「組織への忠誠心・帰属意識を育む」課題の揺らぎ
エドガー・シャイン博士の5日間の講義がライブで受けられるとあって、パーソル総合研究所が主催する日本向けのオンラインセミナーに参加した。
キャリア理論の創始者、組織開発研究の大家として知られるシャイン博士、現在92歳。今回はサンフランシスコとつないで「組織社会化」をテーマに講義。講義といっても、参加者とのやりとりを大事にしたいということで、2日目以降は前日の参加者の質問を冒頭で聞いて、それに応じる時間に30分〜50分近くを使い、残り1時間を当日の講義にあてるようなスタイルで進められた。
初日は、武蔵大学教授による1時間ほどの話題提供から始まった。このプレゼンは、在宅勤務には知識共有やコラボ促進する力があるので、もっと前向きに活用していきたいといった趣旨の話から始まった。
これに対して1時間後、一通りプレゼンを聞き終えたシャイン先生が(素晴らしいプレゼンと褒めた後)、「互いを知り合うことはイノベーションに大事なこと。在宅勤務だけではダメでしょう。どのような仕事のタイプなら在宅勤務がふさわしいのか、仕事のタイプ分析・見極めが大事」と切り込むところから話が始まって、すごいジャブ、のりのりやないかい!と思いながら、その後のレクチャーを拝聴した。
いろいろ考えるべき論点の刺激はもらったのだけど、その一つは「組織への忠誠心を育む」という考え方が、一様に大事とは言えなくなってきているんだなということ。
そもそもアメリカでは、組織に対して「コミットメント」という言葉は用いることはよくあるけれど、「ロイヤルティ」という言葉はあまり使わないという話も。確かに、そんなイメージはある。
さらに、シャイン先生いわく、Appleの従業員から聞くのは、Appleには所属したくないけど、Appleのプロジェクトに参加することにモチベーションがあるという話。
会社自体ではなく、その会社が手がけるプロジェクトとか(この会社にいることで、そのプロジェクトに参加できる)、会社の中のサブユニット(ある事業部、ある職能集団とか)に参画意欲がある人もいるでしょうという話。その場合、組織内のジョブ・ローテーションで別部署に配置されれば本人は不本意で辞めてしまったりもする。
組織としては、従業員に対して組織への忠誠心なり帰属意識を求めたり、コロナ禍で在宅勤務が続く中、どう自社への帰属意識を維持・醸成しうるかを盲目的に問いがちだけど、一足飛びにそれを課題として位置づけずに、「どこに対するコミットメントを我が社は従業員に求めるのか?」という問いを一度検討してみるのが得策かもしれないと思った。
従業員が自分のところの「組織」に忠誠心なりコミットメントをもつことを目指すのか、それとも「プロジェクト」に、「事業」に、「職業」にそれを抱くことを許容するなり、推奨するなり、そこをこそ醸成してサポートする姿勢をもつのかどうか。そこら辺も、組織をまわす側、雇用する側の論点としてあるんだなぁというのを意識する機会になった。
それ以外にもいろいろ考えどころ、自分の役割の模索どころを与えてもらった気がする。大局的には、自分の見ているものが合っている感覚を持てたのも収穫。自分のもっている知識の網の目、解決アプローチの選択肢の網の目を細かくできたとも思う。解決アプローチの選択肢の良し悪しについて、自分がちょっと偏ってみていたなぁっていうのに気づいてニュートラルに戻すことができたりもした。だいたいの観点で、産業によっても組織によっても答えが変わってくるって話も、自分にも自分の持ち場での働きどころがあるかもって期待がもてて良かったし、自分の役割の広げ方についてもヒントをもらえた感じ。参加して良かったなぁ。
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