役に立つことに、意味がある
今年の夏に公開したスライドが、Speaker Deckの「2025年最も視聴されたスピーカーデッキ・プレゼンテーション」に選ばれていた。わたしは自分が作ったスライドをネットで共有したいとき、ここ数年はSpeaker Deckというスライド共有サービスを使っている。そこが年末に公開したブログに、自分のスライドが紹介されていて驚いた。
Speaker Deckは英語を母語としたサービスだけど、上の一覧で取り上げられた他のスライドを見てもfreeeとかメルカリとかLINEヤフーとか日本語のものばかりなので、国別とか分野別とか、実はいい感じに出し分けていて各国に大勢の「最も」さんがいるのかも?とか、そもそも日本語が母語のユーザーが圧倒的に多いサービスなのかも?とか、何個のうちの「最も視聴」なのかもよくわからないのだが。
隠居生活に片足つっこんだような個人事業主のスライドを、こんなところで年末に取り上げてもらえるとは、お情けでもご褒美でもありがたい気持ちだ。
これをきっかけにX(旧Twitter)で話題にしてくださる方もあって、夏には届かなかった人たちが今、「40代以上に共有したい中年期のキャリア論」を見にきてくれている。ここ2日くらいでビュー数が1万以上も増えて、全部で6万ビューを超えた。インターネットすごい。
盆暮れ正月、すこし長い目で自分のキャリアを考えてみるのに、ちょうどいいかもしれない。何かに役立ててもらえたら、それこそが最も嬉しいことだ。
振り返ってみると、今年はキャリアカウンセラー的な研鑽を積む機会が多めだった。背景事情を明かせば、今年がMBTI認定ユーザーの、来年が国家資格キャリアコンサルタントの5年おき資格更新時期で、それぞれに何十時間と講習を受講して課題を修めねば資格剥奪というタイミング。どちらも何度目かの更新なので、1年くらい前から受講スケジュールを組んで取りかからないと、後がつらいことを承知していた。
こういうのは研鑽の契機ととらえて前向きに臨むが吉である。資格更新講習の他にも、興味を覚えたあれこれを本読んだり勉強しているうち、5年前とはまた異なる自分の関心事に気づいたり、自己洞察を深める機会にもなった。上のスライドに込めた生涯発達心理学も、そのうちの一つ。ミドルシニア層のキャリア支援というテーマに関心を深めたのは、ここ数年のことだ。
興味に任せてあちこち行き来していると、頭の中であれとこれがつながって、ぐんぐん理解が進むような、どんどんとっ散らかっていっていくような。今年は脳内でよく迷い道したなぁと振り返る。
インプット活動って、自分の身の丈やキャパシティにあわせてインプット量も内容も調節しないと、全然ものにできない。
自分なりに咀嚼する、自分なりの理解や考えを整理する、自分の持ち場でどう役立てられるのかを考える。考えたことを人に伝えてみる。考えたことをやってみる、自分のうちに編み込む作業がないと、何ともならないのだった。そんな当たり前のことを改めて身に染みて再確認したのも今年の収穫か。身の丈、身の丈。
終わりに、今年読んでよかった本の筆頭格、東畑開人さんの新書「カウンセリングとは何か」から一節を。
これは「ラポールについて」というミニコラムの中の文章。「ラポール」というのは、カウンセラーと相談者の間で結ばれる信頼関係のことで、カウンセリングに携わる人なら最初に教わる基本的な概念だ。
二人の信頼関係を築くことなしにカウンセリングは深まりようがない。まずは信頼関係を築くこと、それを基盤にしてカウンセリングは次の段階に進められるのだというふうに教わる。
最近だとビジネス文脈でも、上司の部下への関わり方、1on1のノウハウなどで「まずはラポール形成が大事」なんて文句を見聞きした方もあるかもしれない。
じゃあ、入り口でどうやって信頼関係を築くのだ?というくだりで、私はこの文章に大いに賛同した。
通常それはカウンセラーが受容的で、共感的な態度をとることで成立すると書かれているのですが、僕は違うと思っています。「役に立つ」「このカウンセラーは使える」、この感覚があってはじめて、ラポールは生まれてきます。そのためには実際に役に立つアセスメントをし、介入をする必要がある。信頼というのは、人柄とか、人徳とかから生まれるわけではないのが大事です。的確なアセスメントと具体的な対応から生まれる。
役に立つこと。最初からきちんと「役に立つ」、使い終えたら潔く「過去の人になる」。公私を問わず、私はそういう潔さでやっていきたい。今年は今年、来年は来年の。そして今年ご縁があった方に、心からの感謝を胸にして年を越します。良いお年をお迎えください。
* 東畑開人「カウンセリングとは何か 変化するということ」(講談社現代新書)
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