中高年になっても衰えない「知能」の話
「明らかに衰えるのは80代になってから」の知能もあるという話に元気をもらったので同輩~先輩に共有したく。大久保幸夫さんの本(*1)に紹介されていたシェイエ(K. W. Schaie) の研究によれば、
知能には、新しいことを覚える流動性知能と、経験を活かす結晶性知能とがあり、どちらも25歳を100とした場合、高年齢になっても概ね若年以上の高い水準を保つ
この本に掲載されていたグラフ「知能と年齢の関係」は1980年のものだったので、もっと新しいのがあるかもしれないと思ってネットで調べてみたところ、たどり着いた2013年の情報も、引き続きポジティブでありがたい研究結果、胸をなでおろした。
健康長寿ネット「高齢期における知能の加齢変化」のページ中ほどにある「2.同一の対象者を追跡する縦断研究」によれば、なんと先ほどのシェイエさん、1956年から2005年まで半世紀にわたって、7年間隔で8回、複数の年齢集団(すべての調査回が新しい標本)を対象とする知能検査を行ってきたという。さらに各々に対して、7年ごとに再検査を行ってきたというから、頼りがいある研究者。
ちなみに、このページを著した西田裕紀子さんの解説で、改めて2つの知能の違いを確認しておくと。
▼結晶性知能
個人が長年にわたる経験、教育や学習などから獲得していく知能(言語能力、理解力、洞察力などを含む)
▼流動性知能
新しい環境に適応するために、新しい情報を獲得し、それを処理し、操作していく知能(処理のスピード、直感力、法則を発見する能力などを含む)
西田裕紀子さんが先のページで挙げているポイントを2つ、まずは手みじかに列挙。
●結晶性知能である「言語能力」がピークを迎えるのは、なんと60代!
●流動性知能を含むその他ほとんどの知能が55~60歳頃までは高く維持される
さらに、このページに掲載されている「図3:縦断研究による知能の加齢変化」のグラフを食い入るように見ていると、6種類の知能の加齢による変化を表した折れ線ぐあいが、ざっと3パターンに分けられる気がしてくる(しろうと目)。
【Aパターン】25歳を頂点に下り坂、ではあるものの、下降線はなだらか。明らかに衰えてくるのは60歳過ぎてから(数的処理、知覚速度)
【Bパターン】25歳以降も多少の上り調子~維持が続く。明らかに衰えてくるのは60歳過ぎてから(推論、言語性記憶)
【Cパターン】25歳以降も調子よく伸びていき、空間認知は53歳がピーク、言語理解に至っては67歳がピーク。25歳レベルを明らかに下回ってくるのは80歳を超えてから(空間認知、言語理解)
Cパターンの、なんてワンダフルなこと。でも、いずれにしても、けっこうな老齢まで、けっこう元気なんである。ものによっては、25歳と同等か、それを上回る知能を米寿まで維持できる勢い。
といっても、頭を冷やして考えると「個人差がある」というのは言うまでもない話なのだけど…。
それでいうと、先ほどの大久保幸夫さんの本に、「あくまで仕事を継続している限りにおいて言えること」であって、「一年を超えるようなブランクをつくってしま」うと急速に落ちると考えられているそう。時間の使い方、頭の使い方、生き方次第というのは、さもありなん。
年齢・年代でひとくくりに語れることって、歳をとればとるほど少なくなっていくんだろうなぁと思う。四十も過ぎたら、もう「年相応」も何もなく、健康に、楽しく、社会と調和して、知性をもって、個性的にやっていけるのが幸せだな。そのためにも、体も頭もブランクをあけずに使っていかないと。
*1: 大久保幸夫「キャリアデザイン入門[II]専門力編<第2版>」(日経文庫)P173
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