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2020-02-26

[共有]会社行事でのプレゼンをどう評価するか

プレゼンテーションの上手さって、声の大きさ、話すスピード、話しぶりの流暢さ、佇まいの安定感、円滑な話運び、構成の分かりやすさ、物語の展開力、語彙の豊かさ、興味をひかれる事例選び、スライドの見せ方…と、いろんな切り口で評価できると思う。

けれど、そうした評価軸を分解して提示することなく、聴衆に「どうでしたか?」「良かったですか?」「満足度は?」と、ざっくり総合評価を求めるだけだと、表層的な話の上手い下手だけに評価が偏ってしまう恐れがある。

いや、ショーとしてみれば、仕方ない、パフォーマーが悪い、もっと人前で話す力を身につけろ、話はそれからだ!ってことで話は終わるのかもしれない。

でも、会社行事となると話は別ではないか。たとえば、期の節目に行うキックオフミーティング(全社会議)とかで、前の期を振り返り、今期われわれはこういう活動をしていこう!と、話し手(主に上の人)が聞き手(全社員)に働きかける場だとすると、仕方ないで終わらせず、主催者としては、もう一捻りしたいところである。

参加者に事後アンケートをとったとき、たとえ中身が薄くても、なんとなく話が上手かった気がする(盛り上がった、笑えた、事例が豊富で飽きなかった…)人が高得点をとる。逆に、ぼそぼそしゃべっていて聞き取りづらかった人のプレゼンは、中身の良し悪しに関係なく低評価になってしまう。これが常であれば、組織的にもう一踏ん張りしたいところではないか。

話し手が、大勢の前で話し慣れていなかったり、もともとどちらかといえば聞き取りづらい声質だったりすることもある。前の期では聴く側だった人が、今期から昇進して話し手にまわった、これから徐々に経験を積み、大勢相手のプレゼン力を鍛えていく段の人も出てくる。

そういう場では、話し方一つで「あの人の話は聞くにたえない」と断じることなく、聞く側も話の中身に集中して本質を汲み取る努力をし、話し手も中身を練り上げ、きちんと伝わるように話す努力を重ねていく双方の向き合い方が大事だろうと思う。

それは聞き手にとっても大いに利のあることであり、ひとまとまりの話を聴いて、多角的に、また本質的な論点を汲んで評価するというのは、何者になるのであれ大事な基礎力の鍛錬だ。

そういうわけで、会の主催者が評価軸をいくつか分解して事後アンケートの中に入れこみ、参加者にさまざまな観点からプレゼン評価してもらうやり方もありかなぁと。期首に行うキックオフミーティング(全社会議)を想定して、評価軸の例を8個に書き分けてみた。

▼キックオフ[期首の全社会議]のプレゼン評価(例)
話し方
スライド表現
市場・公共性
具体・現在性
道筋の論理性
内容の妥当性
育成効果性
意欲向上性

それぞれが何を指しているかは、次の資料にお目通しいただければ。

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私の手元には、自分の勤め先のキックオフを想定し(て勝手に書き起こしてみ)た「実施目的」「期待する効果」、それを踏まえた「評価軸」の書き起こしがあるのだけど、その「評価軸」をいくらか汎用的な言い回しに変えたもの。なので、ご利用の際は、資料内の※で付記したとおり、それぞれで、その会の「実施目的」や「期待する効果」を明文化し、これらを踏まえて評価項目を追加したり、上記を変更・削除いただければ。

また、アンケートでどう問うか(設問文の表現、回答の選択肢)は、参加者が回答しやすいよう言い回しを要チューニング。資料内の「どのような観点で評価するか」の説明文は、主催者向けに意図を共有すべく、ゴツゴツした荒削りのまま出しているので。それにしたって、言葉の与え方が適当かは微妙なところだけど…、ざっと雰囲気をつかんでいただいて、よりフィットする言葉に洗練させていっていただければ…。

というわけで、どこでも通用する汎用性の高さをもつものじゃないけれど、一から起こすより、これにケチつけながら自社向け・自部門向けにカスタマイズしていくほうが話が早いかもしれないので、そうやって使えそうだったら、たたき台に使ってください。

