キャリア自律度を診断する4類型
「キャリア自律が大事」とはよく聞かれるフレーズだけれど、「キャリア自律」などという抽象的なコンセプトワードってなかなか「大事」から先の具体策は議論が進んでいなかったり、対策が一辺倒(上司の1on1任せ、キャリア研修を実施など)だったりが起こりがちと思ったりする。そんな中、富士通が実施しているという「キャリアオーナーシップ診断」の資料*が興味を引いた。
自社の社員のキャリアオーナーシップの浸透を図る目的で始めた診断。16の質問に答えることで、自らのオーナーシップ度合いが、次の4類型いずれかに分類される。
この16の質問が何かは開示されていないけれど、下の4タイプとにらめっこして、自分はどれだろうかと内省してみたり、自分の部下とキャリアについて話し合うときのツールとして活用してみることもできるかなぁと。
※図はクリック or タップすると拡大表示します。図中の「お天気マーク」、「〜フェーズ」の下線は私が添えました。
図は4象限に切ってあって、縦軸がアイデンティティ、横軸はアダプタビリティ。それぞれ、ざっくり説明すると。
1.未来創造フェーズ
アイデンティティも、アダプタビリティも高い。自分らしい「ありたい姿」を社会の中で実現するために、世の中の変化を捉えながら、努力と行動を持続している。
2.関心分散フェーズ
アダプタビリティは高いが、アイデンティティは低い。周囲の要望や求められる姿の実現のために研鑽を続けている一方で、自分の大切なことや主体的なキャリア形成が後回しになっているかも。
3.自己固執フェーズ
アイデンティティは高いが、アダプタビリティは低い。自身の興味や自らの強みを探究し、自己の充実を大切にしている一方で、社会の変化を受け止め、未来へ備える行動が不足しているかも。
4.現状停滞フェーズ
アイデンティティも、アダプタビリティも低い。キャリアについて受け身な様子。自己の充実や成長に向けて、自ら新たな一歩を踏み出すことに躊躇してしまっているよう。
縦軸の「アイデンティティ」というのは、自分の興味や価値観(仕事観)を深く理解・認識してキャリアデザインに活かそうという主体性を育んでいる度合いみたいなニュアンスでとらえるといいかも。
横軸の「アダプタビリティ」というのは環境適応、あるいは環境変化に適応する姿勢。キャリアをマネジメントしていく上では、職場が自分に期待していること、市場の動きや環境変化に自分が合わせて変化していくことも必要。その点がどうかという観点。
この2軸で、自分のキャリア自律度合いが、4象限のどこに位置するかを考えてみる図。シンプルにして、内省や話し合いのきっかけに使えたりするかもなぁと思った次第。
出典のレポート*によれば、富士通では、次の点を確認しているとある。
1.「未来創造」と「現状停滞」の社員間では、エンゲージメントスコアで一定の開きがある。
2.社員のエンゲージメント向上を、上司のマネジメント力ばかりによって求めるべきではない。本人のキャリアオーナーシップを高めることによる効果も大きい。
そうそう、部下の「エンゲージメントを上げる」だとか「キャリア自律を促進する」だとかを、直属上司のマネジメント力頼みにするのも違うよなぁと思っているのだけど、組織的に無策だと実質そうなってしまっている職場がけっこうあるのでは?という気もしていて。そういう現場で、部下との関わり方やキャリア支援に励んでいる熱心な上司の方々の一助になったりするといいかなぁと思って気にとまったのだな、たぶん。
*内閣官房、経済産業省、厚生労働省「ジョブ型人事指針」富士通レポート内(15ページ目)(2024/8/28)
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