« 2017年11月 | トップページ | 2018年1月 »

2017-12-31

2017年においていくもの

今日は2017年の大晦日。帰省前に都心のカフェに寄り道して朝食をとっていると、窓越しに雪が舞い始めた。このあたりでは初雪じゃないかしら。雪は音を立てず静かに降るけど、目に映る雪景色も人に静けさを感覚させるものだな、と思う。

今年を振り返るといっても、一年区切りで出来事をあまり整理できていないので難しいのだけど、いろいろとありがたいなぁと思うことが多い、豊かな一年だったと思う。一つがっかりなことを挙げないわけにはいかない節目の一年にはなるんだけど、それ以外のさまざまなことを思えば、やっぱり感謝の一年だ。

ひっそり大変だった時期は、粉々になって地面に落ちた自尊心を、しゃがんで、しばらくぼーっと見ていたのだけど、しばし時間をおいたら、その地面に落ちたのから確かそうなかけらを拾い上げて、ひとつ、ふたつと手もとに戻していくことができた。そうすると、あぁ、まったくゼロになるわけではないのかもしれない、と思い直せた。これと、あれと、それとを持って、立ち上がったら、大丈夫だろう。

ずっと前に一度似た経験をもっていたので、そのときよりだいぶ自己コントロールできる状態になっていて、程なく這い上がってこられたところもあり、経験って糧だなぁと思った。30代の私にはできなかったことだ。

そもそも、外的要因の一つや二つでぐらつく自尊心など、もともと虚構であって、はなから自分のものではなかったと思えば、話はすっきりする。最初からなかったものとして、素の自分が今持っているものを見直して、この先をそこから作っていったらいいし、コツコツやっていったらいい。目がよくなったのだ。などと理屈をこねて喝を入れる時期もあった。まぁ、そんなにいつも強気じゃいられないのも人の常ではあるんだけど。

しかし30代を経て、「人間、基本は孤独なんである」ということを自覚的に受け容れるようになったのは大きい。すると、矛盾するようだけど、ほんとに孤独そのものだったら自分は絶対生きていけないなぁとも実感させられることになる。そうやってゼロベースに立って、自分が日々どれだけ人に支えてもらっているかを意識して生きていけると、がっかりなことも致命傷を負う手前で、どうにかそれを受け容れてやっていけるし、時間をかければ立ち上がれる。人への感謝が安定して自分の内側を満たすようになる。

私よりずっと波乱万丈な人生で歩んでいる人に、同じようなことが言えるかどうかはわからないけれど、私はこの道をそうやって、周囲の人たちに感謝しながら丁寧に歩んでいけたら、それできっとOKだ。それだけだって、けっこう難しいことだったりするから、身の丈でやっていこう。

来年に向けては、なんだかオープンな心もちに移行している感がある。なんとなく開けていく風向きを感じるので、それを快く受け容れてやっていきたい。というわけで、こんなぐだぐだを時折書いてしまう私ではありますが、来年もおつきあいのほど、よろしくお願いします。どうぞ、良いお年をお迎えください。

2017-12-29

年末のお礼状

今年は、昨日が仕事納めだった。おとといから昨日にかけては、数時間ずつ時間を作って、今年お世話になった講師やクライアントに、年末の挨拶を綴って送った。

「綴って」といっても、講師陣は主にメッセンジャー、クライアントにはメール、筆も持たねば封書でもない。形式は極めて簡便。それでも一人ひとりに言葉を綴るのは大変なこと。なんだかんだと一日仕事だ。

この一年に手がけた案件を振り返りながら、この方にはこういうふうに関わってもらって本当に助かったなぁとか、改めて敬服したなぁとか。そういうことを一人ずつ思い浮かべては、言葉にして、メッセージを贈る。

忙しい年末にそんなの送られてもご迷惑かもしれない(しかもメッセンジャーだと、メールより返さなきゃ感が強め。とはいえメッセンジャーでやりとりするのが基本の相手だしなぁ…)とは思うものの、常に忙しそうな関係各位に、それ以外の機会をつかまえて声をかけられる気もしないので、ここは「年末」という国民的イベントに乗じる。世代によっては「訪問してなんぼ!」と年末挨拶にまわるのだろうから、そこはひとつ寛容に受け止めていただきたい。

実際には、講師もクライアントさんもご返信くださることが多く、その反応で、講師であれば、この先またご相談したいことが出てきたときも、お声がけして良さそうだなとかわかったりするし、クライアントさんとも良好な関係が確認できたりする。今回は「さすが、いいところに…」と言って、新規の相談をくれたりもした。人事異動や組織変更などの近況を教えてくださったりもする。

