲストで、お二人は旧知の仲。久々のリアル取材も相まって、とりわけわいわい楽しい取材となりました(写真がわいわいを物語ってくれている)。直接会ってお話しできるって素晴らしい。

大学生の頃は「輸入盤レコードを扱うレコード屋の店長とかやってゆっくり暮らしたい」と思っていた。そこから、Webサイト構築のプロジェクトマネージャー、ふるさと納税総合サイト運営会社の取締役、事業本部長を務めるまで。どういう経緯をたどって、何を考えてキャリア選択してこられたのか。そこには、2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災の体験が大きく関わっています。その体験をどう咀嚼し、ご自身のキャリア選択に組み込んで舵をきってこられたのか。

お話を伺っていると、「自分をどこに配置して、どう配役しようか」という目線をもって節目節目で自分の社会との関わり方を再定義してこられたように感じられました。自分を客体としても主体としてもバランスよく語られる話し方が印象的で、個人的に共鳴するところも多く、刺激的な取材でした。「ものづくり」出自の人たちが、あるようなないような隔たりを突破してビジネスを動かしていく活動も応援したい。ぜひお時間の良いときに読んでみてくださいませ。

2021-10-21

「Web系キャリア探訪」第34回、令和版の師匠・親方像を想う

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第34回が公開されました。今回は、1996年メルシャンに新卒入社以来、一貫して食・飲料メーカーの中の人としてブランドのクリエイティブを手がけてこられたサッポロビールの福吉敬さんを取材しました。

美大卒、「メーカーの中の人」という立場でデザインに携わる理由

新卒1年目でいろんな現場に修行に出されてプロの仕事を実地で覚え、メルシャンから出向した味の素で腕を磨き、4マス媒体からWebまでを取り込み、クリエイティブに留まらずブランド全体に関わっていく福吉さんの歩みをたどりました。

特にボージョレー・ヌーヴォーのブランドマネージャーとしてのお仕事は完全燃焼の感があって、自分の人生の中にこういう時空体験を持っているというのは、それ自体が素敵なことだし、その後の自分の支えにもなる、それとまた違うステージに自分を送りだす後押しにも好作用するんだろうなって思いました。

「いろいろやりたい」という旺盛な好奇心を、どう自分のキャリアの中で体現していったのかも読みどころだし、実際にいろいろやってこられたからこそ今、若手育成にあたたかく落ち着いた眼差しを向けられている感も味わい深く。

人材育成に関わるっていうのは、これという1個の正解がない、これまたものすごい創造的な活動なんですよね。しかも今の時代背景で、Webを含めたコミュニケーションデザインの分野ともなると、昔のやり方を踏襲してブラッシュアップを加えていけばいいという話でもなく、はんぱない創造性が求められる役割。

クリエイティブを扱う専門職の立場から、これまでのご経験をぞんぶんに活かしてどんなふうにご自身の師匠像を形作り若手育成に取り組んでいかれるのか、とても楽しみだし心から応援したいです。ぜひお時間の良いときに読んでみてくださいませ。

2021-10-19

大学の授業で「キャリアデザインする前に知っておくと良さそうなこと」を談義する

大学生向けにキャリアデザイン談話(といっても授業枠っぽいのだが)をしてみないかという話をもらった。勤め先のYouTube公式チャンネルにあげていた「クリエイターのためのキャリアデザイン講座」を見てくれた昔の勤め先の元同僚が、自身の担当する大学の授業で「あれのこういう部分」を学生にも伝えたいという。あれのダイジェスト的な感じでいいから!、そんな準備しないでいいから!という誘いで、私もあれの中から学生さんにシェアしたいこと、んー、再編集すればひとまとまりある気がすると思い、引き受けることにした。

私は学生時代、本当になにも進路の明確な希望をもっていない若者だった。なので、明確なビジョンある学生さんに何も言えることはないのだけど、私と同じように「就活の時期になったら就活やろうとは思うけど、別段これといった方向性を見出しているわけでもないしなぁ」という学生さんに、昔の自分に話しかけるようにシェアしたい考えというのは、わりとまとまったメッセージが作れそうな気がしたのだ。

それでまぁ引き受けたものの、すでにあるものをささっと再編集して対応できる性分でもなければ、力量もなかった。結局、収録前の週末に土日まるまる使って全動画15本その他から素材を整理し、構成を組み立て直し、スライドを作り直し、大学生向けの話のまくらを新しく起こし、自分が伝えるべきは何で、言うべきじゃないことは何なのかをぐるぐる試行錯誤。日曜の夕方ようやくまとまったが、収録を前にすでにクタクタに…。

