ダサ良い、町の時計職人サイト
父から、家の時計が止まっちゃったと連絡があった。前から時刻がずれて遅れぎみではあったのだけど、今回まったく動かなくなってしまって、電池を替えても直らないという。
居間の掛け時計で、もしかしたら私が小学生のとき建て替えた今の家より、前に住んでいた家から使っていたものかもしれない。いずれにせよ30年は、うちの家族を見守ってきた時計だ。
父のメッセージも「長年頑張ってきた」「思い出の家族の時計だよ。みんなあれを見て育ったんだよ」とあり、思い入れのある大切な品であることがうかがえる。
しばしLINEのメッセージに気づくのが遅れてしまい、家族のLINEグループで、兄と妹が「修理に出したら?」とか「新しいの買ってもいいかもね」とか午前中にやりとりしているのを、夕方になってから発見。
あちゃーと思い、一気に修復にかかるべく時計修理屋をネットで調べにかかった。心の機微事案は(唯一役に立つ)私の担当だ。
さて、「時計修理 地元の地名」などで検索すると、中身のない地域情報ポータルサイトっぽいのが検索上位にあがってきて、行く手を阻む。そういうのをよけてかわして、それらしき店舗のサイトをあれこれ物色。しかし時計修理というと腕時計専門のところばかり。掛け時計や置き時計の修理に対応してくれるところを分け入って探していくと、素敵なサイトにたどり着いた。
見た目は、だいぶイケてない。1990年代によく見られたサイトデザインだ。ENTERボタンを押さないとコンテンツページにたどりつけないし、リンクが貼られていないところが青字のアンダーラインつきだったりイタリック表記だったり、画像文字も読みづらいし、アルファベットは全角だし。写真も比率がおかしくて人物がつぶれている。ナビゲーションも、階層間の移動を行ったり来たり大変。
だけど、テキストがいい。掲載情報も時計修理に関する情報や店舗情報が盛りだくさん書いてあって、トラブルの原因や対策、置き時計や掛け時計に対応していることもわかる。キーワードは盛りだくさん、かつ適切な言葉選びなので、SEO効果を発揮してファインダビリティに優れている。
またその文章の内容とボリュームから、そのお店の職人の腕のみならず、お人柄も伝わってくる。
柱時計や、置き時計はそれこそ生活に密着している時計ですので皆さんの思い入れも一段と深いようですね。また最近ではメーカーでも直す職人さんがいなくなっているのが現状の様で、メーカーさんの紹介でお客様から修理のご依頼を受けることもしばしばです。手巻の柱時計や、置き時計のカチ、コチという音を聞いていると懐かしいような、癒されるような気分になるのは私だけではないでしょう。お歳をめしたお客様がご夫婦でご来店になり、新婚当事に買って動かなくなったので放置しておいた柱時計を直して下さい、というような心温まる修理もよくあります。なんかいいい話ですよね。
信頼感や好印象を与えることに見事に成功しており、私的には「父が一人で店を訪ねても大丈夫そうだな」という感触を覚えた。
そこで家族のLINEグループに「これは直せるなら直したいね」と送り、お店の情報を父に共有。散歩がてら一人で行ってもいいし、私が帰った時に持っていくのでもいいよと言って、京成津田沼駅を南に出て、駅前すぐ、マクドナルドとダイソーの間にあることを伝えた。
ビジュアルデザインがイケてないだけに、コンテンツマーケティング施策の強みが際立つ好事例では…。ギャップ萌えも相まって、職人の専門性と人柄が強く印象づけられる。父の回答がどちらにせよ、一度自分で訪れてみたいお店だわ。
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