趣旨としては、参加者が、資料の例でいう上のほうの項目、「話し方」や「スライド表現」だけに意識を奪われることなく、話の中身の良し悪し、意味の有り無しに関心を向けてプレゼンを聴き、内容の理解を促進したり、皆で健全にプレゼンを評価してブラッシュアップしていく、あるいは全社的にマーケティング視点を涵養する機会に使えたらいいなぁという思い。

もちろん、そういう分解した評価軸と別に「一通りの話を受けて、今回のキックオフに参加した収穫はありましたか」と総合点を訊いて数値評価したり、「具体的にどんな収穫がありましたか」とコメントを求めるのも有効かと。

追記:PDFのダウンロードはSlideshareから。

2020-02-19

詳しくないものを買うときの「商品カテゴリー名 ランキング」検索は最強ありがたい

勢いだけで書き留めた文章なのだけど、自分が詳しくないものを買うときの、1. 「商品カテゴリー名 ランキング」でググる→2. Google検索結果の上位に出てきた○○ランキングページをいくつかチェック→3. レビューコメント付き&選び方コンテンツ付きページの威力は絶大、最強ありがたいと思ったメモ。

昨日から、私の体内で花粉症が猛威を振るいだし、朝の移動だけでヘロヘロに。だいぶ前に買っておいたマスクが手元に3つ(今日時点では2つ…)あるのだけど、新型コロナウイルスの影響で新たなマスクの入手は当面期待できないそうにないので、ここ数日は「花粉きてるなぁ」と思いつつ鼻をさらして歩いていたところ、昨日は朝からどうにもこうにもな状況に陥ってしまった。午前中に何枚ティッシュを使ったかしれない。

というわけで緊急の対策会議。マスクではない方法で、どう防御するか。っていうかマスクしないとしても、なぜ私は今の今まで、その他に何一つ策を講じず無防備に歩いているのかと、はっとする。

ここ数年は、取扱説明書に「副作用:悪夢」と書かれている内服薬を恐れて、ずっとマスクで物理的に防御してきたのだけど、今年はマスクが無理。ならば、別の対策をこれと決めて即効、講じなければならない。なんだ、何がいいんだ、そうだ、点鼻薬がいいんじゃないか。あれはすごく直接的な感じがあるし、内服薬のように脳内に侵食してくる感じがない。

雰囲気だけで即断即決。迷っている余裕はない。点鼻薬に狙いを定めて、ドラッグストアに足を運ぶ。すると、なんだかずらりと10種類くらい並んでいる。んー、やっぱり、これは効くとか効かないとか、いろいろ世間の声があるんじゃないの?と一旦撤退。とはいえ、1時間以内に買う気は満々。とりあえず店頭を離れ、Google先生に訊くのだ。

歩きながら「点鼻薬」と打ち込む。すると、気の利くGoogle先生が「点鼻薬 ランキング」で調べてみたら?とサジェストしてくれる。「そうそう、そういうことなんです」と、その検索フレーズで実行。駅に入り、電車に乗りながら、一番上に出てきたランキングページに目を通す。

この一番上位のランキングページが、個人的にはちょっといただけなかった。ただ商品のランキングを載せているだけで、何の説明文もレビューコメントもついていない。とりあえず売れ筋はチェックできるかと、上位1~3位あたりの商品画像に目を通して、これがメジャーなやつなんだろうなぁと思いつつ、パッケージが青っぽいやつとか、緑っぽいやつとか、覚えたような覚えていないような感じで、検索結果ページに戻る。

待ったなしの客とはいえ、いや、だからこそ、「私にはこれ!」という決め手の情報・選択眼を欲しているのだ!

