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2021-10-27

顧客に顧客って言っちゃ、おしまいじゃないか?

クレジットカード会社から電話がかかってきて、ちょっとお時間いいですか?というので、とりあえず話を聞いてみたら、「ファイナンシャルプランナーが無料で相談にのるサービス」のご案内とのこと。

内心「最近カードで高額決済されているけど身に覚えありますか」系の連絡じゃなくて良かったぁと胸を撫でおろしつつ、棒読み&息継ぎほぼ無しの案内を聞きながら切り上げどきを探っていると、「こちら顧客満足度を上げるためのサービスとなっていますので無料で」というのでドン引きしてしまった…。

え、顧客に顧客って言っちゃ、おしまいじゃないか?と思うのだが、私の頭が古い(か堅い)のだろうか。

もはや大義も名分も失ったのだとしても、せめてその自覚はもって「お客様の資産運用をサポートしたく、無料で」くらいの服は着せて表を歩かせたらどうかと思うのだが。私にはペチコートのまま歩いているように見える。

単刀直入でわかりやすいじゃないかというご時世なのか。誰も違和感を唱えなかったのか。このトークスクリプトが通った組織のありように気がいってならなかった。

2021-10-21

「Web系キャリア探訪」第34回、令和版の師匠・親方像を想う

インタビュアを担当しているWeb担当者Forum連載「Web系キャリア探訪」第34回が公開されました。今回は、1996年メルシャンに新卒入社以来、一貫して食・飲料メーカーの中の人としてブランドのクリエイティブを手がけてこられたサッポロビールの福吉敬さんを取材しました。

美大卒、「メーカーの中の人」という立場でデザインに携わる理由

新卒1年目でいろんな現場に修行に出されてプロの仕事を実地で覚え、メルシャンから出向した味の素で腕を磨き、4マス媒体からWebまでを取り込み、クリエイティブに留まらずブランド全体に関わっていく福吉さんの歩みをたどりました。

特にボージョレー・ヌーヴォーのブランドマネージャーとしてのお仕事は完全燃焼の感があって、自分の人生の中にこういう時空体験を持っているというのは、それ自体が素敵なことだし、その後の自分の支えにもなる、それとまた違うステージに自分を送りだす後押しにも好作用するんだろうなって思いました。

「いろいろやりたい」という旺盛な好奇心を、どう自分のキャリアの中で体現していったのかも読みどころだし、実際にいろいろやってこられたからこそ今、若手育成にあたたかく落ち着いた眼差しを向けられている感も味わい深く。

人材育成に関わるっていうのは、これという1個の正解がない、これまたものすごい創造的な活動なんですよね。しかも今の時代背景で、Webを含めたコミュニケーションデザインの分野ともなると、昔のやり方を踏襲してブラッシュアップを加えていけばいいという話でもなく、はんぱない創造性が求められる役割。

クリエイティブを扱う専門職の立場から、これまでのご経験をぞんぶんに活かしてどんなふうにご自身の師匠像を形作り若手育成に取り組んでいかれるのか、とても楽しみだし心から応援したいです。ぜひお時間の良いときに読んでみてくださいませ。

2021-10-19

大学の授業で「キャリアデザインする前に知っておくと良さそうなこと」を談義する

大学生向けにキャリアデザイン談話(といっても授業枠っぽいのだが)をしてみないかという話をもらった。勤め先のYouTube公式チャンネルにあげていた「クリエイターのためのキャリアデザイン講座」を見てくれた昔の勤め先の元同僚が、自身の担当する大学の授業で「あれのこういう部分」を学生にも伝えたいという。あれのダイジェスト的な感じでいいから!、そんな準備しないでいいから!という誘いで、私もあれの中から学生さんにシェアしたいこと、んー、再編集すればひとまとまりある気がすると思い、引き受けることにした。

私は学生時代、本当になにも進路の明確な希望をもっていない若者だった。なので、明確なビジョンある学生さんに何も言えることはないのだけど、私と同じように「就活の時期になったら就活やろうとは思うけど、別段これといった方向性を見出しているわけでもないしなぁ」という学生さんに、昔の自分に話しかけるようにシェアしたい考えというのは、わりとまとまったメッセージが作れそうな気がしたのだ。

それでまぁ引き受けたものの、すでにあるものをささっと再編集して対応できる性分でもなければ、力量もなかった。結局、収録前の週末に土日まるまる使って全動画15本その他から素材を整理し、構成を組み立て直し、スライドを作り直し、大学生向けの話のまくらを新しく起こし、自分が伝えるべきは何で、言うべきじゃないことは何なのかをぐるぐる試行錯誤。日曜の夕方ようやくまとまったが、収録を前にすでにクタクタに…。

