2023-01-26

「Web系キャリア探訪」第47回、自分の興味を仕事にする多層構造

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第47回が公開されました。今回の取材先は、インフォバーンの取締役副社長、デザインストラテジストの井登友一さん。

これまでにない仕事を作る! UXデザインを事業化させた戦略家のキャリアとは

常に実務家・プラクティショナーとして成果を出す現場活動を重んじながら、しかして目の前の案件や顕在化された顧客ニーズに応えるだけに埋没しない。自分の興味が向くところに一歩踏み出して、「自分の興味を仕事にする」開拓者精神、キャリア選択指針を反映した30年の軌跡を辿りました。

しかも井登さんのキャリアは、「自分の仕事」開拓に留まらない。会社のサービス・事業として、さらには産業や職業として、どう成立・発展させていくかといったところまで射程に収めて、実に多層的&段階的に「興味を仕事にする」活動を展開しておられるのが印象的でした。

ユーザーリサーチやコンテンツマーケティング、UXデザインといった新しい領域で、それに対価を支払う商慣習がないところに市場価値を顕現していって(魔法)、段階的に新たな職業領域を開拓してゆく(脱魔法化)実践プロセス。

何年という単位で試行錯誤を重ね、「その仕事に意味があった」という確かな実績を作っては、それを根拠に新規案件を獲得、新しい仕事領域のサービス化、事業化、組織化を実直に図ってこられた。その知見を内に留めず体系立てて社外にシェアし、産業化を推進していくさまは圧巻。

産業化というと大きな話に聞こえるけれど、自分の手元の仕事でも「自分は大事だと思う業務プロセス」なんだけど「クライアントから価値を認めてもらうこと叶わず、それに対価を得られない」から「持ち出しでやっている」仕事って、各所、各人にままあると思っていて。私も過去に泣いたクチですが…。

そういう仕事領域を、信念もって実践して自身の専門性を磨きつつ、他所で商売化することをあきらめず段階的に別の顧客での案件化を企てる、そういう実直さと野心をあわせもった道筋をたどる尊さを、読んでくださる方と共有できたらなと思いました。

また井登さんと同じような射程で、自分の仕事領域、自社の事業領域に留まらずに産業化の具体プロセスを思案・試行している方も少なくないのでは、と思っていて。

そこに井登さんの提示する「脱魔法化」というキーワードが刺さるわけですが、この案配についてはなかなか私も自分の考えるところうまくまとまっておらず思案中、今後の課題として今も先々も少し腰据えて考えていきたいテーマだったりします。

すごくいろんな観点で考えどころの詰まったお話をうかがえたなぁと嬉しく思っています。お時間のあるとき、ぜひご一読いただければ幸いです。

2023-01-12

オウンドメディアで記事を書く第4弾、からの実務トレーニング課題に必須の「文脈」情報について

最近、勤め先の自社メディア「ToCreator」で読み切りの記事を書いているという話を以前ここにも公開録として残したが、その第4弾が新年早々にアップされた。

ゲーム業界の転職、応募先企業選びの落とし穴!選考がとおらない理由は、その一歩手前にあるのかも!?(2023/01/06)

求人サイトで検索して、出てきた結果から「気になる企業」「ピンと来た求人」に応募するも、選考がうまく通らず転職活動が行き詰まってしまったという方に、一つでも「おっ」という気づきがあればという思いで、応募先を選ぶときにはまりがちな落とし穴を掘り下げてみた記事。ゲーム業界に限らぬベーシックなポイントですが、ご関心ありましたらお目通しください。

それはそれとして、これら4つの記事を作成する仕事時間で、私が何をやってきたかをざっくり書き起こしてみると。


  1. 下ごしらえ:オウンドメディアの役割や編集方針を踏まえつつ、記事ネタを個人ブレスト。現場メンバーに具体的な聞き込み調査をできるようヒアリング項目や質問の仕方を整理
  2. 聞き込み調査:社内の現場の人たちに話を聴く会を設け、自分のネタ案を話の枕に(あくまで皆が案出ししやすくなる刺激として提示)、何が有効な記事ネタになりそうかヒアリング&相談
  3. 起案と合意形成:その場でオウンドメディアの役割や編集方針に照らし合わせつつ記事ネタを発掘し、「こういうネタで、こういう構成はどうか」と提案、テーマと構成を現場と合意形成
  4. 構成・執筆・図案作成:「オウンドメディアの役割や編集方針」「現場から得られたエッセンス」「想定読者に役立つ視点やノウハウ」を踏まえ、単発で成り立つ記事執筆&図案作成
  5. 制作依頼:テキスト原稿と図案を提出し、現場メンバーと、メディア制作側のメンバーに共有。意見をもらって手を加え、Webページ制作を依頼
  6. 校正・仕上げ:Webページ化されたものを確認して校正を入れて修正依頼をかけ、仕上げて公開してもらう