話してみないことには、そして動画を見た学生さんからのフィードバックを受けてみないことには、意味あるものになるのかくだらないおしゃべりにつきあわせることになるのか見当つかぬところがあったが、とにかくこの、日頃つきあいのない大学生に向けて自分が限られた時間に何を届けるかというシナリオへの落とし込み過程は、あぁ生きてるって感じがして良かった。地味な性分である。

視聴する学生の数は300人近いという。学部もいろいろ、学年もいろいろ。最初は、学生さんに直接会って話せると一番なんだけど…と思っていたが、実際やってみると、90分間の授業、300人近くを前にして、あのテンションで話せる気がしないし、結果的に良かったんだろう。そもそも収録だったから実現した授業のたてつけでもある。

内容は、自分のキャリアについてを話のまくらにもってきて、自己紹介兼ねつつ、自分の「あくまで社会に出て仕事経験を積みながら自分のやりたいことを発見して、節目節目で舵取りしてきた遍歴」をシェアしつつ、どういうふうに自分なりのやりがいをもって「のら人生」を歩んできたか、インプットとアウトプットを重ねてきたかを提示する(まくらと言いながら、ふとん級に幅広で丈が長くなった…)。

その後、それと連関させるようにして、「キャリアとは何か?」「キャリアについて考える意味はあるのか?」「やりすぎ注意!のキャリアデザイン」「(自分にとって)望ましいキャリアとは何か?」につないで、「私のケース」と「キャリアデザインする前に知っておくと良さそうなこと」を反復的に頭の中で結びつけて知識定着させていくような話の作りにした。

ちょっと時間オーバーしちゃって、元同僚には編集にお手数かけてしまったけれど、すごく話しやすく導いてくれ、今回のお話をくれたことにも感謝。「マリちゃんは、一人喋りより聴衆がいた方が映える」という動画編集後のフィードバックにも、確かにしゃべりやすかったなぁという思いを抱く。きわめて動物的なんだよな、私は。

あと最近わりと真剣に成人発達理論を学んでいて、そこにわりと自分がずっともやっと抱えていた問題意識をシャープな言葉で示したエッセンスが詰まっているので、意識的にそういう知識も足場にしながら、自分のもつバイアスをもっとえぐり出して、それぞれの現場で自分がどう働き仕えるべきなのかの質をあげていけたらいいなと思う。すごく難しいけれど、なかなか登りがいのある山だ。

2021-09-02

「Web系キャリア探訪」第33回、社会の”当たり前”をアップデートする仕事

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第33回が公開されました。今回は、生まれつき全盲の辻勝利さんが中学時代にコンピュータを使い始め、1995年にインターネットにつながって、Webのアクセシビリティエンジニアとしてキャリアを積み、ミツエーリンクス、コンセントなど経て、今月からクラウド人事労務ソフトの「SmartHR」に参画するまでの道のりを取材しました。

障害者に「やさしい」は不要。アクセシブルが当たり前の世の中に変えたい!

いち早くコンピュータを使って「点字ではなく、文字で」読み書きコミュニケーションする手段を取り入れ、いち早くスクリーンリーダーを介して「文字を聴く」情報のインプット手段を取り入れてこられた辻さん。

コンピュータやインターネットが普及する以前から今日に至るまで、さまざまな制約に直面してこられた。けれど、その課題に対して受け身をとるというのではなくて、Webアクセシビリティエンジニアとしての職業的専門性を磨き上げ、真っ向から挑んできたことに敬服します。

視覚障害による制約って、視覚障害の側に問題をおくのではなく、それが制約になる社会環境のほうに問題をおいてとらえたほうが、いろんな人が課題解決に参画しやすいと思っていて。前者だと、どうしても医学とかに素人発想で偏っちゃうんだけど、後者の社会環境のほうなら、いろんな立場の人がいろんな切り口で、いろんな階層で手をくわえていって、大小さまざまの問題を軽くしたり無くしたりできるイメージを持っています。

また、例えば視力が低い人ってことで考えると、眼鏡やコンタクトなしで外に出歩くのは危険すぎるって人が現代はたくさんいると思うけれど、それでも大きな支障なく生活したり仕事したりできているわけで。技術って、その進化をうまく取り入れて社会をアップデートしていけるのがいいよなという思いがあります。

