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2020-03-02

学歴主義に代わる、合理的な何か

何を今さらと言われるかもしれないが、以前ほどではないものの「学歴主義」っぽいものは今も社会のそこここで見受けられる。人の価値判断としても、組織の価値基準としても。例えば、企業が高学歴の人から採用する、学歴によって足切りする、分かりやすいのが応募条件の「四大卒以上」など。

まず、学歴主義について押さえておきたい土台として、最近なるほどなぁって思ったのが、芦田宏直先生の「努力する人間になってはいけない―学校と仕事と社会の新人論」に出てくる「学歴主義に対立する概念は、階級主義、家族主義」という捉え方。

「学歴主義」というのは、大学卒とそうでない人との対立、あるいは今日では難関大学と全入大学との処遇格差が前面化する差別主義のように思われ、日本では特に評判が悪いわけですが、歴史的には、人間を出自(所属する身分・階級)で判断しないという考え方が基本。誤解を恐れずに簡単に言えば、努力する人、努力できる人、勉強する人、勉強できる人が、世の中を治めるべきだという考え方が「メリトクラシー」=「学歴主義」です。僕自身は「努力主義」と訳したいくらいです。

そういう意味では学歴主義って、社会がより合理的に健全に機能するための一歩だったんだなっていうふうに肯定的に捉えられる。

ただ、そこに留まっていていいのか、それこそが一番なのかっていうと、学歴主義の先に、もっと合理的で健全な一歩を模索したくなるのが世の常、人の常。

学歴主義は確かに、身分・階級によるランク分けから人々を解放した。そこまでは良いとして、みんながみんな寄ってたかって「学歴が高いか低いか」という単一の評価軸に頼って人の採否を判定することになると、需給バランスがとれない現実問題にぶち当たる。

採れる企業は採れるけど、採れない企業はとことん採れず、「いい人がいない」問題を抱え込むことになる。求職者個人は個人で、さまざまな(学歴に必ずしも反映されない)能力、資質、気質や体質や性格、並々ならぬ何かへの興味・関心、自然とそれに向かう志向性、それを幼い頃から探求し続けて積み上げてきた経験、経験に裏打ちされた知識・技術の蓄え、そのテーマを観るときのきめ細やかな眼差しなど持っているわけだけど、そういうものがうまく社会に接続せずじまいになるのはもったいない。

どんな職業であっても、地頭がいい人を採用したい、努力したからこその高学歴だろうという企業側の理屈や見立てもわかる。一理あるとは思うのだけど、あらゆる産業が同じ単一の評価軸で採否を判断していくと、結局は需給バランスがくずれて無理が出る。優秀な人を採用できないという問題を、多くの企業が抱え込むことになる。内定をとる人は一部に集中し、それ以外の人が就職難になり、社会は多様性を欠いて貧しくなっていってしまう。

いやいや話が極端にすぎるでしょうって、それはわかっている。どこの企業だって、学歴という単一の評価軸で人の採否を決めているわけじゃない。多様な観点から評価して採否を決めているはずだ。だけど、何を重視するかっていう主義のところで、より明確に、どこの産業でもどこの会社でも求める汎用的な評価軸ではなくて、自社の属する産業、営む事業、求める職種で高いパフォーマンスを期待できるポテンシャルに寄せてオリジナルの評価軸を立てたら、より合理的になるのかなぁと。

個人も、企業も、職業も、事業も、産業も、多様な個性をもっている。私たち人間は、ひとりの人、一つのもの・ことに多様な価値を見いだせるという素晴らしい解釈力をもっている。これを活かさない手はない。せっかく世の中が人の多様性を活かす流れの中にあるのだから、それにあうように社会の仕組みもアップデートしていくのが肝要な時期なんだろう。そんなことを、ぼやぁーっと考えた。

そんなのは何十年も前にコンピテンシーモデルって概念が輸入されて散々やり尽くした議論だよって言われると思うけれど、コンセプトワードとか方法論やシステムの導入云々じゃなくて、もっと素朴に、実直に、本質的に、そういうアプローチがうまく根づいて活かされるように働いていけたらいいのかなぁと思う。なんだろう、職能主義とかになるのかな。

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自社オリジナルの評価軸で、個々の応募者のポテンシャルを測ろうとすると、何で測るべきか、どうやって測るべきか、この測り方でそれは本当に測れるかといった検討事項を自分のところで企てなくてはならなくなって大変だけど、単一的な評価軸でことを評価しようとするより、多様な軸をもっていろんな人がいろんな価値を見出して社会がまわっていくほうが、バランスいいし、合理的だし、豊かなんじゃないかなぁと、そんなことを薄ぼんやり思ったり、言葉にしてみたりしたメモ。わっかりづらいと思うけれども。

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