という感じなのだけど、これって1本書き上げるまでに、けっこういろんな種類の仕事力を組み合わせてやるものだった。仕事規模としてはコンパクトなのだけど、それだけに一連の工程に全部メインで入って動かしていくので、用いる仕事力のバラエティは豊か。

というのを通して、全部を「通し」でやるのでも、「部分」を取り出してやるのでも、実務トレーニング課題として使いやすそうだなぁって、あさって方向から感じ入ってしまった。

扱うオウンドメディアを自社で運用するそれに入れ替えれば、いろんな会社で、このトレーニング課題キットは使えそうである。ライターは外部委託して書いてもらっているというところでも、メディア運用のさまざまな能力開発の実務トレーニング課題を、このプロセスをシーン別なりスキル別なりで要素分解した素材から引き出せそう。

なぜ、そんなあさって方向に気がなびいたかと言えば、Off-JTの“実務トレーニング課題の出し方”でありがちな不備に「背景情報なさすぎ」問題があるからだろう。

例えばライティング能力を伸ばしたいというので「○○のWebメディアに載せる単発記事を一本書いてください」みたいなトレーニング課題を、ほとんど何の文脈情報も提示せずにやらせてしまう。

しかし、実務力を鍛えたいなら、どういうメディアで、どういう仕事現場でという「特定の文脈」というのがセットで情報提示される必要がある。文脈によって、より良いパフォーマンスも、気をつけるべきことも変わるからだ。仕事は高い文脈依存性を前提にしていて、固定ではないところにその特徴がある。

そのWebメディアは誰を読者として想定していて、アクセスしてくれた読者にどうなってもらう自社の目論見があり、その効果をみるのにどんなKPIを立てていて、年間いくらの予算で運用していて、どういうところに発信経路があって、広告予算はどうなっていて、どういう人員体制でやっていて。そういう特定の文脈・環境の中で意味ある試行錯誤は高密度に行われ、その過程で仕事能力というのは磨かれるわけなので、そこの文脈が「その辺は各々で自由に考えてやってみてください」というのでは、どうしてもおままごとになってしまう。

後で「若手の作ったアウトプットを評価してください」と言われたエキスパート陣だって、そういう特定の文脈なしにアウトプットを評価することはできない。だから実務エキスパートを評価者に召喚しても、ならではの評価フィードバックを得られずじまいである。

学習者本人にも、それを指導・評価する側にも、それを練り上げるための足場が整っていない。こういう実務トレーニング課題の出し方段階の手落ちは、わりと巷にある気がしている。

が、それでは「実務力」を鍛えるにあたって使い物にならないと思う一方で、その「背景情報」だとか「特定文脈」だとかいうのを、課題で使えるレベルまで言語化して提示するのは難しい。外部の何かを課題ネタに使おうとすると「内情」はよくわからないとなるし、それをリアリティをもって詳細に創作しようとすると、「記事を一本書いてください」というのの何十倍も、課題を出すまでの準備に手間がかかる。それをやるまでの工数は割けない、となる。

そういう意味で、上記のオウンドメディアをネタにしたトレーニング課題キットというのは、その辺の背景情報(思惑とか内情とか)がすでに社内資料として作られていたり、明文化されていなくても口頭で赤裸々に説明はできたりするから、背景文脈をセットでできる実務トレーニング課題のネタとして使えるんじゃないかなぁ、相性良さそうだなぁと思った次第だ。

話が長くなってしまった。が、実はこれに関して、あーだこーだ書いていたら手元で1万文字になってしまったので、それをバサバサと切って短くして、こうなった次第なのだった。後味として残るのは、あぁ私、書いても書いても全然文章がうまくならないなぁってことだった。

2022-12-22

「Web系キャリア探訪」第46回、自然体は多面性をもつ

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第46回が公開されました。今回は「絵を描くのが好きで」から始まるサントリーシステムテクノロジーの石川けいさんを取材しました。

「SEOとGAなら会社で一番詳しい人になる!」イラストレーターからWebのスペシャリストに転身

中3のときにマンガ雑誌に入賞して…というエピソードに度肝を抜かれる形でスタートした取材。ものすごく面白くて、前のめりながらお話を伺いました。

Webデザイナーとかの「職種」、正社員とかの「雇用形態」といったものよりも、そこで「何の仕事をし、何の専門性を発揮し、何を自分の役割として貢献し、自分は何のために働くか」という中身に重心が置かれていて、そこに立脚したキャリアデザインが自然体でなされてきた印象をもちました。

