専門職のチームの置き方、まわし方
連載しているWeb担当者Forum「Web系キャリア探訪」第9回では、メルカリ樫田光さんのチームの作り方・育て方の話も、じつに聴き応えがあった。
チーム論やリーダー論として他所で耳にしたことがあるノウハウでも、これだけ実践できていて、これだけ成果につなげている人はそうそういないのではないか。最終的には、樫田さんの人間力…みたいな話にしか着地できないんじゃないかって気もするほどだったけれど、チームの作り方・育て方について考えさせてもらったことをメモしておく。
組織構造モデルでいうと、組織を「機能別」にするのか「市場別」にするのかって話がある(後者は「事業部制組織」っていうのが一般的だけど)。
●機能別の組織(横軸)
研究開発、製造、販売、営業といった組織の機能、職種/職能ごとに組織を分けるやり方
●市場別の組織(縦軸)
製品・サービス、地域、顧客/顧客の業種といった市場/事業部ごとに組織を分けるやり方
どちらも一長一短、事業の規模とかステイタスとか、会社全体の戦略とか、現在どういう人員で構成されているかとか、いろんなことを考慮して判断するのでしょうけれども。
メルカリのBIチームは、樫田さんの手腕で、この2つのいいとこどりをした「マトリクス組織」的にうまく配備・機能させているんだろうなぁという印象をもった(素人目)。
●マトリクス組織
機能別/市場別などで縦軸・横軸の組織構造を併存させ、メンバーが縦・横2つに属して活動する組織
樫田さんが2018年4月に登壇された「Data Analytics Summit 2018」のスライド資料(77ページ目)によれば、メルカリは会社の大枠としては「事業」「地域」といった市場別組織で構成されているよう。あるいは、もう少しタスクフォースなりプロジェクトっぽいチーム編成かもしれないが。
参考:What makes Mercari Data-Driven(77ページ目)
こうした組織の中でBIチームは、データ分析に長けた「職種」でメンバーを集めてチームを編成し、組織横断的な活動を行っている。社内に広がる大小さまざまなプロジェクトに入って職人的に活動する体制。この「社内」とは、プロダクト開発部門の各チームにかぎらず、経営・広報・マーケティング・ファイナンスなどのバックオフィスも含めて活動しているもよう。
樫田さんいわく「谷に突き落とすから勝手に育ってくれというタイプです。ただ、どの谷に落とすかは、その人のスキルに合わせて考え」ているなど、自分のマネジメントスタイルも心得つつ、つかず離れず丁寧に、メンバーが充実感と成長実感と責任感をもって働いて成果をあげていく環境づくりをしている。
◆独立性高い機能軸のチームを作って、チームマネジメントの品質は自分が担保
◆各メンバーには本人の能力が活きる&伸びる役割や案件を用意
◆メンバーの席は現場に置き、各現場で各々の専門性を発揮できる業務環境を与える
◆メンバーが席をおく各現場の統括者との関係づくりも怠らず、そこから各現場の課題を都度つど持ち帰るのも抜かりなく
◆メンバーとは週1で1on1を30分もって、今何をやっているかを把握するに留まらず、各現場から持ち帰った情報など踏まえつつのアドバイス
◆チームで週1ミーティングを設けて、分析の知見共有&レビュー
そして当然ながら、自身が掲げた「組織がデータや数値を使って正しく意思決定できるようにすること」(わかりやすい)というBIチームのミッションに基づいて、社内の信頼を積み上げていっている。突飛なことは何もないけれど、明快な軸を打ち立てて、これを丁寧にやり続けて確かな成果をあげていくって、スーパーマンくらいじゃない?ってくらいのハイパフォーマーだ。
データ分析の専門家として「自走」できるメンバーを採用できている前提あってのチーム作り・育て方なので、最適解は環境ごとに異なるだろう。
でも、高い専門性と、頻繁に知識・技能のアップデートを求められるような専門職チームをマネジメントする人たちには、BIチームのあり方にいろいろ参考にできるところがあるかもな、あったらいいなと思いつつ、今回の記事を送り出した。
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コメント
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感心して読ませていただきました。
書いている方も本質的なことを的確にとらえていると思います。
投稿: | 2019-02-03 08:20
ご丁寧なコメントに感謝します。嬉しいです。今後も、お話しくださる方の核心的なところにできるだけ迫って、皆さんに共有できるように頑張ります。
投稿: hysmrk | 2019-02-03 09:22