ちなみに、ここのページ、後でチェックしてみたら、PCでアクセスすると製品の紹介文が掲載される(レビューっぽくはないが)。でもスマホでアクセスすると説明が何も表示されない。下の画面キャプチャは、左がPC画面で紹介文あり、右がスマホ画面で紹介文なし。

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これ、せっかく検索結果で1位なのに、もったいないんじゃないかなぁと思ったが、人によるのかな。ランキングだけ知れれば良くって、情報量はこざっぱりしていたほうがいいって人も多いのか。スマホ画面に説明文入れちゃうと、2位以下が画面の下に消えちゃうもんな。

LOHACO:点鼻薬・鼻炎スプレーの人気ランキング

さて、とりあえず私はレビュー読みたさに別のページへ。すると、点鼻薬のランキング、レビューのコメントに加えて、どういう選び方をすればいいのかまで記事にまとめているページが2番手にあった。

Gooランキング:点鼻薬おすすめランキング20選【アレルギー・風邪・乾燥対策で快適】

もったいつけて20位から1位の順で並んでいるのは、急ぎ客なので、ざざーーざざーと素通り。スマホ画面を勢いよく指すべらせて、上位3~1位をチェックしようとすると、勢い余ってくだった先に「点鼻薬の選び方」なる見出しが光る。す、素晴らしい!そう、それを知れたら選択が早い!と飛びつき、ありがたく拝読。ざざーざざーと下ってきた客が、勢い余って1位の下のこれに到達すると見込んでの、このレイアウトなのだろうか。

なになに、最近のステロイド系は、(1年に3ヶ月以上使用しない限り)副作用も少ないし、眠気が出るなど全身に作用がまわらない点でも良いとな。即効性があるというより、使い続けるうちに効果が出てくるタイプとはあったけれど、基本的に副作用に対する拒否反応が私はけっこうあるので、とするとステロイド系の商品がいいってことか。じゃあ、売れ筋でいくとこれかと商品を定めると、駅から出てきたところの街の、さっきとは別のドラッグストアで点鼻薬を購入。

こういうのか、今どきの、あれこれ移動しながら買うものを決めこんでいく節操ない消費者のものの買い方というのは、などと思いつつ点鼻薬をゲットして一息。

そうなのだ、具体的な商品知りたさにランキング情報を求めてやってきつつ、いざ1つの商品に決めるとなると、決め手に欠けて、そんなとき目に入ってくる「~の選び方」に飛びつき、一旦そっちに目も意識も奪われた後、再び自分なりの選択眼をもってランキング&レビューに戻ってきて、私の求めるのはこれ!と、1つの商品に決めて買うという次第で。先の全部入りページ、ありがたいこと、この上なしだった。売り手側からみると、やっぱりSEOに強いメディアにランキング記事で取り上げてもらうというのは、王道にして最強感あるのかなぁと思った。

それで、点鼻薬の調子はというと、こりゃあ効くんじゃないか。思い込んだほうが一層効果ありそうだから、絶大な信頼感をもって昨日から使いだしているのだけど、だいぶ楽になった感じはする。まぁ比較対象が、なんの策も講じていなかった昨日朝の自分だから、当然といえば当然かもしれないが。とにかく昨日の朝とは大違いで、すごいなぁ、点鼻薬は!すごいなぁ、文明の力というのは!と、ひとり感動にひたっている。春まで点鼻薬でのりきれたら、これを契機に来年以降もマスクじゃなくて点鼻薬でいこうかなぁと期待をふくらませている。

2020-02-14

「クリエイティブ職のためのキャリア形成ワークショップ」の足場作り

やっと形になった、クリエイティブ職のためのキャリア形成ワークショップ。

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このテーマでは、これまで映像・ゲーム・Web系のクライアントさんや業界コミュニティにお声がけいただいて、オープンセミナーや社員研修という体裁で、1時間ほどの講義+プチワークをすることはあった。

が、今回は社内の仕事として時間が作れたので、がっつり4時間のフルパッケージ版で、クリエイティブ職のためのキャリア形成ワークショップを起こしてみた。講義とワークと、あれこれ構成立てて教材開発してパッケージ化。

まだ、この4時間ものは通しでやっていないので粗削りの状態だけど、
1)社内で品評会的にやってみる
2)自社の派遣稼働スタッフさん向けに実施
3)ご要望に応じてクライアントさんにも社員研修としてご提供
という段取りを踏みつつブラッシュアップしていく予定。