「なんとなく入社した」という新卒時の思い出話も出れば、自ら率先して選んできた軌跡もたくさん。緩急剛柔というのか芯が強いなぁと感服するエピソードの後には、「いや、気が小さくて」と苦笑する顔も覗かせる。短い取材時間のなかでも、実に多面的なお人柄をうかがえたなぁという帰り道。

「この人はこういう人だ」という固定的なキャラクターに定まらず、おそらくはご自身でもそう定めようとすることなく、自分が望むものを大事に、どちらでもいいものは柔軟に、自分の堅いところ柔らかいところを自然体で織り交ぜて自分を生かしていっている、だからいろんな顔が自然と初対面の私にすら感じとれる、そんな快さを(勝手にですが…)覚えました。

社内で、飲食店様向けの営業担当をしていた方がWEB担当部署に異動してこられて、その方との出会いが、ご自身の内的キャリア軸をつかむ転機となり、その後のキャリアを力強く育んでいかれる様子も、たいへん興味深く伺いました。育んでいくのは期間を要す「線」なんだけど、その転機は(後から振り返れば)「点」というべき、いっときの出来事だったりすることがあって、人生おもしろいよなって思います。

日々のことを着実にやっていく取り組みを大事にしながらも、お話の節々に「中期」「長期」的な指針をなすお考えが述べられていて、それに基づく実験と実践と、新しいチャレンジが詰まっている、自分の納得いく歩みを選んで舵取りしておられるなぁと感服。お時間のあるときに、ぜひご一読いただければ幸いです。

2022-11-28

オウンドメディアで記事を書く、作ることで「作る人」を想う

最近、勤め先の自社メディア「ToCreator」で読み切りの記事を書いている。8月、9月と出して、今回が3本目。1本書き上げるのに毎回大変な思いをしていて、回を重ねるごとに職業ライターは絶対無理だなという思いを強くする一方、職業ライターでないのに執筆仕事の機会をもらえるのはありがたいことだとも思う複雑なサラリーマンごころ。

書いているときも公開するときも、ほとんど息苦しさしか感じていない気がする仕事だけど、野暮な泣き言を書き連ねるのはやめておくとして、ごく個人的なところのやりがいを書きとめておくなら、私はこの仕事によって改めて自分の仕事の原動力をシンプルにつかみ直す感触を得た。

記事を一本書くという「作る活動」を丹念に行う中で、作り手として身をたてる人たちへの敬愛がすさまじく濃縮されて実感される。

記事を作る過程では毎度のごとく険しく孤独な旅路が体験され、作り終えてもいろんな複雑な思いが絡み合ったまま一向にほどけることがない。というのに、それと別に超然として自分の胸のうちに認められるのが「作る人」「作る活動」への尊敬の念である。

こうして「作る活動」で身を立てている人がいるのだということが骨身にしみて実感され、こうして「作る人」を支援するのが私の生業だ、私の仕事の原動力は、この人たちの役に立つことだという思いが強く意識される。

今は「作ったもの」との境界なく「作る人」「作る活動」に対しても四方八方からいろんな言葉が浴びせられる世の中だけれど、私は「作る人」「作る活動」を敬愛し、いかにささやかなれど守りと支えの一助として働きたい。

全身全霊かけて作る活動にあたっている人が、へんてこなことを言われていると、ぎゅっという気持ちになるのだが、このぎゅっという気持ちをこそ自分の個性と思って大事に生かさねばと思う。

そういう気持ちを大事に育てて生かすのにも、この書き仕事は効きめがあるようだ。小さい活動なれど「作る」という行為のなんたるかがシンプルにつまっていて体感される。誰の何の話だかわからなくなったが、とりあえず、ここは自由空間なので良しとしよう。

以下3本まとめて公開録とする。

ゲーム業界の転職理由、なぜクリエイターは職場を変えるのか?(2022/08/10)

放送業界の映像クリエイターが挑む、動画マーケティング業界への転職事情(2022/09/14)

ゲーム業界の転職、「面接」で不採用になる理由って何なんだ!(2022/11/28)

今後も社内をウロウロして、ゲーム系・映像系専任の転職エージェントに話を聴きこみ、最近の業界転職事情など共有できればと思います。

2022-11-24

「Web系キャリア探訪」第45回、個人から仕掛けるジョブ型雇用

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第45回が公開されました。今回はジョブ型雇用で2017年にKDDIに入社し、部長職としてメタバースなどの新規事業を手がける三浦伊知郎さんを取材しました。