話してみないことには、そして動画を見た学生さんからのフィードバックを受けてみないことには、意味あるものになるのかくだらないおしゃべりにつきあわせることになるのか見当つかぬところがあったが、とにかくこの、日頃つきあいのない大学生に向けて自分が限られた時間に何を届けるかというシナリオへの落とし込み過程は、あぁ生きてるって感じがして良かった。地味な性分である。

視聴する学生の数は300人近いという。学部もいろいろ、学年もいろいろ。最初は、学生さんに直接会って話せると一番なんだけど…と思っていたが、実際やってみると、90分間の授業、300人近くを前にして、あのテンションで話せる気がしないし、結果的に良かったんだろう。そもそも収録だったから実現した授業のたてつけでもある。

内容は、自分のキャリアについてを話のまくらにもってきて、自己紹介兼ねつつ、自分の「あくまで社会に出て仕事経験を積みながら自分のやりたいことを発見して、節目節目で舵取りしてきた遍歴」をシェアしつつ、どういうふうに自分なりのやりがいをもって「のら人生」を歩んできたか、インプットとアウトプットを重ねてきたかを提示する(まくらと言いながら、ふとん級に幅広で丈が長くなった…)。

その後、それと連関させるようにして、「キャリアとは何か?」「キャリアについて考える意味はあるのか?」「やりすぎ注意!のキャリアデザイン」「(自分にとって)望ましいキャリアとは何か?」につないで、「私のケース」と「キャリアデザインする前に知っておくと良さそうなこと」を反復的に頭の中で結びつけて知識定着させていくような話の作りにした。

ちょっと時間オーバーしちゃって、元同僚には編集にお手数かけてしまったけれど、すごく話しやすく導いてくれ、今回のお話をくれたことにも感謝。「マリちゃんは、一人喋りより聴衆がいた方が映える」という動画編集後のフィードバックにも、確かにしゃべりやすかったなぁという思いを抱く。きわめて動物的なんだよな、私は。

あと最近わりと真剣に成人発達理論を学んでいて、そこにわりと自分がずっともやっと抱えていた問題意識をシャープな言葉で示したエッセンスが詰まっているので、意識的にそういう知識も足場にしながら、自分のもつバイアスをもっとえぐり出して、それぞれの現場で自分がどう働き仕えるべきなのかの質をあげていけたらいいなと思う。すごく難しいけれど、なかなか登りがいのある山だ。

2021-10-12

わりと熱っぽくて面倒くさい人

これまで長いこと、社内より社外の人とのつきあいが圧倒的に多くて、個性的だったり熱量あふれる人たちに魅せられて生きてきたので、自分は個性がなく常温体質の人間だというふうに思ってやってきたのだけど、ここ2~3年か社内の仕事をあれこれするようになって事業部の打合せなど出るようになると、自分が熱弁している状況に遭遇することが頻繁にあって、自分で自分の熱っぽさに面食らう体験を何度となくしてきた。

最初は、臆病(私の中の小人A)が「あ、ちょっと今しゃべっていいですか」と恐る恐る入るのだけど、話しているうちに熱を帯びてきて、臆病が熱弁(小人B)に転じている。これが話したいことの7割くらいしゃべったところで、監督(小人C)が熱弁に「おい、おまえ、しゃべりすぎやぞ、そろそろ引き上げぃ。いい加減にしないと、みんな引くぞ」と小声でささやく。それで穏便(小人D)が「すみません、また熱弁が過ぎまして…」と頭をかきかき、参加者に頭を下げる。熱弁は後ろで「またやってもーたー」と顔を赤らめて下を向いている。

定例会などで私のそういう一人劇場に慣れているメンバーは「全然OKですよ、大事なことだし」と微笑んでフォローの言葉をかけてくれたり、「いや林さんがそれくらいしゃべることは想定内ですから」とニヤリ笑って慰めの言葉をかけてくれたりするのだけど…。

結局のところ、うまく自分の考えを届けて次につなげる、事を動かすまでの力になれている手応えはなく、中途半端な弁を述べちゃったんだろうなぁとZoomを切ってから反省に暮れることは未だ少なくない。

まぁでも、そういうことを経てきて、私はこの村ではそういう役割というかキャラを担うのだと認識するのだった。熱っぽく面倒くさいことを言い出す。

私がこんなふうに「正しいか正しくないかわからんが私はこう思うのだ。こういうふうに考えるから、そう思うんだが、どうだろうか」とからみつくことで、異論でも反論でも同意でも共感でも構わないけれど、とにかく一つの刺激として前進する何かに働くとか、より深く考察する何かに働くとか、そういう働きをしようと努めるのが自分の役目な感じがしている。

