ブロックチェーンと学習プラットフォーム、個人のキャリア情報のオーナーシップに思いを馳せる
ことわり:タイトルが長いのは、話がまとまっていない書き散らかしのメモだからです。謙遜ではありません…。
▼シロウトによる「ブロックチェーンとは」
ブロックチェーンというと、仮想通貨のビットコインを実現する技術として有名だけど、HR業界では学習プラットフォームにも活用され出しているという話を、「ATD 2019-ICE報告会」(*1)で聴いた。
ブロックチェーンというのは、暗号化された公開台帳の技術で、中央で集中管理するのではなく分散してデータベースを管理、タイムスタンプをつけて情報をアップデートしていく仕組みだとか(シロウト理解)。
分散してデータを管理しているので、偽造・改ざんができない。タイムスタンプがつくので、どっちが先だったか後だったかで揉めない。
▼仮想通貨以外のブロックチェーン活用
そんなわけで仮想通貨にかぎらず、語学力・学位・各種資格や免許などの証明書、契約書の発行、生産履歴の記録と証明なんかにも活用が期待されていると言う(シロウト解釈)。
すでに難民やホームレスなど身分証明をもたない人たちのIDとして実験的な活用が始まっていたり。アムステルダムにある美術館では、贋作の防止とか、盗難して売りさばけないようにするのに活用しているとか。学者の研究成果や論文も、タイムスタンプがつくことで、どっちの発表が先か問題で揉めないで済むなんて動きがあるのだとか。
マサチューセッツ工科大学(MIT)では、2017年にブロックチェーンで実現させたデジタル修了証書を授与したことが話題になった。学歴詐称できない仕組みの実現だ。
学習プラットフォームとしては、BitDegreeというリトアニアの会社がエンジニア不足を解消すべく、ブロックチェーンを活用した学習プラットフォームをこしらえた。学生にe-ラーニングを提供し、これを通じて学ぶと学生は仮想通貨がもらえて、学ぶだけで収入が得られる。会社側はこのラーニングで出来の良かった人に、仕事のオファーを出せる仕組みを構築したとか。
▼ブロックチェーンが普及した世の中
さて、ここからは技術や市場に明るくない一市民の、ただの妄想だが…。
ブロックチェーンの仕組みがいろんな分野に普及すると、難民にかぎらず一般市民が、性別から血液型、住所の変遷、学歴、成績、資格、趣味嗜好、信条、職歴、業績、保有スキル、人脈、その他のキャリア情報まで、自分のIDに紐づけて自己管理する方向に進むのかしら。
そうすると、自分のデータは、国でも勤務先でもなく、個々人がオーナーシップをもってマネジメントする世の中に、前提が変わっていくのか。
いや、今だって個人情報は保護されているのだし、そうだといえばそうなのだろうけれど。昔はイエローページの一般家庭版、青色のハローページなるものがあって、一般家庭の世帯主&電話番号が分厚い冊子になって市民にばらまかれていたのが、今はそんなことありえない世の中になっている流れを鑑みるに、個人が自分のさまざまな情報にオーナーシップをもって、何を開示して何を開示しないか、誰に開示して誰には開示しないかを自分で選択する時代変化の中に身を置いているのかな、という感じがしている。
勤め先、役所、友人A、家族B、パートナーなど、どこにどこまで出して、どの情報は出さないか。今でも、奥さんに財布を預ける人もいれば、結婚&子育てしていても財布は各々で管理している夫婦もあるように、どこまで誰と運用をシェアするか、誰かに自分の情報管理の権限移譲するかは多様であろうけれど。
▼組織と個人の、従業員データ所有感
組織視点に立つと、これまでなんとなく終身雇用の前提で、HR部門がオーナーシップをもって従業員のさまざまなデータを情報管理し、従業員個々に見せたり隠したりをコントロールしていた感覚が少なからずあるのだとすると、情報の取り扱い権限が、従業員個人のほうに比重を移していくのかも、という気もする。
そもそも1社で40年勤めあげるなどは、大手の、一時だけの、例外的な生き方であって、基本はこれまでだって個々人が自分の情報を管理し、キャリア形成を主導する立場にあったとも言える。アラフォー世代の私なんかは、そういう感覚である。
ただ、昔はなぁなぁだった情報管理が厳しくなって、その情報は誰のものなのかをはっきりさせる必要が出てきた。
今だと、ある企業の勤務期間中に外部の方と名刺交換して受け取った名刺は、退職時に全部廃棄してから辞めるみたいな運用って、けっこうある気がするんだけど、これって過渡期の暫定的な対処法な感じもあり、ちょっとぎくしゃくしている。
