企業と労働者で認識がズレる「OJTの実施状況」
企業と労働者それぞれに「人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査」を行ったレポートが、私の中で話題。注目したトピックの一つが、企業と労働者で認識のズレが際立つ「OJTの実施状況」だった。
企業と労働者の「効果的なOJT実施」状況の認識差(クリック or タップすると拡大表示)
企業のほうに「日常の業務のなかで、従業員に仕事を効果的に覚えてもらうための取り組み」を質問して、「何も行っていない」と回答したのは、たった2.9%。何かしらはやっている、というのが企業サイドの認識だ。
一方、労働者のほうに「仕事を効果的に覚えるために、いまの会社で仕事をするなかで経験したこと」を質問して、「特にない」と回答したのは28.0%にのぼる。3割近くの人たちが、会社に何かしてもらった覚えはないがなぁ、という認識。
ざっくり言って3%と30%、この開きは大きいなぁと思った。
この調査は、厚生労働省からの要請を受けて独立行政法人労働政策研究・研修機構が行ったもの。上の図は、同じ観点で、企業と労働者それぞれに調査した結果レポート(6ページ目、14ページ目)を取り出して並べたものだ。
これに興味をおぼえて、手元でがっちゃんこしてみたのが、下の棒グラフだ。
企業と労働者の認識別「具体的なOJTの取り組み」(クリック or タップすると拡大表示)
具体的なOJTの取り組みとして、「企業が、やっていると認識している」ものは青色の棒で、「労働者個人が、会社のなかで経験したと認識している」ものは赤色の棒で引いて、上下に並べてグラフ化してみた。
1つ目でいえば、従業員には「とにかく実践させ、経験させる」ことをやっていると認識する企業が6割あるのに対して、「とにかく実践させてもらい、経験させられた」と認識している労働者は3割にとどまった。
2つ目は、「仕事のやり方を実際に見せている」と認識する企業は6割におよぶが、「仕事のやり方を実際に見せてもらった」と認識している労働者は3割程度にとどまるというわけだ。
グラフの右側に、企業と労働者の認識ギャップが大きい取り組みには星をつけてみた。上の2つは、極めて認識ギャップが大きいが、それ以外も一つずつ下ってみていくと、企業サイドはやっていると認識している施策が、労働者サイドではそう認識されていないんじゃないか疑惑が募るばかりの結果だ。
ちなみに、この調査、企業調査と労働者調査それぞれ別個に行っているようなので、労働者調査の回答者は、企業調査の回答企業に勤めているわけではない。
全国、業種さまざまで、従業員数5人以上の企業と、従業員数5人以上の企業に勤める個人(正社員&直接雇用の非正社員、男女、18〜65歳)に、それぞれ調査。調査実施時期はいずれも昨秋2024年10〜11月、公表日は今春2025年3月13日。詳しくは下のリンク先で。
人材育成と能力開発の現状と課題に関する調査┃独立行政法人労働政策研究・研修機構
こういうのを眺めていると、「企業、経営陣、人事部門、上司は、やっていると認識している施策」が、「従業員、現場、部下からは、やっていると認識されていない施策」というのは、これに限らず各所でいろいろあるんだろうなぁと妄想が広がってしまう。
おたがい「相手方も、当方と同じ認識であろう」と思い込んでしまって、あえて問いただす機会もないまま、認識ずれが顕在化せずに放置され続けて早幾年か。こういうのを解消する突破口は、なんとかフレームワークとか作ったり使ったりしている場合じゃなくて、「ねぇねぇ、ところでさぁ、ちょっと聞いてみたいんだけどもさぁ」みたいな一言だったりするのかもしれないなぁとか。職場の「ねぇねぇ」は、けっこう大事だ。
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