KDDIのアウトロー!? あえて“契約社員”として働く部長の仕事観

「ジョブ型雇用」って最近よく聞かれますが、三浦さんのキャリアを伺っていると20代の頃から自主的にジョブ型雇用を実践してこられたようにも感じられます。

そしてWeb系(ざっくり)の方には、自分も同じ感じだなって親近感を覚える方が少なくないのでは?と思っています。

10年、20年とキャリアを積んでいく中でWebの位置づけも専門性もどんどん進化し、高度化し、職業も専門分化してきた。

1996年から舞台袖でこの変化を眺めてきた身からすると、最初は「Webサイトを作る人」として一括りだった人たちが、それぞれの興味やバックグラウンドに応じて、マーケティング、広告、事業開発の方面に行ったり、専門技能を追求してIA(情報アーキテクチャ)、編集・ライティング、フロントエンド開発、UIデザイン、プロジェクトマネジメント、サービス・プロダクト開発、データサイエンス、ユーザーリサーチ、中小ネットビジネス支援、DX系のコンサルティングなどなど、いろんな方面に軸足を移していった軌跡がみとめられます。

市場の変化にどう対応するかは、個人と同様に、会社組織にも求められてきた。どう変わるか変わらないかは、個人と勤め先で常に足並みがそろうわけではないから、入社当初は「自分がやりたい仕事」と「組織が任せたい仕事」がマッチした会社でも、市場変化の過程でずれてくることが往々にしてある。

そうした変化の中では、一人ひとりが「この会社では、このポジションで、これを発揮し、これにチャレンジして、これを身につける」というふうに、職場ごとに設定を変えてキャリアの舵取りを自分でやってきたという方は多いのでは、と推察します。

職場移動のきっかけが自発的なものだったかどうかに関わらず、たとえ会社都合や家庭事情がきっかけだったとしても、そこからどう舵取りするかに主体性と個性が感じられる方は非常に多い。「私は行き当たりばったりで」とおっしゃる方のお話もよくよく伺っていると、主体的な意志決定に、その方の個性が詰まっていて素敵だなって思うことがままあります。

三浦さんは現在50歳。この30年のキャリア遍歴を読みながら、自分のキャリアと照らし合わせて、今の自分の現在地をはかったり、この先の方向性を模索する参照情報としてお役立ていただけるかもしれません。組織と自分の関係性を健全に対等に見直すきっかけにも、ぜひ参考にしていただけたら嬉しいです。

私は、Web界隈の人たちが先駆者的に、ジョブ型雇用の実例をつくり、「組織と個人の健全で対等な関係」の手本となり、「個人のキャリア自律」を推進していくのかなぁというイメージをもっているので、そういう情報交換は活発にしていけるといいなと、そんなことを思っている次第です。よろしければ、ぜひご一読くださいませ。

2022-10-27

「Web系キャリア探訪」第44回、転職コンサルタントの働き考

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第44回が公開されました。今回は、イスラエルに本社をおくWix(ノーコードCMS)日本法人の広報、間島ゆかりさんを取材しました。

キャリアの軸はPR&社会貢献! 広報のプロがめざすのは「誰もがWebで夢を実現できる社会」

子どもの頃から海外や英語に関心が高かったという間島さんが、留学先で知った「広報」という仕事を、どう自分のキャリアの幹として育んでこられたのか。

外資系企業の勤務にとどまらず、JICA青年海外協力隊としてバングラデシュの観光PRを現地で務めたご経験もあって、本当にグローバルな活動領域。

お話を伺っていると、すごく芯のある「自分の納得いく選択を、やるべきときに、自分でする」ということを大事に重ね、都度その選択が本当に自分にとって意味をもつよう奮闘してこられた軌跡がうかがえて、とっても刺激的でした。

こんなインパクトあるキャリアだと、転職活動も引く手あまただったのではと思いきや、異色の職務経験を次の転職先につなげるのに、ご苦労もあったとか。この苦労話には、私も唖然としてしまって…。

キャリアコンサルタントとか、転職コンサルタントとかいうものの働きについて、考えさせられました。

こういう類いのポジションというのは、いなくて済むなら、そのほうが構造はシンプルなわけで。わかりやすく転職シーンで考えると、転職したい人と、求人する企業が、2者間でやりとりして良きご縁でまとまるなら、それが一番話は早い。

けれど、個人の転職活動、企業の採用活動の間に介在者があって、役に立つことがある。それを転職活動する側に寄って立つならば、転職活動する方の、それまでの経験を1対1で伺って、一緒に棚卸しして、その経験(その人が生きた時間)にどういう意味づけ、価値づけをするかに介在することは、すごく大きな意味をもちうる。