また、すでに引き合いいただいている法人のお客さんもあるので、1~3のステップに必ずしも縛られず、それぞれに合った内容とタイミングでカスタマイズ&アップデートしながら、有意義に、かつ能率的に自分のキャリアを考えられる機会を提供していきたい。

とりあえず、ベースを整備できたので、早く、安く、相手にあった形に作りこんで提供できる下地ができて良かった。

あとは、講師、ファシリテーター、そしてキャリアカウンセラーとしての腕をどこまで磨いて関われるか…。これが一番難しいし、終わりはない。いつまで経っても、どこまで行っても、スタート地点の感が否めないけれど、人生ってきっとそういうものなんだろうということで次に進んでいこう。

2020-02-13

[共有]一人でもできる、自分の置かれた環境分析シート

少し前に共有した一人でもできる、キャリアの棚卸しシートに続きまして、これまたキャリアデザインに際して、一人でもできる「自分の置かれた環境分析シート」を作ってみましたので、使えそうな機会があれば下のSlideshareからダウンロード→A3紙に印刷して、ぜひご活用ください。

一人でもできる、「自分の置かれた環境分析シート」

以下、なんじゃそりゃ…という話を少々。

キャリア選択の岐路に立ったとき(例えば転職活動をするとか)、次に自分がどういう仕事をしたいのか、どういう職場で働きたいのかとか、いろいろ整理すると思うのですが、こうした「自分がどうしたいか」から少し枠を広げて、「自分の置かれた環境から、職場に求める条件を整理する」のに役立てる自己分析シートです。

人それぞれに、職場や家庭、関わるコミュニティや社会から期待されている役割があり、負っている責任や義務、果たすべき約束・契約があるものです。親として子どもの育児に関わるとか、子どもとして親の介護に関わるとか、今の職場でも誰かの上司・先輩として果たす役目もあれば、誰かの部下・後輩として果たす役目もあったり。家庭や職場のほかにも、いろいろな役割や、現実問題としての制約条件を、それぞれに持っているものです。

また逆に、周囲から期待できる自分へのサポートもあるかもしれません。親御さんが近くに住んでいて、子育てのサポートをこの程度なら頼めるとか、転職活動にあたって信頼をおく前職の先輩の○○さんが転職先を紹介してくれそうだとか。それぞれに人間関係をもっていて、そこから受ける制約もあれば、支援を期待できる環境もあったりします。

転職活動するなどのキャリアデザインの局面では、自分が今後やりたい仕事を分析する以外に、こうした環境面にフォーカスして、一度改まって自分の置かれた立場を網羅的に書き出してみることも大切です。そうすると、見落としていた職場の前提条件を認識できたり、期待できそうな周囲のサポートに気づけたりします。場合によっては、今の職場がいかに自分が求める前提条件に適った場所かを再認識する機会になるかもしれません。

というわけで、こうした環境分析を行って、自分が職場に希望することや、働く上で前提条件を整理してみようというのが、このシートの役目です。いざ洗い出してみようと思っても、なかなか網羅的に洗い出すことって難しいものなので、そういうのはこうしたシートを使って切り口を提供してもらったほうが、漏れなく効率的に洗い出せるだろうという話です。

できるだけ、いろんな観点から自分の環境に気づきやすいように、項目立てを用意した他、ちょっとした手引きをつけてあります。書き込むのに困っている人がいたら、自分はキャリアカウンセラーとしてどんな声をかけて中身を引き出すだろうかというのを考えながら「こんなことはないですか?」という項目を、手引きとして書きこんでおきました。

こちらの手引きも参考にしつつ、自分の置かれた環境(あなたの前提・方針)→職場への希望・条件(=職場への確認事項)を整理するのに、お役立ていただければ幸いです。

転職活動では、挙がった希望・条件を、転職先を探す際の検索項目に使ったり、選考時に漏れなく面接官に確認を行ったりする際に役立ててください。

また、挙がった条件を1シート上で見渡してみて、絶対条件かどうかを評価して優先順位をつけることで、絶対の前提条件と譲歩できる条件を自分の中で整理するのにも使えるかもしれません。

