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2021-01-24

仕事を「労働」「仕事」「活動」に分けてみる

一つ前に書いた、山口周さんの著作「ビジネスの未来」を読んだという話で最も興味をひいたのが労働観の変化について。ドイツの政治哲学者ハンナ・アーレントは、いわゆる一般的な仕事を「労働」「仕事」「活動」の3つに分けたという。

山口さんの本では、この分類を簡潔に説明してくれている。

生存するための食糧や日用品を得る=労働
快適に生きるためのインフラをつくる=仕事
健全な社会の建設・運営に携わる=活動

これに興味をもってネットで検索してみると、ハンナ・アーレントがこれを著した「人間の条件」について詳説しているブログに行き当たった。平原卓さんのPhilosophy Guides「アーレント『人間の条件』を解読する」。おぉ、平原卓さんって「読まずに死ねない哲学名著50冊」の人ではないか。

で、自分なりの理解で、この3つを図解してみると、こんな感じになった。

Laborworkaction

平原卓さんによるハンナ・アーレント「人間の条件」の解読を一部引用すると、

人間には「労働」「仕事」「活動」の3つの活動力があって、それらが人間を他の動物から区別している。しかし近代社会は「労働社会」となり、私たちが人間であり、自由となるために欠かせない「仕事」や「活動」を押しつぶそうとしている。人間はいまや動物化の危機に直面しているのだ。

また、山口周さんの先の本で問題提起されていることの一部を、私なりに要約してみると、

私たちの社会は「労働」と「仕事」から解放されつつあり、そうすると私たちに残されている役割は「活動」しかなくなる。実際、最前線で活躍している人ほど「遊びと仕事」の境界が曖昧になっている。仕事は何かを得る手段としてではなく、仕事そのものが報酬となっている。労働と報酬が一体化するとなると、労働そのものの概念が変わることになる。これは大転換期である。労働観が「辛く苦しく望ましくないものだが、その対価として報酬が得られる」という位置づけから、「遊びと渾然一体となって、望ましく有意義で、その活動自体が報酬」というふうに変化。つまり「労働」の概念がネガティブからポジティブに転換するなら、労働時間外の「余暇」という概念がポジティブからネガティブに転換することにも。

といったところ辺りに、読んでいて悶々とした思いを抱えた。従来の労働観を前提にした法体制だと、「活動」したい人が制限される、労働にあたらない「余暇時間の確保」を強制されるということにもなり、すでに気になる兆候はある。

確かに、組織が無理やり労働させようとするのを抑制する法律は大事だし、組織が対外的には「これは活動だから」と言いながら従業員的には労働にあたるものを強いられる状況も起こりうるわけだから、そういう意味での法整備は大事だろうと思う。

けれど、それだけだと今後、世の中から「労働」が減っていって「活動」が増えていくとしたら、それを促進したり支援する社会のあり方とか、創造を生業とする職業人をサポートする仕事に就く自分の仕事なり活動なりというのは、どう変わっていくべきなのかとか、そういうことがもやもや頭をもたげた。

この転換期に生きているという認識をもって、目の前の仕事を「これでいいのか」と自己批判しながらやっていく繰り返しが大事なのかなとも思いつつ。今という時代がどういう時代なのか、どういう転換期にあるのかを丁寧にみて、事に仕えていきたいと思う読書体験だった。

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