Web人材育成は失敗していないか?と問われたら、それに関わる人たちの頭にはどんな回答が浮かぶだろう。
いろんな現場の人の声を聴いてみたいなぁという情報収集のための問いかけなのだけど(何かを提言するものではなく)、下に書き連ねたような私なりの見立てやら私がやりたい仕事やらを伝えつつ身近で尋ね歩いたところ、そうすっとんきょうな仮説を述べているわけでもなさそうではある。
一方で、それがどれくらいそうなのかという比率はまったく読めない。比率というからには「どの範囲を100%として?」という問いも起こるが、それもいまいちわからない。「Web人材って?」って、その範囲すら私も訊きたいのが正直なところだ。
それに、どこもかしこも、ここに挙げる仮説を問題に抱えているわけでもないのだろう。きっと、うちは上手くやれているよ!思い込みで「Web人材」とか雑に括らないでくれ、心外だよ!という現場もあるだろう。どうやって上手くやっているのか、ぜひシェアしてほしい。つまり、そういう話題がもう少し組織をまたいで情報・意見交換されたらよいのではないか、そのきっかけともなれば本望なのだ。
スライド「Web人材育成は失敗していないか?」(SpeakerDeckはこちら)(Slideshareはこちら)
とにかく、ものすごく曖昧な状態で書かれた文章とスライドであることを断って、しかしながらシェアしたい話題なのである。(スライド2)
スライドに展開したわりに、うまく図式化できていないのはご愛敬なのだが…。
私は1990年代から、Web人材(仮)が活躍する現場のそばでWeb人材育成に従事してきたが、この四半世紀でWeb人材に求められる職域はぐんぐん広範化・多様化し、職能もぐんぐん専門分化・高度化を遂げてきた。これからも、そういう流れは不可避なんだろうなぁと思う。(スライド3)
この変化に適応すべく、業界コミュニティではネット上のコミュニケーションツール、SNSやブログ、スライド投稿サイトなどなど駆使して情報交換やノウハウ共有が行われ、勉強会やネットワーキングを兼ねたオン・オフラインのイベントも活発に展開されてきた。入門書も、新しく出てきた学習テーマをとらえては、切り口を変えて数多く出版されてきた。本人にやる気さえあれば、いくらでも学ぶ機会はあふれているだろう。そんなふうに、よく語られる。(スライド4)
しかし、その豊富な「学ぶ機会」を仔細に観てみると、学習の入り口に偏っていないか?という疑念がわくのだ。新しい学習テーマの存在を知り、へぇ、最近注目されてきているんだぁとは、SNSでフォローしている人の投稿や、専門のWebメディア記事、社内や業界コミュニティの交流など通じて認知することができる。
それがどんなもので、どういう背景で注目されてきていて、どうやって取り扱うものかの概論も、もう一歩踏み込んで専門の解説ブログを読んだり、業界のセミナーに参加したり、オンライン講座を受講したり、入門書を読んだりすれば把握できる。会社で勉強会を開くところもあれば、もう少し改まった社員研修を開いて社内外のエキスパートに講義をお願いして丁寧に解説、事例紹介してもらう機会を設けるところもあるだろう。
だけど、それはやはり「学習の入り口」にすぎない。それを受けとった人の現場のパフォーマンスは、ここまでのステップを踏んだだけでは何ら変更加わらないことがほとんどだろう。
1.興味をもって、いつかやってみようとは思うが、そのまま忘れてしまう。
2.試してみたいけど、自分の職場・案件では無理だなと結論。そのままやらずじまいで、いつも通りに戻ってしまう。
3.試しにやってはみるものの、周囲に誰もサポートしてくれたり助言やフィードバックしてくれる人がいない。まともにできているのかどうか妥当な評価ができないまま悶々。あるいは、とりあえず形になっている、フローに組み込めているからと、できている気になってしまう。
4.やってみたものが現場で評価され、一定の意味は確認できた。しかし、いつも手がけている同じような案件タイプ、同じチームメンバー、慣れたクライアントや取引先との間でだけできているのであって、前提条件や人間関係などコンテキストが変わると途端に応用がきかず、できなくなってしまう。
こういうことで、「入門者」から先の様々な落とし穴にはまってしまい、個々が「一人前」まで到達できていない、チームとして、会社として、産業として、一人前の人材を増やせていないという実態がなかろうかと、そういう仮説をもって、ちょこまか人に尋ねてみている。(スライド5)
学ぶ機会は、「入門者を育てる」施策に偏っていないか?(スライド6)
一人前を育てる施策が手つかず、手薄になっていないか?(スライド7)
この問いを、各現場で(自分自身、自分のチーム、自分が育てているメンバー、あるいは産業として)身近な人と話し合ってみる。というのを有意義なことだと思う人は、どの辺にどれくらいいるものだろうか。それがわからないで書いているのだけど、どこかにいらしたら、ぜひ飲み屋でもお茶屋でもいいので、ちょっとネタにして話題にしてみてほしい。
ちなみに、入門者を一人前に育てる施策になかなか手が出ないで滞ってしまう背景要因には、これに手を出すと手間がかかるし、期間を要するし、単発・短期的にはこれというインパクトを得がたいというのがあるかなと。その他もろもろ。(スライド8)
けれど私は、ここの育成支援をこそやりたい。ここの「入門者を脱して、一人前に至る」フェーズに軸足をおいて、実務エキスパートが伝承するサポート、入門者がスキルを習得して実務に取り入れパフォーマンスを上げていくサポート、組織が確かな育成施策の手ごたえを覚えるサポートがしたい。(スライド9)
なので、この辺の自分の現状認識がどう合っていて、どうずれているか、どの辺に問題を共有できる相手がいて、どう自分が人材育成やインストラクショナルデザインの専門性を活かして貢献できるかを、一人で頭ひねったり、いろんな人と話しながら模索している。その時間を、素朴に、シンプルに、今楽しんでいる。
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