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2018-10-14

自分のレベルに合った学習方法を選ぶこと

先週は、学習分析学会が主催する「教育効果測定の基本コース」を受講した。2日間のプログラムで、受講料5万円と値は張るが、参加して良かった。狙いどおりで、ちょうどいい講座だった。

ちょうどいいというのは、講座が設定している学習目標やターゲット、そこから落とし込まれたカリキュラム内容、講師の教授スタイルが、今の自分にちょうどフィットしたものだったということだ。お昼以外ほとんど休憩もない感じで、2日連続なのに宿題もあって、ずっと頭に汗かいていた感じだったけれど、自分の求めていた通りだった。

今回の講座の参考書籍にもなっている講師の著書は数年前に読んでいて、以来その方が副理事長を務める同会のメルマガに目を通したりして、この講座の存在は知っていたのだけど、年に1回くらいしか行わないので、タイミングを逃して早数年。

今回行ってみたら、年1開催ながら参加者は4人。だいぶマニアックな講座らしく…。が、おかげで講師を4人で独占でき、数々のケーススタディも個人ワークとペアワークでやって、一人で紙に起こし、二人でホワイトボードで詰めて、双方ペア漏れなく発表しては講師からフィードバックを集中投下してもらえて、だいぶお得だった。

また、この講座は「組織の人材育成部門か、教育ベンダー会社で3年以上の実務経験を有し、自分で研修企画や研修開発を手がけている人」が対象のガチ講座、全員が参考書籍を読んだ上で参加していたので、ぐずぐずっとすることがなく、講師の脱線話はあれこれありつつ、それも楽しみながらアップテンポで進行した。

講師は、日立グループの人材開発を手がける研究所を基本の職場としていて、学会などでアカデミックなところと交流しつつも、思想としては完全に実務畑の人。フィードバックに一つ「ん?」と思ったところもあったけど、あれはきっと宗派の違い…、全体的にはすごく性に合った。

ズバズバ物言うところも、ダメなところ抜けているところを雄弁に指摘してくれるので、人によってはきつそうだったけれど、弱点を突かれに行った私としては願ったり叶ったり。

いいのか悪いのかを誤魔化したようなフィードバックや、アカデミックな型にはめてみてどうかというフィードバックだったら期待はずれだったが、実務的にみて不備不足がどこにあるか、良いところは良いと褒めてくれた上で、さらに実務的なテクニックとしてはこういう観点も押さえたらいいなどのアドバイスをくれて、自分のアウトプットのレベル感も把握しやすかった。

本を読めば知れることは本を読めばいいのだけど、その次のステップとして、その本の内容を本当に理解できているのか?ズレなく認識しているのか?実践はできているのか?を確かめるのは、自己評価では無理がある。自分の死角になっているところも、人に指摘してもらわないかぎり一向にわからないままだ。

実務で得られるクライアントや、講師(研修テーマの専門家)、社内の評価は、プロジェクトや業績に対するフィードバックであって、私の職能を対象にしたものではない。それは同職種で働く人がいない環境でやっているのだから、そのほうが健全だと思っているし構わない。

だけど、自分の職能に対する適切なフィードバックがない状態でずっとやっているのもいかんなって思う。自分で、自分が納得いく客観的評価を得られる場に出ていって、自分の職能レベルを評価してもらって、自己評価力を洗練させる必要があるよなと。成長を自己管理していくというか。

自分のように職場内外と問わず同職種とのつきあいがなくて、なんとなく環境から自分の能力を相対評価して認識することができない環境にある場合、自分が一番全うに自分の能力を冷静に適正に絶対評価できる状態を、自分で作らないと不健全に感じる。

今の自分にどういう死角があり、何はきちんと理解していて、何はそこそこできるけれど、どの辺に詰めの甘さがあるみたいなことを、へたに低くも高くも見積もることなく客観的に評価できる環境整備を怠らないようにしたい。

これを得るには、人材開発系のセミナーに足を運んで人の話を聴いたり、懇親会などで同職種の人たちと交流してもあまり意味はなくて、実案件とはいかなくとも具体的なケースで自分の力量をアウトプットして適切な講師からフィードバックをもらえる講座を見定めて参加する。これが手っ取り早い。ものによるので吟味が必要だが。

私は実際講座に出てみて、この人に評価してもらいたいという一線の実務家に自分のアウトプットを見てもらって、まずまずな評価を得られた(ふうな)のにはほっとしたし、詰めの甘いところも具体的に指摘してもらえて、こういうところの詰めが甘いよなっていう「こういうところ」がわかったのも良かった。

あと、やっぱり瞬時にぽんぽんと高いレベルで情報を整理したりアイディアをまとめていくのは難しくて、精緻化するのに時間かかっちゃうなぁという再認識。これはあまり速くできるイメージがなく、自分は時間のかかる人間だから、時間をかけて丁寧に仕事しようと開き直ってしまっているけれど、まぁそれはそれでいいではないか。

他の人とのペアワークのやりとりや、もう一つのペアの発表を受けて自分が気づいたことを指摘したり、講師が指摘を加えるやりとりからも、なんとなく自分がどれくらい見通しよく物事が見えていて、どれくらい気づけない粗さをもっているかの感覚的な理解が進んだ。

またしばらくはコツコツ実践を積んでいこうと思うけれど、これをもって自己評価の解像度を一段高めて、都度振り返りから自分ツッコミを入れつつレベルアップしていけたらと思う。

そうそう。自分が受講する講座選びって、本当に大事だ。「人は学習の目標設定が下手」って話があって(*1)、コロンビア大学の心理学教授ジャネット・メトカルフェ氏によれば、

人は新しいことを学ぼうとするとき「すでに知っていることか、自分にとって難しすぎること」をめざしがちだ

なんか、ものすごい言い当てられた感があって、この一節が気に入ってしまった。

自分が、あぁその辺は全部知ってる、わかってるーと思いながら本読んだり人の話聴いたりしているときは、自分が有能なんじゃなくて、自分が学習レベルをあげずに同じところに停滞しているのだと、まずは疑ってかかったほうがいいだろうって思った。

自分が「理解している範囲の少し先にある教材」に取り組む選択を、できているかどうか。

学習の絶好の機会は常に動いている。たえず変わり続けるので、スキルを一つ学んだら、次のスキルにステップアップしなければならない

*1: アーリック・ボーザー「Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ」(英治出版)

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