これまでの経験話をどう受け止めて、どういう言葉をかけるか、その一言一言が、その人に新しい意味づけの機会を提供することにもなれば、「自分の経験は言わないほうがいいことなのか」と思わせる、まるで無価値と烙印を押すような暴言ともなりうる。

職場を探している不安定な状況下にあって、転職コンサルタントに自分の培った経験を、言わないほうがいい、書かないほうがいいと言われる側の思いが、どんな痛みを覚えうるかについて、介在者は想像力をもたないといけない。

逆から見れば、そういう状況下にあって、「あなたは見出していないようだけど、あなたのこの経験には、こんな意味づけもできるんじゃないか」という新たな視点の提案が、とても尊い意味をもちうるということでもある。

あらゆる経験が、意味づけ次第で価値を見出せる解釈多様性を秘めていると私は思っているし、それを仮説でも自分なりに模索しながら、ご本人に提示して一緒に洞察を深めていったり、求人企業にどう働きかけていったら、それが伝わるか一緒に知恵をしぼっていくパートナーシップこそ大事な働きじゃないかなと思っている。

うーん、何かそういうことを考えるのにもすごく刺激をもらった取材でした。いやいや、話が長くなってしまった。よろしければ、ぜひご一読くださいませ。

2022-09-29

「Web系キャリア探訪」第43回、「労働」に留まらぬ仕事観を育てるとき

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第43回が公開されました。今回は多摩美を卒業後、メーカーの制作部や広告制作会社を経て1994年に独立。以来、広告、ロゴ、名刺、カタログからWebサイトまで、まるっと提案してまるっと受注するスタイルでやってこられた戦略デザインコンサルタント、アートディレクターのウジトモコさんを取材しました。

離島と東京の二拠点生活をするデザイナー「キャリアを拓くきっかけは、いつもごく身近なところに」

ずっと東京住まいだったウジさんですが、2年前に九州は壱岐島に移住。現在は「東京の案件が9割」というお仕事を手がけつつ島暮らしも堪能中。お写真の海、空、ウジさんの開放感がすごい。「職業人として」に留まらず、「人間として」自分はいかに生きようかというレイヤーでも刺激的。

インタビュー中も終始、力みのない自然体のお話しぶりが印象的で、これまでのキャリア選択にあたっても、その柔軟な舵取りが心に残りました。1994年の独立から、Webがどんどん役割を広げ技術も発展を遂げ専門高度化していく中で、ご自身がWebとどうつきあっていくかという関わり方を適宜見定めて、Web案件を手がけるフォーメーションも変えていっている。

子育て、お子さんの独立といったライフステージ変化にあわせても、ご自身の仕事&生活スタイルを変えてこられていて、こうした変化を自ら舵きって実現していく行動力に感服。よろしければ、ぜひご一読くださいませ。

ウジさん、取材中に「仕事が好き」っておっしゃっていたんですけど、そう思える環境を自分自身で作り出していくスタンスとか具体的なアクションっていうのもすごく大事で、それを体現している方だなぁって思いました。そこが個人的には、一番刺さったなぁ。

いろんな現実の出来事もコンセプトも、その意味づけって最終的に自分の内に入れるときに多様な解釈を自分で与えられるもの。私は「仕事」って今や「労働」に限らず有意義な活動を含むコンセプトに意味を膨らませていると思っているし、そういう前提で「仕事が好き」を増やす活動をしていけたらなって思っている。もちろんそれも絶対じゃない、多様な解釈の一つとして。以前ここに書いた仕事を「労働」「仕事」「活動」に分けてみるも思いだしました。

2022-08-04

Smallx CampのYouTube番組ゲスト出演の舞台裏(資料リンク集も)

Smallx Campと称して月1でライブ配信しているYouTube番組にゲスト出演した。知り合ってから15年くらいになろうかという同世代の面々(お三方と、天の声)がやっている番組で、Information Architecture(IA)界隈に通じるお三方がもやもやすることをフリートークする番組。

最初お声がけいただいたときは腰が引けてしまったのだけど、今回は、前回と同テーマで続きがやりたいとのこと。私も1視聴者として観ていた前回テーマ「70年代生まれはいまどう学んでるの?」を受けて、思うところを聴かせてもらえれば的な話だったので、それならばとお受けすることに。

私は皆さんと同世代の70年代生まれ、かつ「学び」をテーマに仕事してきたという別の立ち位置から、自分なりに話せること共有したいこと意見交換したいことが、考え出すとあれこれあるように思われた。

