« スタートアップに限らない「スタートアップのための人事制度の作り方」を読んで | トップページ | インターン生が社長との食事会でゲームをやり出したら?というお題 »

2023-11-21

メディア・リテラシー教材としてのミルクボーイ・フレームワーク(品評と創作のちがい)

電車に乗っている間にこれ考えていたら、あっという間に目的地に着いてしまった。ミルクボーイのM-1ネタ「コーンフレーク」を下敷きにして漫才ネタを考えてみようという勝手なアクティビティなのだが、あーでもないこーでもないと思考を巡らしているうちに東京から千葉までひとっとび。漫才師への敬意、創作の難しさと面白さを体感するのにお勧めのアクティビティだ。


内海「どうもー、マリコポーロですー。お願いしますー」
​​駒場「お願いしまーす」
(略)
​​駒場「いきなりですけどね うちのオトンがね 好きな言葉があるらしいんやけど」
​​内海「あっ そーなんや」
​​駒場「その言葉をちょっと忘れたらしくてね」
内海「好きな言葉忘れてもうて どうなってんねそれ」
​​駒場「そやねん」
内海「でもね オトンの好きな言葉なんか 初志貫徹か一気通貫ぐらいやろ そんなもん」
​​駒場「それが ちゃうらしいねんな」
内海「ちがうのん」
​​駒場「でまぁ いろいろ聞くんやけどな 全然わからへんねんな」
内海「わからへんの? いやほな俺がね オトンの好きな言葉 ちょっと一緒に考えてあげるから ちょっとどんな特徴ゆうてたかってのを教えてみてよ」
​​駒場「人が出てきて 馬が出てきて」
内海「ほほほほー」
​​駒場「で 辛いなぁゆうことも 時間経てば良いことに転じたりするもんやから そう動じなさんなっちゅう教えや言うねんな」
内海「おー 人間万事塞翁が馬やないかい その特徴は もう完全に人間万事塞翁が馬やがな」
​​駒場「人間万事塞翁が馬な」
​​内海「すぐわかったやん こんなんもー」
​​駒場「でもこれちょっとわからへんのやな」
内海「何がわからへんのよー」
​​駒場「いや俺も人間万事塞翁が馬と思うてんけどな」
​​内海「いや そうやろ?」
​​駒場「オトンが言うには 死ぬ前の最期の言葉もそれでいいって言うねんな」
​​内海「おー ほな人間万事塞翁が馬と違うかぁ 人生の最期が人間万事塞翁が馬でええわけないもんね」
​​駒場「そやねん」
内海「人間万事塞翁が馬はね まだ寿命に余裕があるから言うてられんのよあれ 時間経てば良きに転じるかもって もう時間ないねんから」
​​駒場「そやねんな」
内海「な?人間万事塞翁が馬側もね 最期の言葉に任命されたら そら荷が重いよ」
駒場「そやねん」
​​内海「人間万事塞翁が馬ってそういうもんやから」
​​駒場「おぉ」
内海「ほな人間万事塞翁が馬ちゃうがなこれ ほな もうちょっと詳しく教えてくれる?」
​​駒場「なんであんなにサラリーマンの座右の銘に選ばれてるのかわからんらしいねん」
内海「人間万事塞翁が馬やないかい どこもかしこもサラリーマンの座右の銘ちゅうたらあれやねんから でも俺はね あれはたいして由来も知らずに言うてんのが大半と睨んでんのよ」
駒場「おー」
​​内海「俺の目はだまされへんよ 俺だましたら大したもんや」
​​駒場「まぁねー」
内海「よー聞いたらね ググってコピペしてるだけで書けん 書けても読めんのよ 俺は何でもお見通しやねんから 人間万事塞翁が馬や そんなもんは」
​​駒場「わからへんねん でも」
内海「何がわからへんの これで」
​​駒場「俺も人間万事塞翁が馬と思うてんけどな」
​​内海「そうやろ」
​​駒場「オトンが言うには 社長が出てきて言うても全然いいって言うねんな」
​​内海「ほな人間万事塞翁が馬ちゃうやないかい 社長がメディア取材で好きな言葉は人間万事塞翁が馬ですー言うたら 社長それは他とかぶるんでなんか別のやつもらえますかって言うもんね」
​​駒場「そやねんそやねん」
内海「な?昇進していくうちにメディア露出増えてくやろ 座右の銘とか聞かれて他とかぶるとか格好つかへんねん なんかユニークなのに変えなきゃいけなくなってくんねん」
​​駒場「そやねんな」
内海「そういうカラクリやからあれ」
​​駒場「そやねんな」
​​内海「人間万事塞翁が馬ちゃうがな ほな もうちょっとなんか言ってなかったか?」
駒場「毎度思い出そうとする度 人が出てきて 馬が出てきて いい教えやってとこで止まってしまうらしいねん」
内海「人間万事塞翁が馬やないかい 若い時分にこれはいい言葉や これを自分の座右の銘にしようって思うのに毎度忘れてもうて 人が出てきて 馬が出てきて えぇ話やったなぁどまりや それで人と馬と中国の格言でぐぐって調べるの繰り返しや 人間万事塞翁が馬よ それは」
駒場「わからへんねんだから」
内海「わからへんことない オトンの好きな言葉は人間万事塞翁が馬 もぉ」
駒場「でもオトンが言うには 人間万事塞翁が馬ではないって言うねん」
内海「ほな人間万事塞翁が馬ちゃうやないかい オトンが人間万事塞翁が馬ではないと言うんやから 人間万事塞翁が馬ちゃうがな」
駒場「そやねん」
内海「先ゆえよ 俺がコピペサラリーマンdisってた時どう思っててんお前」
駒場「申し訳ないよだから」
内海「ホンマにわからへんがなこれ どうなってんねんもう」
駒場「んでオカンが言うにはな」
内海「オカン?」
駒場「馬子にも衣装ちゃうか?って言うねん」
内海「何の教えやねん もうええわー」
二人「ありがとうございましたー」


