人間のいいところは
これの面白さは、なんなんだろうなぁ、いわく言い難い。でも小説とは、そういうものだもんな。面白さを端的に言葉で表現できたら小説なんていらない。って、もっともらしいような、ただの逃げのような。とにかく論評が下手な私にはなんとも表しがたいが、長嶋有さんの「パラレル」は小説ならではの面白さを堪能できる小説であった。
男くさい、人間くさいっていうのかな。人間て、聖人君子とか、トップオブトップの天才を掲げて、「これが人類共通の目標である、皆こうあるべし!」と生きるより、この小説の登場人物くらいのあんばいの人間像でもって皆それぞれに生きて暮らして、たがいに押したり引いたり、認めたりけなしたり、助けたり放っといたりしながら暮らしていくほうが自然なんじゃないかな。生理的にか生物的にか、無理がなくて身の丈にあって、随所におかしみを感じながら楽しく、いらぬところに過剰なストレスを抱え込まずに生きていけるんじゃないかな。
みたいな絶妙を突いて、登場人物らを丁寧に淡々と描写しているというか。私は丁寧に人の心もようをえがいた文章が好きなのかなぁ。
河合隼雄さんの「おはなしの知恵」に、
人間のいいところは、好みを共有しなくとも仲良くできることである。
ってあるんだけど、いい文だなぁって思って。これってすごく大事なことだし、大事にしたい性質だなって思うんだよな。人間のいいところだよなって。
ここだけは、この人とだけは合わせたいってところは頑張って合わせたらいいけれど、合わせなくていいところは合わせることに必死にならなくていいし、全員と合わせることにも必死にならなくていいし。
たいていのことは「みんな違って、みんないい」でも、けっこうまわっていくものだし。うまく受け流したり、距離をとったら済むものだったり。面白がれる余裕があるなら違いを面白がったり、真剣に味わったり、自分に取り入れたり応用したり。おたがいの違いを活かして役割分担してもいいし。それぞれを、それぞれに。
同じ言葉を使っていても違うものを見ていたりするし、全然違うところにいて全然違う言葉を使っていても同じものをみているように感じられるってこともあって、人間って生き物は不思議だな、本当に。
このての本を読むと、きまって晩に、おかしな夢を見るんだよな。いろんな心もようの記述が、自分の内奥の何かに通じているんだろうな。心のなかの無意識を操作するエッセンスなり仕掛けなりが、入っているのだろうか、不思議だ。論評が得意な人に雄弁に語ってもらえたら、きっとそれまた面白いだろうなぁ、なんなんだろうな、この本は、どうやって作っているんだろう。
これ、あらすじでも論評でも感想でもなく、本については何もわからない文章に仕上がった、いや仕上がっていない。仕上がっていなくても載せていい、それがココログのふところだ。
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