一年前は、こういうのを年始にやっていたようなのだけど(記録によれば…)、今回はなりゆきで年末に。来年は年始が忙しそうなのもあるけど、なんとなく挨拶なしに年を越せないなぁという心持ちだったので、自然と時期が移行した。

それで一通り年末の挨拶を送ってみて思ったのは、その年のお礼は、その年の年末に送るほうが、なんかしっくりいくなぁということ。年始だとどうも、「今年私はこういうことを」的な自分の新年の抱負を含めた文章を作る流れになっちゃうのだけど、年末だと、その年その人にお世話になったことを振り返って、相手への感謝の気持ちにただただ向き合えるというのか。圧の無さ、静けさがあって良い。ビジネス的にどうかは知らないけど、私の人生的には豊かな時間だった。

2017-12-24

「グローバルWebサイト&アプリのススメ」を読んで

できたてほやほやの新刊書籍「グローバルWebサイト&アプリのススメ」(*1)をご恵贈いただいた。本をいただくような身の上ではないのだけど、ひょんなことから書籍編集者に転じた元上司が、手がけた最新刊をときどき送ってくれるのだ。

これは出る前から面白そうだなぁと思っていた本で、読んでみたら、やっぱり面白かった。ざっくり概要をひと言で表すなら、「Webサイト・サービス、アプリをグローバル化する際に必要なノウハウを、多くの事例から導き出し解説した手引書」という感じ。

本を手に取る前は、例えば中国の祝日「独身の日」を知らないと、その商機を逃すのは当然のことで、各国の祝日やその位置づけ、広くは文化・風習などを知っておくことって大事だし、面白そうだなぁというくらいの感じだった。

が、実際読んでみると、「独身の日」一日でAmazonは180億USドル売り上げたというから、ちょっとした機会損失どころではない。この数字、米国のブラックフライデーの6倍の売上だとか。さすが中国…。また、この日中国では、オンラインの車の売り上げ台数が10万台に上ったそうだ。

書籍はまずこの辺の、今後のグローバル対応を読者に焚きつける(重要性を説く)前半部に面白みがある。市場の規模感を俯瞰できる情報あれこれが書いてあって、頭の整理になるし、「へぇ!」なことも多かった。

【人口の話】
●地球上には200以上の国、74億人が暮らす
●インターネットにアクセスできる人口は、世界で36億人(中国に7億人)
●アジアには、世界人口の58%が住んでいる(中国14億、インドに12億、インドネシアに2.3億人)

→まだ半分の「これからネットにアクセスし出しうる人たち」が残っているとも
→それにしても、アジアの人口多い。せっかくアジアに住んでいるのだから、これを活かさない手はないだろうという気にさせられる数字

【オンラインショッピングの話】
●一年に10億人以上がオンラインで買い物。年に15%増加する予測がある
●2016年1.3億人がオンラインで、海外から買い物。3,000億ドルを消費。この人数は2013年に比べて倍以上に増加

→国産のものを買いたいという商品もあれば、そういう志向をもつ人もいる。一方で、海外製に価値をおく商品もあれば、そちらを好んで買う層もいる。中国の富裕層は、国内産を不安視して、海外からものを買う傾向も紹介されていた。なんにしても伸び盛り

【言語の話】
●地球に暮らす74億人は、6,000以上の言語を話す
●インターネットユーザー34億人の母国語ランキング…1位は中国語23%、2位が英語22%。ついでスペイン語8%、あと3〜4%のアラビア語、日本語、ロシア語、フランス語、マレー/インドネシア語、ドイツ語と続く。以上でおよそ3/4を占める
●上に挙げなかった250言語が、1位の中国語を超える1/4を占める(オランダ語、スウェーデン語、トルコ語、韓国語、ペルシア語など)
●アメリカ英語とイギリス英語。中国語も簡体字と繁体字。スペイン語もスペインとメキシコでは異なるし、ポルトガル語もポルトガルとブラジルで異なる
●インドには公用語が20以上ある。カナダには英語圏と仏語圏がある