いやぁ、ぜいぜいしたわ。ミルクボーイのネタよりだいぶ短く締めに入ってしまっているけれども、笑えるかどうかなんてそっちのけ、辻褄あわせてこの辺まで話を運んでくるだけで息切れする。

プロの作り手のすごさを体感するぶんには十分であった。ミルクボーイが築いた生垣によじのぼらせてもらって、穴埋めするかたちで漫才師の創作のなんたるかを堪能した。

誰かが作ったものを「品評する」スキルと、品評される何かを「創作する」スキルというのは、まったく別物だ。この「品評」と「創作」の似て非なるスキルのちがいを体感的に分かっておくことって、現代人が養うべきメディア・リテラシーの一つじゃないかと思っていて、とりわけ「品評する側の、創作者に対する敬意」を育むことは、とても尊いことだと思うのだ。

そういうわけで、この違いを体感できる教材を作りたくて試作してみたのが、ミルクボーイ・フレームワークである。

1)まず、ミルクボーイの漫才ネタ「コーンフレーク」をテキストで読み込む。ネタを知らない人や、知らない人と一緒にネタ作りをしたい場合は、YouTubeにあがっている動画*を通して見てもらえば、わりとすっと参加できるんじゃないかと思うが、どうだろう。

Photo_20231121132701

2)これを手本として、ミルクボーイのネタのフレームワークをそのままに、下のかっこ内を埋めるようにして、ネタを自分たちで作ってみる。

Photo_20231121133001

シートの右下に記しているように、下の3つを押さえて「ミルクボーイの漫才フレームでネタを作ってみよう」というわけだ。

1.『      』と(     )内には同じ言葉を入れてください。
2.【      】にはコンビ名を入れてください。
3.下線部は自由記述です。また下線部以外も自由に変えてOKです。

カッコ内を埋めればいいんだなと思うと手を出しやすい。が、実際うまいことやってやろうと思うと、すごく難しくて、それが面白くもある。

その過程でどれくらい「あぁ、品評と創作は全然別物だ」と思い知れるかが、この教材の価値を決めるわけだが、試しうちしてみた感じ私にとってはしみじみ「ミルクボーイってすごい」「漫才作るって難しいんだなぁ、奥が深いんだなぁ」「実際作るにはこんなことをあれこれ考えるのかぁ」と体感できるものであった。

くどいようだが、これは私の作例の上手い下手、笑える笑えないは関係なくて。漫才ネタとしてではなく、メディア・リテラシー教材としての出来不出来が問われるものなのだが、伝わるだろうか(下手の言い訳っぽいが)。

なにか、どこかで使えそうな場があったら、カスタマイズしてでもお役立ていただければ幸い。授業での有効活用は無理でも、会社の忘年会の出し物とか、個人的な電車移動の時間つぶしとか(弱気)。品評と創作の違いを体感するにとどまらず、創作って難しいけど面白いなぁってところまで味わってもらえたら、この上ない幸いである。

*【完全版】ミルクボーイ、M-1ネタ「コーンフレーク」のノーカット版を披露「#Twitterトレンド大賞 2019」(マイナビニュース【エンタメ・ホビー】)

« スタートアップに限らない「スタートアップのための人事制度の作り方」を読んで | トップページ | インターン生が社長との食事会でゲームをやり出したら?というお題 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« スタートアップに限らない「スタートアップのための人事制度の作り方」を読んで | トップページ | インターン生が社長との食事会でゲームをやり出したら?というお題 »