もちろん「えーい、ままよ!」と手ぶらでフリートークに臨んで自分がまともにしゃべれないことは重々承知している。しかし今回は、前回の動画を読み込んで、自分が何を話したらいいか事前に練っておく猶予がある。

それならばと、話をもらってから今一度、前回のアーカイブ動画を見直し、話を聴きながら自分が思ったことや考えたこと、自分が70年代生まれの同世代にシェアしたいことなど書き出してみた。

そのうちSNS上で今回の告知があり、そこには「~を迎えて、キャリアカウンセラーのご経験から同年代における学ぶ機会についてフリートークします」と案内されている。これはキャリアカウンセラーとして話をする必要がありそうだと心得る。

それなら「もしも私が、前回のもやもや話をキャリアカウンセラーとして相談されたら」という趣向で話したら、わりと聴きやすいかなぁと思いつく。「ドリフ大爆笑」のもしもシリーズでいかりや長介が前口上するときのBGMが脳内に流れる(大好きだったのだ)。

私がどういう頭の動かし方をしながら前回の話を聴いたかを再現して示せば、自分なりに考えたもやもや解消ステップをたたき台として提示するのとあわせて、キャリアカウンセラーとはどんなもんなのかの一例も示すことができるのではないかと。日々キャリアカウンセリングをやっている身ではない私がそれをして、キャリアカウンセラーの印象を損ねてはならないが、そう思われないようにと心がけながら準備にいそしんだ。

そんなわけで、前半に話した「前回の所感」はスライド資料を事前に用意して、当日に臨んだのだった。

で、一昨日の晩に「70年代生まれはこう学ぶ」という前回続編として出番を終えたのだけど、やってみてどうだったかというと、やっぱり話し下手が炸裂した…。

準備したところは「やっぱり、準備しておいてよかったー」ということで、「転ばぬ先の杖」という先人の教えを改めてかみしめた次第なのだけど、これがなかったらどうなっていたことやら。

個人的には、いろいろ関心あるテーマで久しぶりの面々とおしゃべりできて楽しかったが、観てくださった方はちょっと論点とっちらかってしまってお聞き苦しかった方もあろうなとお察しします。率直にフィードバックをくれる友人から、話かみ合っていなかったよねって所感をもらうなど…。

そういう声を受け止めて振り返ってみるに、生きがい(前回取り上げたikigaiフレームワーク)の話と、キャリアの話、職業的な生存戦略っぽい話、大・中・小の話題が混在していて、それを一つのテーブルの上で話し合おうとしているところに無理が生じて、もやもやの晴れようがなかったのかも?

前回の動画で、「ikigaiフレームワークにのっけて話したい議題じゃないのかもね」ってな発言が終盤であがっていたので、今回はそこは(私の中では)スコープからはずして、もう少し実務的な話題にスコープや論点をしぼることで、個別具体的な面と共通話題をいい塩梅で両立したトーク展開が実現できないかと思っていたのだけど、やってみると今回も後半に「生きがい」の話題があがってきたから、やっぱり三者三様に話したいフィールドがあり、それがいくらか共通していて、いくらかずれているというもやりもあるのかもしれない、と思ったり思わなかったり。

だからこそ刺激を交換できるところもあるし、それをどこまで観ている方が許容するかも人それぞれだと思うのだけど。そういうことこみこみでもやもやトークを楽しんでいるというのに、真面目くさった考察をだらだら述べているんじゃないよと叱られそうなので、それはまぁ一人反省会にて。私は私で、そういう性分なのと、そういう企てや構成を生業ともしているので致し方なかったりするのである。

ともかく、おしゃべりに参加させてもらえてありがたかったなぁという心のうちであります。

あと、動画を観てくれて、話がいまいち噛み合ってなかったような…と率直なフィードバックをくれる友よ!おかげで私は地に足つけて健全に生きていけます。本当にありがたい。

やっぱりアウトプットして(そうするために、いろいろ下準備でインプットもして)、アウトプットに対して手厳しかったり温かかったり(こっちもないとやっていけない…)のフィードバックをもらって、それを正面から受け止めて自分で内省して、評価したり教訓を得たり、次に活かしてってすることこそ尊い、経験学習モデルですな。貴重な機会を、ありがとうございました。


画面表示したスライド資料のご案内

Smallx Campさんでご用意くださったスペースに、PDFファイルを置かせてもらっています。

画面で表示したスライド資料(リンク)

話しながら図示したスライドを1ファイルにまとめてあるだけなので、表紙も章区切りもなく、ファイル単体で見ても非常に分かりづらい状態なのですが、動画とあわせて手元で確認したいスライドがありましたら、ご活用ください。