→世界は広い…
→国と言語を一括りに考えないで、国/地域と言語の組み合わせで考える必要がある

【インターネットの言語対応の話】
●Googleは153言語、Facebookは98言語、Appleは34言語、Amazonは13言語に対応。ちなみに、最もサポート言語数が多いWebサイトは、Wikipediaの295言語
●Google翻訳は2017年現在、インターネットユーザーの99%をカバーする100以上の言語をサポート。1日に1,000億以上の単語を翻訳。1日に5億人が利用。ヘビーユーザーはブラジル人
●40言語ほどをサポートすると、Webユーザーの約90%をカバーできる
●大手グローバルWebサイトが共通してサポートしている10言語は、英語、中国語、フランス語、ドイツ語、日本語、スペイン語、ポルトガル語、ロシア語、イタリア語、韓国語

→世界4強とくくられるAGFAでも、事業ドメインによって対応言語数に開きがある印象
→「Google翻訳の成功は、そこそこの品質は完璧に勝ることを示している」に唸った

と、まぁ、こういう情報をたくさん浴びて、その気になったところで、いよいよ英語圏、中国語圏、中東圏、スペイン語圏などグローバルにマーケティングする際のポイント解説へ。

グローバル対応は、インターナショナライゼーション(国際化)、ローカライゼーション(地域化)の2つの段階に分けて考えることができ、前者を洗練させるほど、後者に当たるときの問題が少なくなるとして、それぞれのプロセスででどういう観点を押さえていったらいいかなどを解説している。

どこを共通化してシンプルにまとめた上で、どこを個別化してこだわると、効果的で、効率的かという話だけど、これこそが各現場の難所であり、スキルの発揮しどころだろう。基本こうすべし!というものがある感じもなく、ケースバイケースだよなと。

企業側の取り扱う商品やマーケティング戦略によっても違えば、受け取る側の各国の文化、生活習慣、商習慣、規範や法律によっても異なるし、その時々の時勢によっても変わるだろうし。

大きな戦略は統一しようという方針は立っても、ここからは個別最適化しよう!という「ここから」を、どこからにするかはケースバイケース。ブランド名は?スローガンは?キャッチフレーズは?トップページのビジュアルは?モデルは?モデルの服装やポーズ、ジェスチャーは?画面のレイアウトは?配色は?

ネット販売なら、公式通貨や税金、現地でポピュラーな支払い方法、配送や返品、カスタマーサポート対応のあり方など、「知っておかないと始まらないこと」が何かを、まず知っておく必要がある。

この辺を、いろんな事例を挙げて細かく解説している。国によって縁起の良い数字を表示価格に割り当てて、縁起の悪い数字を避けていたり。株の値上がりと値下がりを示す色が赤か緑か、欧米と中国で逆だったり、メキシコでは黄が喪を表わしたりだとか。

知っていないことにはなんとも…という事柄が多く、挙げだせば切りはないだろうけど、まずは「こういうことに違いがあるんだ」と、目配せする対象範囲の広さや深さを把握しておくこと。そして、この本を下敷きにして、これを共通言語に各現場で、「どこをどうシンプル化して国際化し、どこを個別最適化して地域化するか」を議論していけると、能率がいいのだろうなと思った。

少なくとも、この一冊読むと、海外進出するにあたって、一国ごとに、その国の文化に精通する専門家の検証プロセスが必須という態度は、自然と作られる。

というわけで、そちら方面にご興味ある方は、ぜひお手にとってみてください。事例が豊富とあって図版も多いし、翻訳も読みやすかったです。一つひとつの言葉選びを精緻に扱われる木達一仁さん(ミツエーリンクス)が監訳を手がけられたそうで、翻訳文ならではのとっつきにくさもなく、誤脱字などで突っかかる所もなく、安定品質の仕上がりに感じました。あと、原著も今年2017年初めに発表されたものなので、現時点で古さも感じなかったです。

*1: John Yunker (著),‎ 木達一仁 (監修),‎ 株式会社Bスプラウト (翻訳)「グローバルWebサイト&アプリのススメ グローバルジェネラリストなWeb担当者を目指して」(ボーンデジタル)

2017-12-20

転職するとき、転職者を受け入れるとき

自分の年回りに、今年は転職者が多かったなぁ。転職した同世代の一人に尋ねると、やはり40歳という節目が転職を考える上で大きかったと言っていた。男性だと特にそうかもなぁなどと、根拠なく思ったりした。

40歳くらいの転職だと特にだけど、年齢を問わず転職というのは周囲から即戦力を期待されている感があって、本人に無言のプレッシャーがかかるもの。

ちょうど読んでいた本(*1)に、一般企業における「中途採用者が抱える困難・学習課題」という話題があったので、内容整理がてら書きとめておきたい。転職先に参入する際、どのような課題に直面するのかを、4つに分けて整理している。

