円グラフと帯グラフは使い分けるものだった
お恥ずかしながら、円グラフと帯グラフの使い分けが、ずっと曖昧なままだった。両方とも全体における部分の割合を示すもんでしょ、A部分とB部分とC部分の割合を見比べるもんでしょと。円と帯をどう使い分けるか、さぁそれは個人の好きずき?と。
違った…。それぞれ使い分けねばならない明白な違いがあった。ということを教えてくれたのは、「説明がなくても伝わる図解の教科書」*という桐山岳寛さんの本。
いやいや、超お薦めである。メッセージがシンプルで分かりやすいし、例がいちいち的を射ていて、ズバっ!と理解できる。
そこで数ページ割いて説明しているのが、円グラフと帯グラフの使い分けである。この本では、帯グラフではなく分割棒グラフと呼んでいるけれども、とりあえずここでは(30年くらい前)小学生のときに覚えた帯グラフのまま書き進める。
まず、著者は「円グラフほど誤った用途に使われているグラフはない」と記している。
円グラフが伝えるのは「全体に対してどれだけの割合が占めるか」であり、ある割合が他の部分より大きいか小さいかを伝えるものではない。
説明を読んでみると、納得である。円グラフでA部分とB部分の量感を比較しようとすると、向きの異なる扇形の面積をもって比べなければならないので難しい。
AはCの何倍か、直感的にわからない。BはAの半分より大きいか小さいか、わからない。
でも、Aの割合をみるには効果的な表現だ。半分をちょっと超える程度と瞬時に伝わる。円グラフが伝えられるのは「全体に占める割合」だけ、「部分と部分の割合を比較するには適さない」のだ。
そこで、帯グラフ(分割棒グラフ)の出番である。部分と部分の割合を比較するには、こっちを使う。
円グラフがつくり出す二次元の“広さ”よりも、一次元の“長さ”のほうが比較が簡単なのだ。
って、言われてみれば当たり前の話だ。それにしても説明の仕方が秀逸である。
CとDは2%の差しかないが、帯グラフだとCのほうがDより大きいと、パッと見でわかる。円グラフのほうだと、CとDを見比べても、その差に瞬時に気づくのは難しい。
一方、帯グラフでは「全体に占める割合」は把握しづらい。B部分の割合をざっくり1/4だなって把握するには、円グラフのほうが瞬時に読み取りやすい。
ちなみに折れ線グラフと棒グラフの使い分けも、わかりやすく説明されていた。折れ線グラフは"時系列に沿った動き”を伝えるときに限って使うのが間違いがない。数値と数値の間に見える関連性や連続性を示したいときは、折り線グラフ。一方、“数値の差”を直感的&正確に伝えたいときには棒グラフを使う。
よくリンク先のような折れ線グラフ(総務省「平成30年版情報通信白書のポイント」より)を見かけることがあるけれど、例えばピンク色(英国)の線の「自社内の組織の見直し」60%弱と「ICT人材の育成や雇用」30%強の間に引かれている、60%から30%に下落している線に意味はないわけで。こういう使い方は良くないなぁと思う。
この本は、図解する重要性、図解の役割・機能、実際にどう図解したら伝わりやすくなるのかが、驚くほど理解しやすくシャープにまとめられている。図解がうまい人でも、もともとセンスのある人は「悪い例」「失敗例」と合わせて良いアプローチを解説することができなかったりするんだけど、この本ではこれでもか!これでもか!というぐらい、「悪い例/失敗例」と「良い例/改善例」をセットにしてポイントを解説してくれているので、ものすごくわかりやすいのだ。
しかも、「悪い例/失敗例」がよく見かけるものであり、「良い例/改善例」が明らかに見違えるほど良くなっている。こういう一つひとつの教材を良質に作り上げるのは、実際のところたいそう骨の折れる仕事だ。
さらに、この本自体が、この本の中で紹介している図解のポイントを実践した作りになっていて、そのために大変伝わりやすい本に仕上がっている。二段構えで分かりやすく説得力のある本で、ほんと敬服する。なんらか資料を作って人に伝える仕事をする(けどデザインは門外漢という)あらゆる人に役立つ本だと思う、いい本でした。
*: 桐山岳寛著「説明がなくても伝わる図解の教科書」(かんき出版)
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