それがまた、コンピュータ、インターネット、Webっていうお膳立てあるところで仕事している職業に就いているんだったら、その「アクセシブルな社会を実現できる」って原点的な3種の強み、3層の厚みを生かさない手はないというか、封じ込めるのはナンセンスだよなと、そんなふうな思いがあって。そういう思いを、それぞれの持ち場で職能を磨いて、きちんと社会に実装していけるといい。

辻さんはその先頭で、奮闘している。クライアント案件にとどまらず、官民共同の研究会活動やオープンソースプロジェクトなど、活動領域も多岐にわたり、今月初めにはSmartHRに転職。受託サイドから事業会社に身を移して、自社プロダクトを普及させて「社内システムはアクセシブルが当たり前の社会を作っていく」というミッションを掲げています。

もはやコンピュータ、インターネット、Webを使うのが当たり前になった世の中で、視覚障害ある後輩たちが、当たり前に単独で人事労務の諸手続きや確認ができ、本業に集中できる環境づくりに邁進。ぜひお時間の良いときに読んでみてくださいませ。

2021-07-29

「Web系キャリア探訪」第32回、よそ者の価値創造

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第32回が公開されました。今回は、新卒で朝日広告社、その後ツナグ(さとなおさんの丁稚奉公)を経て、現在は都内マーケティング支援会社BICPと、岩手県住田町(すみたちょう)の地域おこし支援活動を掛け持つ伊藤美希子さんを取材しました。

「二足のワラジスト」岩手と東京でパラレルワークする理由

何はともあれ、リンク先にとんで「住田町の上空写真」を見ていただくと、うわーっという開放感に満たされます。住田町は林業の町。山があり、川が流れ、町がある。しかし「町」といったって、岩手県といえば北海道の次に大きな都道府県。「住田町」の面積を調べてみると、東京23区の半分くらいはある広大さです。そこに人口5,000人。鹿、熊、ちょっと人がいると言っていたような…。

二束わらじを始めた当初は東京と岩手を行き来していましたが、のちに岩手に移住。その上、今年6月にはBICPの住田オフィスも構えられました。確か、もとは魚屋さんだったところを住田町の方が改築してくださったのだとか。住田オフィスの写真からも、魚屋さんだった面影が感じられます(とくに奥のほう右手)。

住田町の皆さんも、伊藤さんご自身も、伊藤さんの「よそ者」というユニークさを健やかなまなざしで認めて、活かして、手を取り合って住田町の地域おこしに取り組んでいる様子が伝わってきました。

私も言わば「よそ者」、そばにいる支援者として、当事者の輪から一歩外に出たところにいながら、どう別の専門性をもちこんで部外者ならではの貢献ができるものか思案しながら仕事してきたので、個人的にも共鳴するところが多くありました。

学生時代から関心があったという社会活動に、伊藤さんがどういう経路をたどってたどりついたのか。自分が意味を見出すところに、通りの名前などついていなくても、いい意味で「行き当たりばったり」の直観を大事にして、自分で道を拓いてこられた自然体の歩み、ぜひお時間の良いときに読んでみてくださいませ。

2021-06-17

「Web系キャリア探訪」第31回、自分の専門領域に垣根を作らず

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第31回が公開されました。今回は、阪神淡路大震災直後の1995年春に、当時大阪に本社を構えていた大手通販フェリシモに新卒入社し、四半世紀にわたって1社でキャリアを積んでこられた市橋邦弘さんを取材しました。

「新しいことが好き」新卒入社して25年、転職せずに仕事を続ける理由

90年代のECサイト立ち上げに始まり、デジタル広告、マーケティング、システム開発と、技術的にできることが増え、業務もシステムも高度に複雑化していく中でも、自分の専門領域に垣根を作らず横断的にキャリアを積んで、同社のEC事業拡大を率いてこられた市橋さん。

現在は自ら手を挙げて新規事業開発へ。1企業の枠を超えた物流改革への挑戦を心から楽しんでおられるのが、画面ごしにも伝わってきました。また部下を率いる立場を離れ、1プレイヤーとしての活動を再び堪能しておられるようにも感じられました。

それから。自分がいよいよ社会に出るというタイミングに、世界が、自分の暮らす国や地域が、どんな情勢にあるかは本当に様々だし、個人ではどうにもならないところも多分にある。たまたま、どこにあたるか。大不況期ということもあれば、大災害に見舞われる、世界的な疫病の流行にあたる、そして戦争や紛争のもとにいる人たちだって、たくさんいる。今回はそういうことに思いめぐらす取材の帰り道でもありました(オンライン取材だったけど…)。ご興味ある方は、ぜひお時間のあるときにご一読くださいませ。

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