そうすると、「また面倒くさいこと林さんが言い出したぞ」というのは買って出るくらいの気持ちが案配よろしいわけで。とはいえ考えておくべきこと、取り入れたい視点、議論すべき論点、そうかもしれない仮説、いいかもしれない提案、こうすると進む・届くなというシナリオ。そう思ってもらえるようなことを自分なりの精一杯で知恵をしぼって考えること、考えたことを伝えていくこと、それをどう考えるからそう思うのかもセットで出してみて、みんなで話し合うことの意味をできるだけふくらませることをやっていけたらなと思う。

そして、いらなくなったときには私に気を遣わずさっとはずしやすいよう健全な信頼関係を育て続けながら、そういう働きができたらいいなぁと思う。そのためには私自身が単体で、やっぱりすごく健全な身体と精神を磨いておかないといかんのだよな。タフさをきちんと鍛錬しつづけないといけない。

まぁでも役割というの別にしても、性分として「意見を求められている場であって、自分に意見があったら、意見を述べる」というのを、普通にやるという自然体を大事にしようと思うばかりなのだ。

そういう場で「黙っている、ふられるまでは発言しない」のでは打合せに出ている意味がないし、思ったこと考えたことをみんなで交換しあって、交換しあったからこそ一人で出すより良い答えを導き出せる、そのために打合せの時間をもっているのだし。

私の意見がおかしさ満天だとしても、こんなおかしなことでも意見出しているんだから、私もいっちょ言ってみるかなっていう空気づくりにだけは、うまく作用するかもしれないし。

自分が思うこと、気づいたこと、問題提起したいこと、こうしたらいいんじゃないかと提案したいことを、とにかくきちんと言葉にして伝える、「従ってもらえるように」ではなく、私がそう考えるいきさつ含めて話して、それを「わかってもらえるように」、皆で考えを前に推し進めるための素材として「使ってもらえるように」言葉を尽くす。

自分の中でひとり思ったことの1億分の1くらいしか、人に伝えられることなんてない中で、自分の考えや思いを聴いてくれる人、次に展開していけるかもしれない場があるなら、それはとても稀有で、貴重なことなのだ。

そんなわけで、自分は会社の所属部門という小さな村の中でみれば、わりと熱い人間なのかもなって思うようになって…という話をすると、社外の人から「え、林さん普通に熱いめじゃないですか?ずっと前からそう思ってましたけど?」ってな反応が返ってきて「えっ」「えっ」ってなった…。「自分もそっち寄りですけど、林さんもわりと面倒くさい人寄りですよね?」と笑われて、面倒くさい、否めなさすぎる…と思った。

ともあれ、これからは、どうやら自分が思っていた以上に持っていた熱っぽい感情を、もっと大事にして生きていこうと思う今日この頃。

2021-10-02

10月に入ったなぁ、コロナ禍も一年半

9月はクライアントの研修案件をやったり、社内の事業部の下期キックオフ資料など作っているうちに過ぎ去っていった。自分が使いたい筋力を使って、この人の役に立とうという具体的な活動をしていると、すごく健やかな気持ちで時間を過ごせて良い。

少し前、いやぁ死んじゃうのって実際問題めちゃくちゃ怖くない!? 自分が、今感覚している自分というのが、この世界から消滅しちゃう日が来るのだ。これ、終りがあるんだよ。その後も世界は続いていくというのに、自分は終わるってときがやってくるんだ。なんていうか、すごい壮絶な現実だなぁなんて、よく寝る前などに思いついては、きっともうあの人ともあの人とも会えないで、私が消える日がやってくるのだなぁ、覚悟をきめて臨むしかないよなぁなどと思っていたのだけど。

まぁ、そんなコロナ禍も、なんやかんやとあれこれ仕事をもらって頭を動かし、手を動かし、提案したり、考えを述べたり、話を聴いたり、意見交換したりして、ありがとうって言ってもらえたり、助かったって言ってもらえたり、そういうことがあって。一つひとつやっていくと、前よりいい動きできたな、前より見えている領域が広がってきたなって自分の成長を感じられるところもあるし。

本を読んだり、プールで泳いだり、通りをジョギングしたり、ラジオを聴いたりして、自分ひとりの時間をどう健全に過ごしていくかを形にしていく時間の積み重ねが、少しずつ自分をタフにしていっている気もする。頼れる書物もいろいろあるしな。なので、まぁ、なんとかやっていけるだろう。

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