▼1~6ページ目
「もしも私が、前回のもやもや話をキャリアカウンセラーとして相談されたら」私はこんなふうに話を聴いて展開を模索するかなぁという頭の中の動きを、時間の流れにそって並べていった6スライド。
実際のキャリアカウンセリングだと、ご本人を前にリアルタイムでやりとりして1対1で話を聴いては道筋を一緒に探りあっていくと思うので、こんな強引に6ページまで話を進めちゃったりしないだろうけれど、今回はそうしちゃうと展開例が具体的に示せないので割り切って強引に。

▼7~11ページ目
当日、まだ話していないスライドあるんじゃない?と和田さんにふられて後から紹介した5スライド。昔ブログに書いた話とかSlideshareに公開したスライドとかから、今回同世代の皆さんにシェアしたいと思って見繕ったもの。


スライド資料の元となるブログやスライドへのリンク

▼7ページ目:熟達度別の学習アプローチ
ブログ(2019/11/2)「仕事は経験でしか学べない」と言いつつ、教える側にまわると講義に終始しちゃう問題で紹介

▼8ページ目:成人の学びの70%は「直接経験」から得られる
Slideshare改めSpeakerdeck(2015/12/17)効果が出る「仕事の教え方」P9で紹介

▼9ページ目:コルブの経験学習モデル
ブログ(2014/6/30)「学びの後の学びサイクル」で紹介

▼10-11ページ目:加齢に伴って低下しやすい能力、維持されやすい能力/20歳以上を対象にした「知能の加齢変化」研究
ブログ(2020/1/31)中高年になっても衰えない「知能」の話で紹介

2022-07-28

「Web系キャリア探訪」第42回、使い慣れた言葉をいったん解体してみる

インタビュアを担当しているWeb担当者Forumの連載「Web系キャリア探訪」第42回が公開されました。今回は日経新聞社、テレビ東京を経て、テレビ番組無料配信サービス「TVer」の立ち上げに参画、現在はTVerの取締役COOとして事業を率いる蜷川新治郎さんを取材しました。

「裁量ある仕事が断然おもしろい」 TVer設立メンバーの仕事観

日経新聞社→テレビ東京→TVerという遍歴に、メディア業界にお詳しい方だと、出向とか転籍とかで流れ流れて今に至るキャリア?と思う方もあるかもしれませんが、詳しく聴きこんでいくと、ご本人が「不退転の決意」をもって転職したというお話も。

どのような体験を通して、蜷川さんが新卒時のシステムエンジニア職から、次代のテレビ業界のサービス・事業づくりに仕事の軸足を変え、ご自身のフィールドを広げてこられたのか。折々でどういう選択をしてこられたのか、大変聴きごたえがありました。

また「テレビ」という言葉が意味していた従来の概念が解体されていく中で、次代につなぐべき「テレビ」の本質的な価値って何なのか。そういうことをテレビ業界の内外を股にかけて「客観的かつ主体的に」関わりながら、あるべき姿を言葉に起こして、周囲を巻き込み、事業を推進していく力強さと真摯さには胸を打たれます。

やっぱりこういう数十年がかりの変革期とか移行期とか呼ばれる時期って、従来使われてきたコンセプトワードをいったん解体して、次代にあう枠組みを模索したり組み立てなおす人の営みが、すごく大事だなって思います(数十年で何かに移行して、どこかに着地するのかわからないで書いていますが…)。

テレビに限らず、家庭や仕事といった言葉も、いろんな人が、それが指す意味解釈ちぐはぐなまま、相手の文脈を汲んでかみ合わせようと心をくだくこともなく、それぞれ言いたい意見をぶつけて物別れに終わっているさまに遭遇することも少なくなく…。言葉を、こちらの思いをあちらに届ける道具として使えていないもどかしさを覚えることがままあって。使い慣れた言葉をいったん解体してみる必要性を身にしみて感じる日々。

だからこそ、こうやって蜷川さんが丹念に、自分が身を置く業界の前線に立って、現実世界がどう変化していて、どこに次代の機会があるのか見据えて、テレビというものをいったん解体して捉え直して、価値の再定義を試みて、素案を起こして見える化し、幅広いステークホルダーと認識を合わせて、具体的な事業やサービス作りに取り組み続けている姿には、深い敬服の念を抱きます。

あと、やっぱり仕事を面白いって思っている大人の人たちには、今こそ大声で、若い人たち、これから社会に出て仕事をするという人たちに、自分は仕事を楽しんでるよって率直に届けてほしくて、そういう意味でも今回の記事を読者の方々と共有できることを、とても嬉しく思っています。よろしければ、お時間あるときに、ぜひご一読くださいませ。

