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2023-10-15

「メンバーのアサイン」論への違和感

プロジェクトマネジメントについて書かれた本に「メンバーのアサイン」と見出しを打った見開きページがあって、その内容と語り口に違和感を覚えた。

「メンバーをどう選ぶか」について、他の本ではどう書かれているんだろうと思って、手元にある数冊を読み比べてみて、やはり先の本のそれは著者の独自見解という感を強くした。

他書には、チームを組成するとか、役割に見合う能力をみてメンバーを構成するとかいった記述はあれど、性格検査のアセスメントも有効という切り口で書いてあるのは、この一冊だけ。ほっと胸を撫でおろした。

性格アセスメントを選抜に利用することには、慎重を期する。扱うプロジェクトがどんなものかによるのだろうし、著者が扱うプロジェクトだと、そうしたアセスメントがメンバー選びに有効な案件もあるのかもしれない。大きな会社とかで部署横断でメンバーを集めて大型プロジェクトを起こす際の「若手抜擢」とかだと、そういう選び方がありうるのだろうか。

だとしても、そう一般的なものじゃなかろう?と思う。そもそも読者想定のプロジェクトマネジメントを学ぶ現場の推進者が、メンバーを選べるという状況自体少ない気もするし、社内外で一定の人選の余地があるとしても、性格検査をメンバー選びに活かすというのは、ちょっとしっくりこない。

この本では特定のアセスメントツールを挙げて紹介し、基本的性格特性としてどういう要素があるか(誠実、情緒安定性、情報欲、緻密性、論理性とか)を例示しているのだけど、プロジェクトのテーマに限定もしない広く一般での性格特性で「情報欲がいかほどか」を目安に選抜するしないと評価することは、どれだけ有効で妥当なアプローチなのだろうか。私からすると、それを特定テーマを扱うプロジェクトのメンバー選抜に使うのは、あまりに杜撰(ずさん)じゃないかと思ってしまう。少なくとも、この限られた紙面でノウハウとして押し出すべきことだろうかというのに疑問符を打ってしまうのだ。

この本は、良くも悪くも幅広いPM関連知識を取り入れた構成に特徴があって、組織とは何か?リーダーシップの類型、ファシリテーション技法、パリッシュのモデルと、ビジネス推進の知見を広げる上で役立つあれこれを網羅的に紹介しようというスタンスがうかがえ、これに著者の知り合いの話なども、エピソードトークともノウハウともつかぬ感じで、わんさか盛り込んであるので、読み物として楽しめる人には楽しめて充実の品揃え感があるのかもしれないが、「いろいろあってみんないい」としても、ここのところだけはどうにもつまずいてしまった。

やはり性格アセスメントは基本、本人が自己洞察を深めるため、組織的に使うとしても人材育成に役立てるのが真っ当と思ってしまう。

そういうつまずきを覚えて思い出したのは、社会学者の星加良司さんが提起されていた「能力評価の領域で、横滑り問題が起きている」という話。「ある領域でのみ評価される能力が、本来は無関係なはずの領域の評価にまで横滑りしている」という話。このYoutube動画、すごく良かったな。

【成田悠輔vs伝説の東大教授】必見!社会人のための真の教養講座【合理性とは何か】- Youtube番組ReHacQ(リハック)「mudai」

それぞれのプロジェクトにおいて、何がメンバーをアサインする指標として妥当なのか、何は本質からはずれるのかに意識をしっかりもって、その指標をこそ選り分けたいところ。

プロジェクトに参加することで、性格検査では低く出てしまうような役割意識、完遂しようとする意思、落ち込んでも立ち直る回復力、他者への配慮、知的好奇心なんかが育まれていくことは、大いに考えられる。私は、プロジェクトをそういう契機に使いたいし、性格アセスメントツールの扱いには慎重を期し、用途を明確に範囲を限定して、有効に使いたいと思う。

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