これまで長いこと、社内より社外の人とのつきあいが圧倒的に多くて、個性的だったり熱量あふれる人たちに魅せられて生きてきたので、自分は個性がなく常温体質の人間だというふうに思ってやってきたのだけど、ここ2~3年か社内の仕事をあれこれするようになって事業部の打合せなど出るようになると、自分が熱弁している状況に遭遇することが頻繁にあって、自分で自分の熱っぽさに面食らう体験を何度となくしてきた。
最初は、臆病(私の中の小人A)が「あ、ちょっと今しゃべっていいですか」と恐る恐る入るのだけど、話しているうちに熱を帯びてきて、臆病が熱弁(小人B)に転じている。これが話したいことの7割くらいしゃべったところで、監督(小人C)が熱弁に「おい、おまえ、しゃべりすぎやぞ、そろそろ引き上げぃ。いい加減にしないと、みんな引くぞ」と小声でささやく。それで穏便(小人D)が「すみません、また熱弁が過ぎまして…」と頭をかきかき、参加者に頭を下げる。熱弁は後ろで「またやってもーたー」と顔を赤らめて下を向いている。
定例会などで私のそういう一人劇場に慣れているメンバーは「全然OKですよ、大事なことだし」と微笑んでフォローの言葉をかけてくれたり、「いや林さんがそれくらいしゃべることは想定内ですから」とニヤリ笑って慰めの言葉をかけてくれたりするのだけど…。
結局のところ、うまく自分の考えを届けて次につなげる、事を動かすまでの力になれている手応えはなく、中途半端な弁を述べちゃったんだろうなぁとZoomを切ってから反省に暮れることは未だ少なくない。
まぁでも、そういうことを経てきて、私はこの村ではそういう役割というかキャラを担うのだと認識するのだった。熱っぽく面倒くさいことを言い出す。
私がこんなふうに「正しいか正しくないかわからんが私はこう思うのだ。こういうふうに考えるから、そう思うんだが、どうだろうか」とからみつくことで、異論でも反論でも同意でも共感でも構わないけれど、とにかく一つの刺激として前進する何かに働くとか、より深く考察する何かに働くとか、そういう働きをしようと努めるのが自分の役目な感じがしている。
そうすると、「また面倒くさいこと林さんが言い出したぞ」というのは買って出るくらいの気持ちが案配よろしいわけで。とはいえ考えておくべきこと、取り入れたい視点、議論すべき論点、そうかもしれない仮説、いいかもしれない提案、こうすると進む・届くなというシナリオ。そう思ってもらえるようなことを自分なりの精一杯で知恵をしぼって考えること、考えたことを伝えていくこと、それをどう考えるからそう思うのかもセットで出してみて、みんなで話し合うことの意味をできるだけふくらませることをやっていけたらなと思う。
そして、いらなくなったときには私に気を遣わずさっとはずしやすいよう健全な信頼関係を育て続けながら、そういう働きができたらいいなぁと思う。そのためには私自身が単体で、やっぱりすごく健全な身体と精神を磨いておかないといかんのだよな。タフさをきちんと鍛錬しつづけないといけない。
まぁでも役割というの別にしても、性分として「意見を求められている場であって、自分に意見があったら、意見を述べる」というのを、普通にやるという自然体を大事にしようと思うばかりなのだ。
そういう場で「黙っている、ふられるまでは発言しない」のでは打合せに出ている意味がないし、思ったこと考えたことをみんなで交換しあって、交換しあったからこそ一人で出すより良い答えを導き出せる、そのために打合せの時間をもっているのだし。
私の意見がおかしさ満天だとしても、こんなおかしなことでも意見出しているんだから、私もいっちょ言ってみるかなっていう空気づくりにだけは、うまく作用するかもしれないし。
自分が思うこと、気づいたこと、問題提起したいこと、こうしたらいいんじゃないかと提案したいことを、とにかくきちんと言葉にして伝える、「従ってもらえるように」ではなく、私がそう考えるいきさつ含めて話して、それを「わかってもらえるように」、皆で考えを前に推し進めるための素材として「使ってもらえるように」言葉を尽くす。
自分の中でひとり思ったことの1億分の1くらいしか、人に伝えられることなんてない中で、自分の考えや思いを聴いてくれる人、次に展開していけるかもしれない場があるなら、それはとても稀有で、貴重なことなのだ。
そんなわけで、自分は会社の所属部門という小さな村の中でみれば、わりと熱い人間なのかもなって思うようになって…という話をすると、社外の人から「え、林さん普通に熱いめじゃないですか?ずっと前からそう思ってましたけど?」ってな反応が返ってきて「えっ」「えっ」ってなった…。「自分もそっち寄りですけど、林さんもわりと面倒くさい人寄りですよね?」と笑われて、面倒くさい、否めなさすぎる…と思った。
ともあれ、これからは、どうやら自分が思っていた以上に持っていた熱っぽい感情を、もっと大事にして生きていこうと思う今日この頃。
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