もっと思いきり個人のほうに、キャリアにまつわる情報のオーナーシップが移ってくると、これまで「組織のもの」感覚だった「人脈」なる価値が、個人が所有して持ち歩けるものとして、もっと勝手よくなっていくインフラ整備が進むのかなぁとか。何をイメージして話しているやら、わからないかもしれないが…(私もよくわからないから大丈夫だ…)。
従業員が勤めている間は、その人が学習したスキルとか、達成した業績なんかをデータとして付与して、会社によってはそれを退職時に個人が持ち出せる状態で証明書的に発行、個人は自分のIDに紐づけて次の職場、その次の職場へ持ち歩くことになっていくとかが、あるのだろうか。そういう証明書を快く発行してくれる企業に人気が集まったりとか。
SCORMに置き換わってxAPIで学習データを統合管理するようにする動きはあるらしく、従業員の経験を記録するためのデータ言語(主語・動詞・目的語)をもって、何を学習したのか、何を読んで、何のビデオを視聴して、何のブログを書き、何のシミュレーションテストに合格して、何を達成したかといった履歴をxAPIとかで、いろんなシステムを渡り歩いて管理できるようになったりとか、するようである。
▼就・転職する際の求職者データも
分かりやすいところで言えば、誰もが知るグローバルカンパニーに勤めていたとか、そういう組織に入社できただけでなく、入社後も会社から賞賛されるような功績をあげていたとか、退職後もフェローとして良好な関係をもっているとかが、本人の自己PRに終わらず、その組織が発行したデジタル証明書によって示せれば、個人のキャリア形成においては大きな後ろ盾になるかもしれない。就・転職するときに他者の推薦文を提出するような文化圏では、早々に取り入れられるのかも。
個人が求人に応募するとき、入社するとき、その時々の求めに応じてブロックチェーン上で信頼性を確保されたデータを提示することになり、雇用する組織側は選考時、雇用時に、その時々の必要に応じて、必要な分だけ過去の蓄積データを従業員から提示してもらって、その人の所属期間だけ活用できるように雇用契約を結ぶことになるのか。
実際には、選考する側の企業が要求する情報を、求職者は提出するのが基本で、出すのを拒めばそもそも選考してもらえないという力関係が働いて、今とさしてオーナーシップのありようは変わらないのかもしれない。
けれど、入社後も含めた個々のキャリア情報を持ち方、作り出し方、与え方、持ち回り方は、けっこう個人によるデータの持ち主感覚の比重が高まっていくのかもしれないなぁなどと思った。強気にふるまえる企業は今後もあり続けるのだろうけれど、強気にふるまえる個人も今後はどんどん出てくるのではないか。そうすると、個人の側が、この範囲のデータ提示で労働契約を結べないなら、あなたの企業には就職しないという判断も出てくるのかもしれない。
どのデータは雇用主に、その勤務期間中だけ提供していいと思うか、企業との信頼関係、入社時の契約とかによってくるのか。退職時には、どのデータは残して、どのデータは個人名を省いて統計的に活用できるような契約にして、どのデータは完全に削除するかなども、手続きするようになるのか。
▼妄想を終えて…
いや、たぶんすでに、こういうのを妄想じゃなくて、リアルに仕事で構想なり計画なり設計開発なりしている人がいるのだろうけれども。
とりあえず一市民として、あるいは人材開発に関わる端くれとして、ブロックチェーンを仮想通貨に偏った技術と捉えず、自律的なキャリア形成と紐づく位置づけで情報を取り入れていこうと思った(控えめ…)。
最初に宣言しておいた通り、これは妄想の書き散らかしメモであり、ここまで読んでしまって、なんて骨折り損のくたびれ儲けな文章なんだとがっくりしてしまったとしても、どうか受け流してください。
*1: ATD (Association for Talent Development) が年1回世界中から企業の人材開発関係者やコンサルタント、教育機関、行政体のリーダーなど25,000 名以上を集めて開催している人材開発の国際会議。ATDは、組織における職場学習と、従業員と経営者のパフォーマンス向上を支援することをミッションとした世界最大の会員制組織
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