キャリアデザイン過程において、メインの自己分析って感じではないですが、いろんな観点から自分の前提や方針を洗い出して整理したいときに、ぜひお役立ていただければ幸いです。また使ってみての不具合などありましたら、ご指摘いただければと思います。

2020-02-08

母が遺した謎

母が他界して9年経つ。東日本大震災が起きる直前だった。12月末に末期がんが発覚して、翌年2月10日の早朝に逝ってしまった。

それからこれまで9年間、数ヶ月に一回ペースで、お墓参りに行っている。2月の命日、4-5月のゴールデンウィーク、8月のお盆、12月の年の暮れには必ず足を運んでいるので、そうすると、そういうことになる。

さて、父と私、その時々で兄や妹も連れ立って母のお墓を訪れると、わりと高い確率で、先客がお墓参りに来ていて花を供えてくれている。花筒にきれいなお花がすでにあるのだ。すぐそこで売っている花ではなくて、きちんとどこかで買ってきて持ちこんだふうの立派な花である。

父はずっと、それが誰なのかと気にかけていた。この年末に父と妹と3人で行った時にもお花があって、いよいよ気がかりが止まらなくなったのか、夢にも出てきたそうである。さすがに9年も通い続けてくれる人が家族以外にもいるとなると、ということもある。

父は毎回、誰なんだろう、誰なんだろうと先客の花に遭遇するたび口にしていたけれど、私は一貫して軽く受け応えていた。誰だろうねぇ、ありがたいことだねぇと。私にはそれを詮索する気はないし、詮索しない明確な意思があった。

それは「誰か」なのか、複数なのかも。そう頻繁ではないにせよ、兄が家族を連れ立って、私たちとは別に訪れたこともあるそうだし、母のお姉さんがたもそう遠くない所に住んでいて気にかけてくれているから何かの折に立ち寄ってくれたことがないとも言えない。親戚や近所の人にとどまらず、高校時代の友だちだの職場の同僚だの、お葬式にだって200人近く来てくれたのだ。毎回特定の誰かが来ているという確証もない。

まぁ、ただ、親戚以外には知らせていない(と思う)お墓を探しあててやってくる人って?となると一気に謎めいて来るのだけど。お墓を買ったのは母が亡くなった後のことだけど、墓地の候補なりの情報は、生前に母から誰かへ発信されていたのか。あるいは、母を想う人が大変な時間をかけて手当たり次第に墓地を歩き回り、あるとき墓誌に記された母の名を探し当てたのか。私はそこで考えることを止め、ありがたいことだねぇという気持ちに落ち着くことにしたのだった。

つい先日、母の命日を目前に、父と兄と私でお墓参りに行った時は、花筒は空っぽだった。命日より前に行ったので、もしかすると当日に誰か足を運ぶのかもしれない。

ただ、花はなくとも父がまた、気になる、調べたい、夢に出てくるんだと言うので、そんなに気になるんだったら、調べるより、そこからイメージを膨らませて小説でも書いてみたら?と提案する。我ながら、なんて素晴らしいアイデアだ。アンチエイジングにも効きそうだし、いいじゃないか。と思ったが、父は馬鹿言うなと取り合ってくれなかった。

お墓参りを終えてのランチタイム、天ぷら屋で再び父が誰なんだろうと話を持ち出すので、やや真面目な応酬になった。

父が、調べて報告してよとか(この件に限らない口癖)、お墓の人に聞いてみるのはどうかとか言っているので、いいじゃあないの、ありがたいなぁと思って静かにしていたら、と私。兄は隣りで、ふむーと話を聴いている。

別に、墓が荒らされてるっていうんじゃないのよ。お花を供えてくれているんだから、ありがとうでいいじゃないの。犯人探しのように身を乗り出して調べ上げようとしなくても。お母さんにはお母さんの生きた人生があって、いろんな人とのつきあいもあったんだよ。それをすべて把握しようなんて野暮なことだよ。他人にはわからない人生をみんな持って生きてるんだから。お母さんの立場になってみたら、お父さんに身を乗り出して、お花を供えてくれている人が誰か詮索されたがっていると思う?人の人生を全部把握したがるなんて粋じゃないよ。

