アンケートの選択肢の設け方
このあいだ仕事で、人が作ったアンケートのたたき台に、このままでは出せない!と前のめりになって全面的な加筆修正版を作って提案を返したのだけど(無事に通ったが、納得したためか私の過剰な熱っぽさによってかは不安が残る…)、アンケートの設問の構成・文面はもとより、選択肢をどう用意するかってのも、一言一句ものすごく繊細かつ大事なところで、回答者に対する誠意をもって臨まなきゃいけない仕事だと思っている。
アンケートで設問を送り、それに答えてもらうというのは、広義にとれば「人間同士の会話」とも括れるものだ(ということにして)。
批評家の小林秀雄さんは、「人間同士の会話とは意味と同時に言葉を植えつけることだ」と言っている。「学生との対話」*の中にある、こんな氏の言葉が頭の中に立ちのぼってくる。
問題を出すということが一番大事だ、問題をうまく出せばすなわちそれが答だ、いま物を考えている人がうまく問題を出そうとしない、答ばかり出そうと焦っている
憲法記念日の今日は、憲法改正に関する全国世論調査の結果が各メディアで報じられていて、改正賛否を問う回答選択肢(と回答率)に目がとまった。
▼読売新聞社
改正する方がよい(49%)
改正しない方がよい(48%)
答えない(3%)
▼NHK
改正する必要があると思う(32%)
改正する必要はないと思う(24%)
どちらともいえない(41%)
ちなみに、朝日新聞社も賛否を二分する訊き方で「その他・答えない(11%)」とあり、共同通信社は「どちらかといえば」どっちという選択肢を入れているよう、毎日新聞社は「わからない」を設けているようでNHKに近い。
2つ見比べてみて、読売新聞社は「どちらともいえない」という選択肢を設けなかったのだなぁというのと、人は「どちらともいえない」が与えられていない設問を提示されると、賛否のどちらかを選んでしまうものなのだなあというのを、感じた。
その結果、出てきた数字がコピーライティングされて、意味と同時に言葉を人々に植えつけ、人々の認識をぬりかえていく力をもつ。
自分が答える側の立場としては、与えられた選択肢から選ぶというだけでなく、与えられた選択肢をきっかけに自分でその問いに向き合い、自分の答えを検討する姿勢を大事にしたいって改めて思った。
自分が問う側の立場としては、相手の声を正しく聴こうとすること、引き出そうと努めること、問いかけるときに何を聴いて、どう訊かないか、言葉を丁寧に選ぶことを、改めて大切にしようって思った。
*小林秀雄「学生との対話」(国民文化研究会、新潮社)
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