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2017-12-24

「グローバルWebサイト&アプリのススメ」を読んで

できたてほやほやの新刊書籍「グローバルWebサイト&アプリのススメ」(*1)をご恵贈いただいた。本をいただくような身の上ではないのだけど、ひょんなことから書籍編集者に転じた元上司が、手がけた最新刊をときどき送ってくれるのだ。

これは出る前から面白そうだなぁと思っていた本で、読んでみたら、やっぱり面白かった。ざっくり概要をひと言で表すなら、「Webサイト・サービス、アプリをグローバル化する際に必要なノウハウを、多くの事例から導き出し解説した手引書」という感じ。

本を手に取る前は、例えば中国の祝日「独身の日」を知らないと、その商機を逃すのは当然のことで、各国の祝日やその位置づけ、広くは文化・風習などを知っておくことって大事だし、面白そうだなぁというくらいの感じだった。

が、実際読んでみると、「独身の日」一日でAmazonは180億USドル売り上げたというから、ちょっとした機会損失どころではない。この数字、米国のブラックフライデーの6倍の売上だとか。さすが中国…。また、この日中国では、オンラインの車の売り上げ台数が10万台に上ったそうだ。

書籍はまずこの辺の、今後のグローバル対応を読者に焚きつける(重要性を説く)前半部に面白みがある。市場の規模感を俯瞰できる情報あれこれが書いてあって、頭の整理になるし、「へぇ!」なことも多かった。

【人口の話】
●地球上には200以上の国、74億人が暮らす
●インターネットにアクセスできる人口は、世界で36億人(中国に7億人)
●アジアには、世界人口の58%が住んでいる(中国14億、インドに12億、インドネシアに2.3億人)

→まだ半分の「これからネットにアクセスし出しうる人たち」が残っているとも
→それにしても、アジアの人口多い。せっかくアジアに住んでいるのだから、これを活かさない手はないだろうという気にさせられる数字

【オンラインショッピングの話】
●一年に10億人以上がオンラインで買い物。年に15%増加する予測がある
●2016年1.3億人がオンラインで、海外から買い物。3,000億ドルを消費。この人数は2013年に比べて倍以上に増加

→国産のものを買いたいという商品もあれば、そういう志向をもつ人もいる。一方で、海外製に価値をおく商品もあれば、そちらを好んで買う層もいる。中国の富裕層は、国内産を不安視して、海外からものを買う傾向も紹介されていた。なんにしても伸び盛り

【言語の話】
●地球に暮らす74億人は、6,000以上の言語を話す
●インターネットユーザー34億人の母国語ランキング…1位は中国語23%、2位が英語22%。ついでスペイン語8%、あと3〜4%のアラビア語、日本語、ロシア語、フランス語、マレー/インドネシア語、ドイツ語と続く。以上でおよそ3/4を占める
●上に挙げなかった250言語が、1位の中国語を超える1/4を占める(オランダ語、スウェーデン語、トルコ語、韓国語、ペルシア語など)
●アメリカ英語とイギリス英語。中国語も簡体字と繁体字。スペイン語もスペインとメキシコでは異なるし、ポルトガル語もポルトガルとブラジルで異なる
●インドには公用語が20以上ある。カナダには英語圏と仏語圏がある

→世界は広い…
→国と言語を一括りに考えないで、国/地域と言語の組み合わせで考える必要がある

【インターネットの言語対応の話】
●Googleは153言語、Facebookは98言語、Appleは34言語、Amazonは13言語に対応。ちなみに、最もサポート言語数が多いWebサイトは、Wikipediaの295言語
●Google翻訳は2017年現在、インターネットユーザーの99%をカバーする100以上の言語をサポート。1日に1,000億以上の単語を翻訳。1日に5億人が利用。ヘビーユーザーはブラジル人
●40言語ほどをサポートすると、Webユーザーの約90%をカバーできる
●大手グローバルWebサイトが共通してサポートしている10言語は、英語、中国語、フランス語、ドイツ語、日本語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、イタリア語、韓国語

→世界4強とくくられるAGFAでも、事業ドメインによって対応言語数に開きがある印象
→「Google翻訳の成功は、そこそこの品質は完璧に勝ることを示している」に唸った

と、まぁ、こういう情報をたくさん浴びて、その気になったところで、いよいよ英語圏、中国語圏、中東圏、スペイン語圏などグローバルにマーケティングする際のポイント解説へ。

グローバル対応は、インターナショナライゼーション(国際化)、ローカライゼーション(地域化)の2つの段階に分けて考えることができ、前者を洗練させるほど、後者に当たるときの問題が少なくなるとして、それぞれのプロセスででどういう観点を押さえていったらいいかなどを解説している。

どこを共通化してシンプルにまとめた上で、どこを個別化してこだわると、効果的で、効率的かという話だけど、これこそが各現場の難所であり、スキルの発揮しどころだろう。基本こうすべし!というものがある感じもなく、ケースバイケースだよなと。

企業側の取り扱う商品やマーケティング戦略によっても違えば、受け取る側の各国の文化、生活習慣、商習慣、規範や法律によっても異なるし、その時々の時勢によっても変わるだろうし。

大きな戦略は統一しようという方針は立っても、ここからは個別最適化しよう!という「ここから」を、どこからにするかはケースバイケース。ブランド名は?スローガンは?キャッチフレーズは?トップページのビジュアルは?モデルは?モデルの服装やポーズ、ジェスチャーは?画面のレイアウトは?配色は?

ネット販売なら、公式通貨や税金、現地でポピュラーな支払い方法、配送や返品、カスタマーサポート対応のあり方など、「知っておかないと始まらないこと」が何かを、まず知っておく必要がある。

この辺を、いろんな事例を挙げて細かく解説している。国によって縁起の良い数字を表示価格に割り当てて、縁起の悪い数字を避けていたり。株の値上がりと値下がりを示す色が赤か緑か、欧米と中国で逆だったり、メキシコでは黄が喪を表わしたりだとか。

知っていないことにはなんとも…という事柄が多く、挙げだせば切りはないだろうけど、まずは「こういうことに違いがあるんだ」と、目配せする対象範囲の広さや深さを把握しておくこと。そして、この本を下敷きにして、これを共通言語に各現場で、「どこをどうシンプル化して国際化し、どこを個別最適化して地域化するか」を議論していけると、能率がいいのだろうなと思った。

少なくとも、この一冊読むと、海外進出するにあたって、一国ごとに、その国の文化に精通する専門家の検証プロセスが必須という態度は、自然と作られる。

というわけで、そちら方面にご興味ある方は、ぜひお手にとってみてください。事例が豊富とあって図版も多いし、翻訳も読みやすかったです。一つひとつの言葉選びを精緻に扱われる木達一仁さん(ミツエーリンクス)が監訳を手がけられたそうで、翻訳文ならではのとっつきにくさもなく、誤脱字などで突っかかる所もなく、安定品質の仕上がりに感じました。あと、原著も今年2017年初めに発表されたものなので、現時点で古さも感じなかったです。

*1: John Yunker (著),‎ 木達一仁 (監修),‎ 株式会社Bスプラウト (翻訳)「グローバルWebサイト&アプリのススメ グローバルジェネラリストなWeb担当者を目指して」(ボーンデジタル)

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