そんなことを言って私が口答えすると、おまえ、そういう時はねぇ、お父さんその通りですねって、そう返しておくんだよ。そんなんじゃ社会でうまくやっていけないぞと、諭すようなことを言って、父が直接対決をかわしてくる。

私のこんな調子は父譲りにちがいないのにと思いつつ、反論の続きを待つと、おまえの言ってることはもっともらしく聞こえるが、口だけ言葉だけだ、こんな9年も続いてたら誰だって知りたくなるだろ?理屈はおまえの言ってる通りかもしれないけど、理屈じゃないんだよと、そんなようなことを言ってきた。

理屈じゃ説明つかない思いが募ること自体は理解できる。だけど、知りたいと思うかどうかと、調べようとするかどうかは別問題だ。私は、いま自分が伝えようとしていることは薄っぺらな理屈なんかではなくて、すごく大事な自分なりの考えを話しているつもりだったので黙っておれず、いや、ものすごい本質的な話を私はしているつもりだよ。人のことを尊重するって、そういうことだと思うんだよと切り返す。兄が隣りで、ふむーと言う。

父はそこで、いくらか間をあけ、やれやれという感じで、兄に別の話題をふった。なので、そこで私もリングをおりたのだった。

兄に全然関係ない話をふった後、ものの数秒もたたないうち、父は私の目をしっかり見て、その移ったほうの話題について私にも質問をふってきたので、わだかまりは特にないっぽい。こういうあっけらかんとしたつきあいは有難い。

私は、私の考えが正しいと思っているわけでも優れていると思っているわけでもない。ただ、私はこう思うんだよと伝えたいので話す。言いくるめたいわけじゃない。説き伏せたいわけじゃない。いや、俺はこう思うよという話があれば、それはそれできちんと聴きたいと思っている。その時は余裕がなくてぐぬぬっという顔を見せてしまうかもしれないけど、持ち帰ってよく噛み砕いてみる意思はある。そうやって自分の閉じた視界が開かれ、浅はかな思いこみを反省した経験も少なくない。それが普通の、本当の会話だと思っているだけなのだけど。

けれどまぁ、父にしてみれば、やれやれな娘である。それに父がまた夢にうなされてしまうのは全く本意でないし、酷である。私の今回のかみつきで、父が、そらそうだな、気にしないことにしようと思い改まるとも思えない。

いいじゃないの、最期の最後まで、あなたの大好きな彼女は、自分の女房でいてくれたんだから。あなたの女房として生涯の幕を閉じたんだから。それはとても素敵なことでしょう?ラッキー、ハッピー、それでいいじゃあないの、私はそう思うんだけど。能天気なのかしら。

2020-02-05

[共有]一人でもできる、キャリアの棚卸しシート

少し前のこと、「7割の働き手は、自分のキャリアやスキルを棚卸しした経験がない」という調査結果が目に止まった。

気になったので情報源をたどってみたところ、経済産業省サイト内にある資料で、「キャリアの棚卸しをしたことがあるか」「行った場合、その手段は?」を問う調査結果に行き当たった(産業人材政策室 2017年12月 「人材像WG参考資料集」 P43~60、上の記述はP57)

対象者は、民間企業でフルタイム勤務する30~50歳の潜在的転職者(転職を意識したことがあるが、実際に転職までできていない層)で、インターネットによる調査。

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ここで問う「キャリアの棚卸し」とは、これまで携わってきた全ての仕事、身に付けた全てのスキルについて書き出し、整理すること。

回答は、やったことが「ない」がダントツの7割(71.5%)。続いて「自力で」やったが2割(21.0%)、あと残りの「企業内研修で」「転職サイト等への登録で」「友人・知人に相談して」「キャリアコンサルタント等のプロに相談して」やったが、まとめて1割満たない。

