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2026-02-17

年代による違いを世代論の根拠に使う違和感

前回の話ついでに、もう一つアンケート調査結果を論拠に何かを説く文章を読んでいて違和感をおぼえるところを書き表してみたい(面倒くさいやつ)。アンケート調査の回答結果を年代別で比較して「若年層と中年層では、こんな違いがあるんです。だから〜」と展開する文章は、そこらじゅう出回っているが、「年代」による違いを根拠に「世代」論を展開する文章に、毎度違和感をおぼえている。

正直、「だから〜」以降の自分の仮説を言いたい思いが先走って、間に合わせの調査結果をどこかから持ってきているか、それっぽい調査を簡易的に実施したか、いずれにせよ仮説を裏づける検証としては役割を果たせていない調査結果が添えられていると思うことが少なくない。その表れの代表格が本件だ。

ある世代を特徴づける論拠として、私が腑に落ちるのは「今の40〜50代が、20代だった頃に聞いた結果ではA寄り回答が多かったのに、今20〜30代に同じ質問をするとB寄り回答が多い、A寄りは下火だ」という結果から、「今の若者(20〜30代)はB志向だ」と展開するもの。

一例に、マイナビの「2026年卒大学生就職意識調査」(*1)から「大学生が就職先を選ぶポイント」を挙げてみる。一番左側の02年卒をみると「安定している会社」は2割を下回っているが、右方向に視線をずらしていくと、どんどん上がっていって一番右側の26年卒では5割を占めるまでに上昇(画像をクリックすると拡大表示する)。

Mynavi2026employmentattitudesurvey

こういうデータを論拠にして「X世代(今の若い世代)は、安定志向に傾斜か」という世代論が展開されるぶんには、違和感はないのだ。

一方で、こうした経年変化を追わずに、単に今時点で、全世代対象にアンケートをとってみたところ「40〜50代はA寄りの回答が多く、20〜30代はB寄りの回答が多かった」という調査結果を論拠に、「X世代はA寄りだが、Z世代はB寄りだ」みたいな文章を続けられると、え、それ世代は関係なくない?とヤキモキしてしまう。

もちろん、「年代」の意味を指して「世代」という言葉を用いることもあるのは重々承知の上だ。でも文脈上、そこははっきりさせたほうがいいのでは?というところを、意図的にか無意識にか分別つけずごっちゃに使っている文章が散見される。年代と世代の区別がなく捉えていて、ジャンプしているのにジャンプを自覚していないような飛躍をみることがある。書き手がごっちゃなら、読み手の理解もごっちゃになる。世代論を語りたいなら、書き手はそこをごっちゃに述べちゃいかんだろうと思うのだ。

一つ前の話でも取り上げた金間大介さんの「無敵化する若者たち」(*2)から例を引くと。この本の中には著者が行った「5年後の幸福度調査」の結果が多く掲載されており、下のように、年代別で示した「総合的に見て、これからの日本社会は良くなると思うか」とか「今いる状況に対して、『このままでいいだろうか』と漠然とした不安を覚えることがあるか」とかの回答結果を論拠に、若者たちについて話を展開していく。これが、どうも腑に落ちない。

Surveyhappinessofyoungpeople5yearslater

「年齢によって、AかBかって違うよねぇ」とか「若くなるほどA寄りだね」とか「若い頃はA寄りだけど、歳を重ねていくとB寄りに変化していくってことかな。そりゃ今の若い人がどうなるかはわからないけどさ」みたいな年代差の話にとどまっていれば、もやもやはしない。

上のグラフなら「20代が、これからの日本社会が良くなると思えていない傾向が顕著だ」とか「年齢が若くなるほど、悲観的だ」とか。下のグラフなら「20代で、漠然とした不安を覚えることがある傾向が顕著だ」とか「年齢が若くなるほど、不安を覚えている人が多い」とか。それは、私もそう読むのだ。

しかし、これが「Z世代の特徴」なのか、Z世代とか関係ない「若者全般の特徴」なのかは、この調査では測れていない、よな?

