「研修で学んだことを仕事で活かす受講者は1〜2割」からの
研修で学んだことを仕事現場で活かす受講者は何%くらいいるのか?という疑問は、過去に多くの人たちが疑問を抱き、数々の研究結果が残されている。で、ざっくりまとめると10〜20%と言われている。
研修内容の職場実践度合いに関する先行研究をまとめると、従業員は研修で学んだ内容の10~20%程度しか職場で実践できていない(*1)
一例に、研修実施の1年後までを追ったカナダの企業258社を対象にした調査結果(Hugues, P. D. & Grant, M. 2007)とか。
研修直後には、受講者の47%が、研修で学んだ内容を職場で実践すると考えているが、半年後には12%、1年後には9%には減少していた(*2)
研修で学んだことが、ただ受講者が満足する(1.反応)にとどまらず、受講直後の段で学習目標に掲げた知識やスキルを学び取っている(2.学習)、仕事現場で定着し一般化され役立てられている(3.行動)、さらにはそれによる成果が出ている(4.成果)ことまでを射程に入れて研修を評価すべしというカークパトリックの4レベル研修評価モデルにのせてみると、次のグラフの通り(*3)。
「2.学習」から「3.行動」の間で急降下しているのが見て取れるが、この間の移行が最も難しい。
人材育成の解決策なり、業績向上の介入策と見れば、研修は単発で効果を期待するものではなく、あくまで施策の1つとみて、研修の外側、現場とどう連携させて効果をあげるか考えるのが大事だという話。
ふつうに、冷静に考えると当たり前の話なのだけど、現実問題としてわりと研修だけに閉じて話をまとめちゃうケースは少なくない。とにかく何か策は講じねばならない。これこれはスタッフの能力不足に問題がある。能力不足への解決策は研修だ。研修受けるお膳立てしたら、あとは現場のメンバー次第だ。一つの施策で済ませたい。ありもので済ませたい。この研修パッケージでいいじゃないか。とりあえず現場の責任者として策を講じたことにはなる。他にもやらなきゃいけない課題は山積みなんである。これだけに関わっているわけにはいかない。
MITのピーター・センゲが、私たちは「問題に対して見慣れた解決策を当てはめることで対処しがち」といったようなことを「学習する組織」(*3)の中で書いていたが、組織の人材育成まわりを活動エリアにしていると、そういう場面に遭遇して、ふがふがすることは少なくない。それが社内であれ、社外であれ。
その場で瞬時に問題の構造から解決策まで枠組みだてて表現力豊かに相手と合意形成をはかっていくには、まだまだ力量不足を感じることばかりだけど、ぐぬぬっと引っかかって、根本どういう問題なんだ、これは…と立ち止まり、問題構造を整理して、解決策を自分できちんと考えて、相手と共有できるように形作って提案していこうという気概は自分にありそうなので、たとえ瞬時にはうまく立ち回れなくても、きちんと自分の時間を使って、現場の人間として働いていきたいと思う今日このごろ。現場責任者が預かる「他にもやらなきゃいけない山積みの課題」との相互関係を捉えながら、どう包括的にみて人材育成や組織作りからの有効策を打ち出せるかが肝だ。
*1と3: 中原淳(編)、関根雅泰・齊藤光弘(第13章著)「人材開発研究大全」(東京大学出版会)
*2: 中原淳「研修開発入門――会社で教える、競争優位をつくる」(ダイヤモンド社)
*4: ピーター M センゲ「学習する組織――システム思考で未来を創造する」(英治出版)
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