キャリアの棚卸しというのは、「手間がかかるし疲れる」「面倒くさい」以前に、「知るもやるも、機会がない」ことから、あまり行われていないように思われた。それっておいしいの?という人がマジョリティではないかと。

ただ実際のところ、過去の自分ほど、本当の自分を深く知れる(探れる)情報源もないのでは?というほどに、自分がこれまで実際にどうしてきたか、その時どう思ったか、それでどう行動したか、しなかったかというのは、自己洞察の最たる情報源。

スガシカオも「progress」の中で歌っている。

ずっと探していた 理想の自分って
もうちょっとカッコよかったけれど
ぼくが歩いてきた 日々と道のりを
ほんとは”ジブン”っていうらしい

恐れ入った…。というわけで、これまでのキャリアを丁寧に棚卸ししていく中で、無意識下にあった自分の特徴を意識(認識)することができる効用は確かにある。

オーソドックスなやり方だし、手間はかかるが、他の手軽なメソッド・ツールではなかなか掘り起こさない、自分オリジナルの自己洞察に当たれるのが、キャリアの棚卸しというやつではないか。

時期ごとに、自分の好きなこと、嫌いなこと、得意なこと、苦手なことなどを掘り起こすことができ、次に活かしたいこと、逆に自分が金輪際かかわりたくないこと、人、環境もはっきりする。

また一枚のシートに過去のキャリアの全容を書き記すことで、俯瞰的に自分の浮き沈みや、自分の一貫したこだわり・関心事、段階的な成長をうかがい知ることもできる。シートを見渡すと、点と点をつなぎあわせて新しい可能性を発見・発想できることもある。こうした情報が、今後のキャリア選択の指針になったり、自己アピールのネタになったりもする。

30歳くらいまでに一度やっておくと、あとはアップデートで済むので、後々も活用しやすい。あんまり歳を重ねちゃうと、もう昔のことを思い出せなくて、やるのがしんどくなる…。

私はたまたま、若い時分に転職を何度かしたので、その都度やる機会があったのと、キャリアカウンセラーになるための講座受講時にやる機会があったのと、そういうのを熱心にやる親会社だったときに30歳前後の社員がグループ各社から集められて企業内研修でやる機会もあった。

あと転職求人サイトの「中の人」をやっていたときに転職相談アドバイザーとして働いていたので、ユーザーのWeb職歴書の添削を数千件はやっていて、「キャリアの棚卸し」作業には並々ならぬ縁があるけれども、そんな人はマイナーだろう。

ということで、一人でもできるように「キャリアの棚卸しシート」の型と手引きを作ってみたので、(1)とりあえずやってみたいという方、(2)今ちょうどそういうことをやるべき時期な気がするという方、(3)自分の志向を探りたいけれど、何のメソッドもなく立ち往生しているという方などは、ぜひ試しに使ってみていただければ。Slideshareにて、とりあえずダウンロードできるようにしてみました。

一人でもできる、キャリアの棚卸しシート(型と手引き)

使い方は、シート内にも書いておきましたが、
(0)ダウンロード→A3紙に印刷(1枚目がサンプル、2枚目が記入シート)
(1)自分のキャリアを大まかな時期に区切って「年齢/時期/西暦」を記入
(2)時期ごとの「満足度の高さ」を、まずはざっくり曲線で表してみる
(3)各時期の「主な居場所」「主な活動」「主な出来事」「影響を受けたコト/モノ/ヒト」などを振り返って、埋められるところから飾らない言葉でメモ書きしていく。時系列で埋める必要はない。後から思い出したことがあれば、その都度、書き足していけばいい
(4)これまでの経験を振り返った中で「発揮した能力」「獲得した能力」「自分に関する気づき、再認識したこと」があれば書き出してみる
※記入に困ったら、右枠の「記入の手引き」も参考に

必ずしも全員やるべきものだという話でもないけれども、有用な局面にありながら、その存在を知らなかった、やり方がわからない、面倒くさいというので、できていないというのであれば、そこを乗り越える支援ができたらと思います。他にこういう項目出しも有効だったとか、こういう順序だと書きづらいとか思うところあれば、フィードバックくださいませ。

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