インターン生が社長との食事会でゲームをやり出したら?というお題
ライムスター宇多丸さんがパーソナリティを務めるTBSラジオ番組「アフター6ジャンクション2」の特集コーナー(2023/11/22)に、ドロッセルマイヤーズ代表、渡辺範明さんがゲスト出演していた。
渡辺さんは、スクウェア・エニックスのゲームプロデューサーを経て独立したゲームデザイナー兼プロデューサー。「国産RPGクロニクル~初代ポケモン」と題して、ポケモンのメディアミックスについて語った本編(リンク先のSpotifyでアーカイブを聴ける)も胸熱だったのだけど(ゲームのクリエイティブとプロデュースが掛け合わさったプロの生き様を堪能)、その後に収録された放課後ポッドキャストも面白かった。
ドロッセルマイヤーズ代表・渡辺範明さんを交えて、本放送では入りきらなかった「ポケットモンスター」特集のこぼれ話(こちらもリンク先のSpotifyで聴ける)
この放課後ポッドキャストは3時間以上あるので、全部を聞くのは大変だと思うが、それはそれとして、主な話題と話題の間にふと挟みこまれた一件(時間にして数分のエピソードトーク)が、強く私の興味をひいた。タイミングでいうと、1:28:55から数分の一コマだ。
ラジオ番組の本番を終え、宇多丸さんらはゲスト渡辺さんも交えて「放課後ポッドキャスト」収録に突入。番組ADのオガワさんは、この収録開始1時間半ほど経ったところで諸々業務を終えてラジオブースに入ってきて、これからみんなで一緒にアナログゲームをやろうというタイミングだ。
ADさんが、放課後ポッドキャスト収録中のラジオブースに、桃鉄(桃太郎電鉄)のセーブをしながら入ってくる。この場はまぁ、別にみんなもお酒を飲みながら収録しているくだけた場なので、ちゃかされながらも全然OKなのだが(深夜0時をまわっている)。それをきっかけに渡辺さんが、私の気を引くワンダーなエピソードをお話ししたのだ。
渡辺さんが、知り合いの(おそらくゲーム会社の)社長と話していて聞いた、その社長の体験談である。その会社ではインターン生の受け入れをやっていて、インターンシップ・プログラムの最終日あたりに、インターン生と社長との食事会がセットされたのだそう。
社長はそれに参加したわけだが、その食事中にインターン生の一人が「スーパーマリオブラザーズ ワンダー」をやっているかと訊いてきたので、社長はちょっと触ってはみたけれど、やり込んではいないというふうに返した。
そうしたら、その学生がその場で(食事中に)Switchを取り出して、ワンダーをやり出した。そうしたら今度、他のインターン生らもSwitchを取り出して、みんなで一緒にワンダーをやり出した。というワンダーフルなエピソード。
社長は、これ、どうしようかなと思った。ひと昔前だったらお説教が始まってもおかしくないパターンだが、社長はあらかじめ人事に、何か失礼に感じることがあっても怒ってはダメと釘をさされていたそう。社員でもないし、インターン生はお客さんなので、怒らないようにと言われていた。それで、社長は胸のうちでアンガーマネジメントを発動して、事なきを得たという。
これはゲーム会社特有のことかもしれないが、けっこうケーススタディとして話し合いがいがあるお題ではないかと、聴きながら興味をひかれた。
「これを不快に感じるか、これはこれでありと思うか」は結局のところ、社長次第なところもあるし、必ずしも問題にならないかもしれない。が、ここでエピソードに登場する社長は明らかに戸惑い、不快感を抱いているようだった。だとするならば、もう少し何かやり方があったんじゃないか?という問いが成り立つだろう。
「あなたなら、どうする?」の「あなた」を、どれで考えるかは、3種くらい選択肢があると思うが。
1.社長
2.人事
3.一緒に参加したインターン生
例えば、こんな切り口で考えてみてはどうだろう。
1.事前にどう回避できるか
2.渦中でどう介入できるか
3.事後にどう対処すべきか
あるいは、もっと「そもそも」論を話し合うネタとしても良い。
1.そもそも、この事象をどう捉えるか
2.そもそも、これを「問題」と捉えるか
3.問題として捉えるならば、問題がどこにあって、どう改善策を講じるべきと考えるか
みたいなお題設定も、話し合うメンバーによってはありかもしれない。
私個人としては「社長」も「インターン生」もあまりに遠いポジションなので、自然と「人事」視点で考察していたが、そこから考えると、こういう問題構造で捉えてみるかなぁというメモ書き。
そもそもに立ち返ると、「インターン」というのは就業体験を趣旨とするものですよね。だから、インターンに参加してくれた学生の皆さんには、社会人として仕事に就くにあたってのTPOを汲んだふるまいというのを、体験的に学んでいただきたい、そういう気づきなり学びを得て帰ってもらえたら本望という話だと思うんです。それでいうと、「社長との会食という社会的なコンテキストを汲んで、この会の趣旨を汲んで、自分がどうふるまうべきかを問い、実際にふるまう」というのを学んでもらうのも、インターンシップ・プログラムの一環かなって思う。なので、参加学生に対しても、このことをうまく人事として介入して伝えられたらなぁと思う。
その伝え方とかタイミングとかは、けっこう個別具体でアプローチが異なる気もするし、汎用的に示すのが難しいけれど。
今、この場で、社長と皆さんとで、せっかく直接対面して食事しながら語らえる時間というのを、どうしたらより有意義にできるか。これは、社長や人事の私たちが考えることでもあるし、学生の皆さんがたも同様に考えることでもある。「対等である」というのは、そういうことだと思うので、皆さんも、今ここで、社長そっちのけでインターン生同士でワンダーを楽しむ時間にあてるのが良いのか、ちょっと今日持ち帰って考えてみてほしい。
んー、これこのまま伝えちゃったらただの小言と捉えられて終わっちゃいそうだから、もう少し伝え方を思案しないとダメだけど。これに限らず、世の中が本来の趣旨に立ち返って考え直してみようっていう局面に立っていると思う今日この頃。私もちまたの一角に生きて、健全に本来の趣旨を大事にした働きかけやふるまいをしていけたらなぁって思う。そのためには、心をくだいて、澄んだ目で事象をとらえて、その場その場で機能する仕組みと仕掛けづくりに知恵をしぼっていく必要があると思うんだ。
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