2022-07-07

高校生にキャリア「話のまくら」ばなし

昨年の夏は、縁あって大学の授業でキャリアデザインの話をした。それは事前収録して編集したものを動画配信する形式だったが、後に視聴してくれた数百人に及ぶ学生たちのアンケートの声をもらい、あぁ自分が伝えたかったことを受け取ってくれたんだな、それを刺激にしてそれぞれに自分のキャリアについて考えるところをもってくれたんだなと、ありがたく読んだ。

その中で一番笑ったのは、私のことを「森先生」と書いているコメントだったが(私は「林」だが、一つ「木」を盛ってくれたようだ)、一番印象に残っているのは「自分は社会に出たらバリバリ働きたいと思っているので」というコメントだ。この実在が、ずっと胸に刻まれて1年が経った。

そして今夏、別の方面からご縁をいただいて、今度は高校生向けにリアルタイムのオンライン授業で話すこととなった。進学塾の特別プログラムで、受講を選択した高校生(と中学生)が参加している。私は6回目の授業、「テクノロジ時代の働き方、キャリアの作り方」というお題をもらった。平日の晩、2時間の枠だ。

骨となる部分は、昨年大学生に話した「キャリアデザインを始める前に知っておくと良さそうなこと」と共通シナリオで依頼主の意向に沿いそうだったので引き受けたのだが、いざ日が迫って準備に取りかかると「今回の高校生に向けて」「いま私が伝えたいこと」というのがむくむく湧き上がってきて、全体をどう構成立てるか、どういう言葉で伝えるか、どういう例示なら最も伝わるだろうか、何を考えてもらう問いが意味をもつか、それに対してどういうフィードバックをしたら本当に伝えたい核心を腹落ちしてもらえるだろうかと四苦八苦。数週間前から週末は準備に明け暮れることとなった。

でも、なんか良い時間だったな。一人でうんうんうなった準備時間も、もちろん当日みんなとご一緒できた時間も。画面越しとはいえ、やっぱりリアルタイムで交流できるのは格別のものがあるし。事後に今回もアンケートの声を読ませてもらったけれど、私が伝えようとしていたことを汲み取ってくれ、また真正面から受けとめて自分のキャリアについて考えてくれているコメントに触れて、ありがたいなぁと思った。

昨年に大学生向けに話したときから私がとみに関心を強めているのは、「社会に出たらバリバリ働きたいと思っている」若者に対して、今の社会は健全だろうかという点なのだけど、それについて私が考えていることも、今回高校生に、私は今こんなふうに考えていてっていうのを「話のまくら」で共有してみた。

こういう社会動向がデータから読み取れて、私は現状をこう捉えていて、社会が混沌としているというのは例えばこういうことに現れていて、大人はこんなふうに今まさに頭を悩まして試行錯誤しているという現在進行形の実態レポートを、不完全な社会の一例としてお話しする試みをしたかった。

自分の直観に任せて、「今回はこれを話に盛り込みたい」と思うことを、まずは最初にわーっと書き出してみるって、大事だなって改めて思った。少なくとも自分の性に合ったアプローチだなと。

その後で、肉づけしたり省いたり言い換えたりして精度を高めていくプロセスはもちろん必要なんだけど、最初の直観シナリオの素描には、自分の強い思いとか信念とか問題意識とか、話し手のエネルギーの塊が入っていて、それは後の整然とした本論とも、おのずと連関してくるものなんだよな。

それを練りあげてブラッシュアップしていく過程で、「話のまくら」と「本論」はぐっと連関性を深めていくというか、もともと深いところで通底していることに自分が気づいていくというか。結局、自分がまくらで伝えたいことと、本論で伝えたいことって、密接につながっているものなのだった。

それを、まくらでは「今リアルタイムで起きている具体的な現象・動向・問題」で示し、本論では「俯瞰的、理論的、抽象的なコンセプト」に言い換えて繰り返す。そうすると、その反復的な伝え方によって、受け取る側にも本質理解が促されるし、心に届きやすくなる、そういう流れに(勝手に)落ち着くようになっているというか。

まぁ実際にやった話し手としてのパフォーマンスはそんな立派なものじゃなかったんだけど、いったん直観を頼りに描ききってみるっていうのは、やっぱり大事だなぁと認識新たにする機会ともなった。本当にちょっとした袖の触れ合いという時間ではあったけれど、ありがたいご縁に感謝している。

より以前の記事一覧