オウンドメディアで記事を書く第4弾、からの実務トレーニング課題に必須の「文脈」情報について
最近、勤め先の自社メディア「ToCreator」で読み切りの記事を書いているという話を以前ここにも公開録として残したが、その第4弾が新年早々にアップされた。
ゲーム業界の転職、応募先企業選びの落とし穴!選考がとおらない理由は、その一歩手前にあるのかも!?(2023/01/06)
求人サイトで検索して、出てきた結果から「気になる企業」「ピンと来た求人」に応募するも、選考がうまく通らず転職活動が行き詰まってしまったという方に、一つでも「おっ」という気づきがあればという思いで、応募先を選ぶときにはまりがちな落とし穴を掘り下げてみた記事。ゲーム業界に限らぬベーシックなポイントですが、ご関心ありましたらお目通しください。
それはそれとして、これら4つの記事を作成する仕事時間で、私が何をやってきたかをざっくり書き起こしてみると。
- 下ごしらえ:オウンドメディアの役割や編集方針を踏まえつつ、記事ネタを個人ブレスト。現場メンバーに具体的な聞き込み調査をできるようヒアリング項目や質問の仕方を整理
- 聞き込み調査:社内の現場の人たちに話を聴く会を設け、自分のネタ案を話の枕に(あくまで皆が案出ししやすくなる刺激として提示)、何が有効な記事ネタになりそうかヒアリング&相談
- 起案と合意形成:その場でオウンドメディアの役割や編集方針に照らし合わせつつ記事ネタを発掘し、「こういうネタで、こういう構成はどうか」と提案、テーマと構成を現場と合意形成
- 構成・執筆・図案作成:「オウンドメディアの役割や編集方針」「現場から得られたエッセンス」「想定読者に役立つ視点やノウハウ」を踏まえ、単発で成り立つ記事執筆&図案作成
- 制作依頼:テキスト原稿と図案を提出し、現場メンバーと、メディア制作側のメンバーに共有。意見をもらって手を加え、Webページ制作を依頼
- 校正・仕上げ:Webページ化されたものを確認して校正を入れて修正依頼をかけ、仕上げて公開してもらう
という感じなのだけど、これって1本書き上げるまでに、けっこういろんな種類の仕事力を組み合わせてやるものだった。仕事規模としてはコンパクトなのだけど、それだけに一連の工程に全部メインで入って動かしていくので、用いる仕事力のバラエティは豊か。
というのを通して、全部を「通し」でやるのでも、「部分」を取り出してやるのでも、実務トレーニング課題として使いやすそうだなぁって、あさって方向から感じ入ってしまった。
扱うオウンドメディアを自社で運用するそれに入れ替えれば、いろんな会社で、このトレーニング課題キットは使えそうである。ライターは外部委託して書いてもらっているというところでも、メディア運用のさまざまな能力開発の実務トレーニング課題を、このプロセスをシーン別なりスキル別なりで要素分解した素材から引き出せそう。
なぜ、そんなあさって方向に気がなびいたかと言えば、Off-JTの“実務トレーニング課題の出し方”でありがちな不備に「背景情報なさすぎ」問題があるからだろう。
例えばライティング能力を伸ばしたいというので「○○のWebメディアに載せる単発記事を一本書いてください」みたいなトレーニング課題を、ほとんど何の文脈情報も提示せずにやらせてしまう。
しかし、実務力を鍛えたいなら、どういうメディアで、どういう仕事現場でという「特定の文脈」というのがセットで情報提示される必要がある。文脈によって、より良いパフォーマンスも、気をつけるべきことも変わるからだ。仕事は高い文脈依存性を前提にしていて、固定ではないところにその特徴がある。
そのWebメディアは誰を読者として想定していて、アクセスしてくれた読者にどうなってもらう自社の目論見があり、その効果をみるのにどんなKPIを立てていて、年間いくらの予算で運用していて、どういうところに発信経路があって、広告予算はどうなっていて、どういう人員体制でやっていて。そういう特定の文脈・環境の中で意味ある試行錯誤は高密度に行われ、その過程で仕事能力というのは磨かれるわけなので、そこの文脈が「その辺は各々で自由に考えてやってみてください」というのでは、どうしてもおままごとになってしまう。
後で「若手の作ったアウトプットを評価してください」と言われたエキスパート陣だって、そういう特定の文脈なしにアウトプットを評価することはできない。だから実務エキスパートを評価者に召喚しても、ならではの評価フィードバックを得られずじまいである。
学習者本人にも、それを指導・評価する側にも、それを練り上げるための足場が整っていない。こういう実務トレーニング課題の出し方段階の手落ちは、わりと巷にある気がしている。
が、それでは「実務力」を鍛えるにあたって使い物にならないと思う一方で、その「背景情報」だとか「特定文脈」だとかいうのを、課題で使えるレベルまで言語化して提示するのは難しい。外部の何かを課題ネタに使おうとすると「内情」はよくわからないとなるし、それをリアリティをもって詳細に創作しようとすると、「記事を一本書いてください」というのの何十倍も、課題を出すまでの準備に手間がかかる。それをやるまでの工数は割けない、となる。
そういう意味で、上記のオウンドメディアをネタにしたトレーニング課題キットというのは、その辺の背景情報(思惑とか内情とか)がすでに社内資料として作られていたり、明文化されていなくても口頭で赤裸々に説明はできたりするから、背景文脈をセットでできる実務トレーニング課題のネタとして使えるんじゃないかなぁ、相性良さそうだなぁと思った次第だ。
話が長くなってしまった。が、実はこれに関して、あーだこーだ書いていたら手元で1万文字になってしまったので、それをバサバサと切って短くして、こうなった次第なのだった。後味として残るのは、あぁ私、書いても書いても全然文章がうまくならないなぁってことだった。
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