若い頃というのはそういうもので、X世代だって若い頃は悲壮感や不安感が高かったし、Z世代も歳を重ねていけば、今の40〜50代に近しい回答率に近づいていくやもしれない、もちろんそうじゃないかもしれない。そういうことは、この調査では測っていないから、わからない。この調査単体で言えるのは、そういうことだと私は思っているわけなのだが。

あるいは著者も、そう分別して書いているのかもしれない(たぶんそうなんだろうとは思う)のだが、このグラフの後、下のように文章をまとめて次の節に移られてしまうと、

結果は、やはり学生を含む20代の日本社会に対する悲壮感や不安感が際立つ

なんだろう、この「無敵化する若者たち」という書籍に通底する文脈上、世代論を語っているように受け取れてしまって、腑に落ちないのか。それは一読者の私が勝手に、ここに至るまで暗黙的に「世代論」の本でしょと思いこんで読み進めてきてしまったがゆえの、こちら側の落ち度なのかもしれないが。

しかし、この本に限らず、いまいち特定世代の特徴を語りたいのか、特定年齢層の特徴を語りたいのか、焦点が定まらないままデータをもって足場が組まれ、そこに発信者の持論(提案やら問題提起やら、取り組むべき課題やら)が展開されるケースによく遭遇する。

それがなぜ問題かって、使っているデータがどっち足場かによって、向かうべき課題って方角が全然変わってくるじゃない?って思うからだ。

「Z世代は、昔の世代と違ってこう変わったんです」という話なら、古い世代は変わったことを受け入れて、下手にZ世代のやり方を変えようとしたりちょっかい出して老害を働くなよという論も納得がいく。

しかし、これが「若者はいつの時代も、悲壮感や不安感を覚えがち。それを年配者の導きや支援的関わりもあって、歳を重ねるごとに少しずつ悲壮感や不安感が軽減されていく。それはどうやらZ世代でも同じようだ」という話なら、年配者が若者との接触をできるだけ避けよう、自由にやらせてやろうと関わりを絶っていくのは問題になる。全然、今の若者の救いにならない。

だから私は、この2つ、年代で違うのか、世代で違うのかは、意識的に分けて、取り扱うべきだと思うんだよな。伝える側も、受け取る側も。

単純に、西暦で経年変化を追っているデータからは世代論を読み取り、一時点の年代別の違いを比較しているデータからは年齢段階論を読み取るように、読み手リテラシーを身につけなさいよという話なのかもしれない。つらつら考え書いているうち、私の腑の落ちなさは、とんでもなくこちら側に難があるような気もしてきたが、これも一つの散歩道である。

*1: 2026年卒大学生就職意識調査┃マイナビ
*2: 金間大介「無敵化する若者たち」(東洋経済新報社)

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コメント

ひさびさにこちらにコメントしてみますw

いわゆる「主語がでかい」案件にも通ずるものですね~

たぶん同じ昭和50年生まれでも、育った環境や趣味嗜好でガラッと変わるでしょうし(とくに僕たち世代は遊びの選択肢が少なかった分、割合で言うと、たとえば青・赤・黄の3色に別れたときのコントラストが大きい)、逆に違う世代だとしても、コミュニティが一緒ならそのカルチャーが通じ合ってたりもするわけで。

一方で、やっぱり自分より若い世代(主語がでかい)に対しては、いつも、あと15年は僕たち(第2次ベビーブーマー付近)の絶対数が多い上から、そことの付き合い方が大事だよと思います。

あと、悲壮感に関して言えば、これって僕は「老害(表現が好きな人)問題」と同じだと思っていて、悲壮感しか無い世代が、下の世代にも悲壮感を持っていてほしいという、逆説的な希望的観測なんじゃないかとも思います。

楽しいなら楽しい、ともっといろいろアピールすれば雰囲気だって変わっていくんじゃないかなぁとも。

と、林さんに負けず劣らずたくさん書いちゃいました。すみませんw

何をおっしゃいますやら、コメントありがとうございます!私の長々文章を読んで汲み取ってくださってありがたいです。
雑な解釈によって、主語がでかすぎる決めつけに行き着いてしまう、その要因の一つでもありますよね。
雑な解釈が、実際的な問題を引き起こさなければいいと思うのですが、ここに書いたような実害を生む雑さは問題だなぁって思うんですよね。
そうそう、年配者はこれまでのキャリアで、自分が楽しいと思ったこと、自分が面白いと思ったことがあるなら、自分はこれをこんなふうに楽しいと思うんだよと雄弁に語ってくれて、それを普通に世代間で伝えられる交流がもっとあったほうが自然だしいいと思うのですが、それがやりづらい社会の閉鎖的な感じが不健全だなぁと。
これはたぶん、ミドルシニア層個々人の問題でもなくて、そういうことを言いづらい環境圧が過剰に働いてしまっていることにあるんだろうとも思います。ただ、それを草の根で改められるのは結局、ミドルシニア層個々人(自分たち世代)だと思うので、そこに微風ながら風を送って空気変えていきたいですね。

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