面接官がしちゃいけない質問例を読考
厚生労働省 大阪労働局の「面接で訊いちゃいけない質問例」を確認すると、ほぅ、それもかぁと思うのが少なからず見つかる。面接で「座右の銘」を訊いちゃいけないというのは、以前そこそこ耳目を集めたが、「尊敬する人物」「愛読書」「将来どんな人になりたいと思うか」あたりもNG例に挙がっている。
「ご出身は?」と、別に採否の判断に使うつもりは毛頭なく、なんとなく場を和ませようと世間話的に使っちゃいそうな質問もNGだったりするから、面接官をやることになったんだけど、その辺の認識があいまいという方は一度目を通しておくと良いかもしれない。
自分が就活の面接で訊かれたことある質問だと、うっかり使っちゃいそうだけど、実はそれって20年前の話だったとか、20世紀にはオーソドックスな質問だったけど今はちょっとないなっていうのは少なくない。
リンク先のNG例を眺めつつ、けっこう線引きが難しいかもなぁとグラデーションに感じたのは「思想・信条・人生観」。
もちろん初対面の人相手に、信仰している宗教とか支持政党を訊くのは、ルールとかそれ以前のモラルというか、そういう項目もあるのだけど、ものによっては相当意識しないと、うっかり境界線を越えてしまいかねない危うさを感じる。
というのは、仕事で大事にしていることを「仕事観」とすると、それと「キャリア観」とか「人生観」って地続きというか、ぐにゃっとひと連なりな感じの人も少なくないんじゃないかなぁと思うのだ。それは法人格の価値観でも、そういうところあるかなぁと。その「ぐにゃっとひと連なり」か「割とぱっきり分かれている」か含めて、個人と勤め先の相性ってあるかもなぁとも思ったりした。
求人企業がよく使う言葉に「スキルマッチとカルチャーフィット」の両方をみて選考したいみたいな話があるけれど、「カルチャーフィット」の度合いを探りつつ、でも「思想・信条・人生観」には踏み込まない面接時の質問の仕方、分別のつけ方、境界線の引き方みたいなのは、なかなか繊細な話かもなぁと。
とりあえず現実的な選考場面で考えてみて、面接官の立場とすると、あくまで仕事の枠組みをはみ出さないように意識して、「~業務、~技術、~デザインを習得するのに、誰に学んだとか、こういう本を読んだとかってありますか?」みたい訊き方にしたらいいかな。きちんとテーマを設定して、絞り込んで訊く。NGなのは「尊敬する人物」「愛読書」じゃあ、仕事の枠をはみ出してるでしょ!って話だろうから。
応募者の立場からすると、面接官からは、就職差別につながりかねない質問ができない背景事情を知っておいて、自分がアピールしたい、その会社と自分との「カルチャーフィット」があるなら、そこは自ら話題にあげて表明していくのがいいってことになろうかな。「親が商売やっているのを子どもの頃から見ていて」とか、「出身が~でして」とか、そこを話の切り口に使いたい人もそれはそれでいるだろうし、自ら話す分には問題ないだろう。
もちろん、自分が言いたくないことは言わなくていいし、訊かれても答えなくていいの前提で。
じゃあ、そういうことを訊かれちゃったときの現実的な切り返し方としては、どんなのが考えられるだろう。「就職差別につながりかねない質問のやりとりは控えるよう、学校 or 前職で指導を受けまして」的に返すか、「今ぱっと思いつきません」的に返すか。
あるいは、その質問を「自分で仕事の枠組みに読み替えて」答えることができれば一番ではないかしら。例えば「尊敬する人物を言ってください」と言われたら、「~デザインの仕事の向き合い方として尊敬しているのは~さんで、~という著作の中にこういう一節があって」と話を展開するとか。
「自分の生き方」について訊かれたら「自分の仕事上の生き方」について答える、「今の社会」について訊かれたら「自分の専門分野の観点からみて、今の社会にどういう課題を感じていて、仕事を通じて自分がどうそれに関わっていきたいか」を答える。そういうふうに自分の仕事領域に自分で引き寄せてしゃべれれば一番良い感じ。緊張のさなかで瞬発的にやるのは難しかったりするけど、その辺は選考前に整理しておいてもよいかも。
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