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2026-09-09

最短距離を狙う直感が、まわり道を誘う

今日の打ち合わせでおしゃべりのネタにしてみたら、わりとクイズとして行ける感触を得たのでプチ共有。

8歳の子どもたちを集めて、玉投げの練習をしてもらった。8歳児には目隠しをしてもらい、その状態で的に向かって玉投げする練習をしてもらう。そのうち半分(Aグループ)は90センチ離れたところから玉を投げる練習。残り半分(Bグループ)は60センチと120センチ、2通りの離れた距離から玉を投げる練習をした。目隠しをしているので、研究者が本人に「どれくらい届かなかったか/行き過ぎたか」を口頭で伝えた。

12週間後、A・Bグループすべての児童に、90センチ離れたところから玉入れのテストを行った。さて結果はどうなったか?

(画像をクリックすると拡大表示する)

Ballthrowingpracticeresult

どちらかのグループが圧倒的にうまくいったか、AかBか。それともグループによる差は生じなかったか。

12週間後のテストが「90センチ」というのがポイントだ。Aグループは、ずばり90センチで練習している。Bグループは、ずばり90センチでは一度も練習していない。けれど条件の異なる距離で2通りの練習をしている。

正解はBだ。圧倒的にBグループの児童が、うまくできた。これは、なかなか示唆に富んだ調査報告だなぁと思った。「多様練習」の研究成果だ。

私たちは何かを学ぼうというとき、できるだけ短い時間に早く労なく習得したいと思う。そうしたとき、ひとつのことを完璧になるまで一気に何度も練習する「集中練習」が最も効率的だと考えがち。だからAグループの「90センチ」だけで練習を繰り返して玉が入る確率を早く100%に近づけようと頑張っちゃう。

でも実は、いろんな条件下で練習する「多様練習」のほうが、習熟度を高めるには能率がいいことが実証されているという。玉投げのような運動技能の習得にかぎらず、知的技能や認知的スキルでも、同様の研究があって実証されているのだとか。*

試験を受けた後さっぱり忘れても構わない一夜漬けの勉強なら話は別だけれど、せっかく勉強したのに1日で忘れちゃ困る学習であれば(大人の仕事分野では、そればかりだ)集中練習より多様練習のほうが、後まできちんと記憶に残って身につく。学習したことが必要になったときに、新しい状況でも学んだことを柔軟に記憶から呼び出して発揮されやすい。

今どきの仕事は単純作業で済まないし、専門性を発揮したいなら応用力がマストだ。それを「早く専門性を身につけたい」から「それと関連しないことはやりたくありません」とガチガチ集中練習にこだわってしまうと、どんどん多様練習の機会が遠のき、応用力を鍛える機会を損ない、スキルもキャリアも痩せ細ってしまう懸念がわく。

話を飛躍させすぎていると思うかもしれないが、どうにもこの辺のこととリンクしてしまう。こういう時代こそ、おおらかに遊びのある研鑽の積み方を心がけたい。そのほうが柔軟性が高まって「つぶしがきく」キャリア形成ができるだろうと思う。

*ピーター・ブラウン、ヘンリー・ローディガー、マーク・マクダニエル「使える脳の鍛え方 成功する学習の科学」(NHK出版)

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