滞在2時間の帰省
夏期休暇3日目を、また単発でぽつりと取って、9月頭に実家へ帰省した。といっても滞在2時間ほど。万が一、自分がコロナでも父にうつすことなく帰れるように、アルコールティッシュで手を拭き拭きしてから門に手をかけ、玄関をあけて「ただいまー」と父に軽く挨拶すると、洗面所に直行して手洗い。仏壇で母に手をあわせている間も、居間であーだこーだ父としゃべっている間も、ずっとマスク着用。
ちなみに、行きは昼間に移動して下りに、帰りは夜に移動して上りの電車に乗るようにして混雑を避け、車中はずっと腰かけずに窓に向かって立っている。そういうことで、東京からの江戸川越えを勘弁してほしいところ。年単位ともなると、心配るところはコロナだけじゃなく、いろいろあるのだ。
父と直接会って対面で話をする、時間と空間をともにするということが、大事なんである。帰省して滞在2時間というと、なんとまぁ短いという感じだけど、会議とか打ち合わせのシーンに差し替えて考えれば、2時間1対1で話しこむというのは相当なものである。対面で受け取る情報は多様で密度も濃いし、交換できるものは他で替えがきかない。動物だもの…。
話題は、最近観た映画や読んだ本に始まり、親戚の話、日常の細々としたこと、最近のお悩み解決、ワクチン接種のこと、政治のこと、社会問題のこと、いろいろだ。出来事だけじゃなく、それについてどう思う、自分はどう考える、おまえの周りではどういう意見を聞くのかなど、いろいろに展開する。
「夜に帰る」とだけざっくり言っておくと、2時間とかいう前提もなく、仕切りもポケットもないトートバックになんでもかんでも突っ込んでいくように、思いついた順にあれこれ話せる自由さがあって良い。今回はテレビのBGMもなく、ひたすら居間でしゃべり続けていた。
そういえばスマホで「パ」はどう入力するのか、このあいだ困ってたじゃない?と言って、私がスマホで「パ」を打つやり方を教えようとすると、いや「パ」はいいんだけど、それよりこれが使えなくなっちゃって困っているんだと、父がスマホを手にとって別の困りごとを持ち出してくる。
なになにと話を訊き、どれどれと操作を試みる。ふむ解決できそうだとなると最初の設定いじりは一通りやってしまって、日常的に使う部分だけ操作を模範演技して見せる。対面で指示語使いまくりの説明は、最強である。「ここをこうやって、こうすると、こうなるじゃん、ほら、これでできた」と、簡単さを印象づける。
「お、ほんとだ!」と向こうも乗ってきたら、「じゃあちょっと演ってみてよ」と、今私がやったのを自分で操作してもらう。途中でつまずけば、すぐフォローする。できたら、よかったよかったと祝う。やって見せて「へぇなるほど、よかった、ありがとう」で満足して終わらせてはいけない。
それから、自分が最初に手元でいじったのも、何を意図してどういじったか簡単な説明を添えておく。「お父さんがチェックしたいっていう5つを今ここで登録して、ここを押したらすぐ見られるようにしたんだよ」など。聞き流されているようでも、ここは律儀に添えておきたい。
それからまた、あーだこーだおしゃべりをして1時間ほどしたところで、買っておいてくれたという冷蔵庫の梨を食べようかと持ちかける。「むいてくれたら食べるよ」というので、台所に立って皮をむいて一口サイズにして皿に並べる。それを一緒に食べる。「果物ってなかなか食べなくなっちゃったんだよな」「私は、りんごはよく食べるよ。でも梨は久しぶり、名産ね」なんて、おしゃべりしながら。時間と空間をともにするというのは、そういうことだと思う。
うちの父はものすごいしゃべるので、2時間のあいだに健康チェックも。「もう認知症やから」が口癖の父だけど、べらべらしゃべっている中で「あー、あれは懲役ちゃうわ、禁錮やな」とか、いま自分がしゃべったことの言い間違いを、速攻で自分で突っ込んで訂正入れたりしているのに、ひそかに安堵したりもして。
自分が仕事していて、あぁ父譲りだなぁと思うところを話したりすると、父はちょっと恥ずかしそうにして「おまえたちを育てたのは、お母さんだ」と返してくる。私が「このおうちを新しく建て替えたのだって、お父さんが頑張って働いて建てたんでしょう」と言い返すと、「家のことだって全部、彼女がやってくれた、最期まで働いて」と譲らない。まぁそんなやりとりを何度となく繰り返しているんだけど、私は私でお父さんのおかげで今の自分があることを、ちょいちょい帰っては言い添え続けるのだ。
ちなみに「パ」の入力方法も教えて帰ってきた。短い時間だったけれど、帰って良かったな。
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