【1】人脈学習課題
入社したてだと、「誰が情報をもっているのかわからない」「誰に相談すると物事がうまく進むのかわからない」「会社のキーマンが誰かわからない」といった情報不足があって、社内での立ち回りに苦労するよねぇという話。

【2】学習棄却課題(Unlearn)
前職で培ったものの、“現在の職場では通用しない”知識・スキル・経験、あるいは仕事のやり方や信念を捨て去ることに困難を覚えるというもの。ときに自信やプライドを失うことにもつながり、アイデンティティの崩壊と捉える人も。

【3】評価基準・役割学習課題
「職場で自分が何を期待されているのかわからない」「何をすれば評価されるのかがわからない」といった課題。会社や上司、クライアントから求められている役割や仕事の要求レベルが曖昧だったり、それが求められる理由に納得感がないと、パフォーマンスをうまく発揮できない。

【4】スキル課題
今の仕事に求められる知識・スキルが不足している問題。中長期で獲得していくような業界・業務知識、実務スキルもあれば、社内システムの使い方といった短期的で細々したものまで。

転職するときに、こうしたものが課題としてあるなと、自分で意識化できているだけでも混乱は軽減されると思う。私は20代半ばの転職で全部体験して、全部意識化されて、そのときは半年くらい大変だったけど、その後にした転職は精神的には楽だった。こういう課題が待ち受けている!と認識できているだけで、だいぶ楽なものだ。

以下、つぶやきや思いつきに近いものもあるけど、個別に見ていくと、【1】人脈学習課題は、企業の組織構造、各部門の役割、実質的に決定権や発言権があるキーマンは誰か、誰にどういう経路で話を持っていくと物事がうまく運ぶかなど、社内で活動していく上で必要な知識を獲得する必要がある。

これは本人の上司というより、上司以外のメンバーとの関係性、職場での情報流通がものを言う。転職者本人は、そこでの関係づくりを頑張ってみると仕事しやすくなるし、受け入れるメンバーは転職者が年上でも、そういう情報を教えてあげたり、訊きやすいようこまめに声をかけてあげると良さそう。マネージャーはそういう職場内の交流が生まれるよう、場づくりをすると良い。

【2】学習棄却課題は、最も乗り越えるのが困難な壁とも言われる。周囲から即戦力のプレッシャーを感じる中では、ちょっとしたことを質問しづらかったりする。自分もこれまで培ったものに一定の自信をもちつつ即戦力を狙っていると、そうそう自分の培ったものを無しにはできない。そんな中で、何が捨て去らなきゃならないノウハウや信念で、何は捨て去らずに自分が新しい職場に持ち込むべきエッセンスか、調和の見極めが難しかったりもするだろう。

本人としては、こうした課題をまずは認識しつつ、できるだけ気負わずに、いろいろ質問・対話していくことかなと。またマネージャーは、自分が一番、本人が質問しやすい上下関係を持っていることをわきまえて、ちょっとした疑問点をちょこちょこ拾ってあげるコミュニケーションが奏功する。

【3】評価基準・役割学習課題もとりわけマネージャーの働きが肝で、組織が期待する役割やパフォーマンス、その要求レベル、なぜそうなのかを丁寧に伝えていくこと。本人も不明瞭なところがあれば、上司とそういう話をすべく声をかけていくのが良い。

【4】スキル課題は、あれもこれも覚えなきゃ、できるようにならなきゃと、いろいろ出てくるのが常。全部をすぐにと焦らず、思いつくものを書き出して、中長期と短期に分けて、優先順位をつけると、少し落ち着けそう。そういうことを実践しているハイパフォーマーを社内に見つけられたら、そういう人とコミュニケーションをとっていくと、良い学習方法・実践方法を身近で学べるかも。そうやって新しい山登りの過程を楽しめれば、この課題はとても有意義なものにもなる。

と、とりあえずの読書メモと思いつきメモ。

*1:中原 淳氏「経営学習論:人材育成を科学する」(東京大学出版会)

CSS Nite Shift11(2017年)に参加 #cssnite

先週末は、Web制作に関わる実務者向けのセミナーイベント「CSS Nite Shift」に参加。「CSS Nite」は2005年10月から続く不定期開催の業界イベントで、今は全国各地で五百をゆうに超える開催実績をもつ。毎年末に開催される「Shift」シリーズは、今年で11回目だとか。

その年のWeb制作シーンを振り返り、知識やスキルの棚卸しをするというもの。今回は「今までの10年。これからの10年。」という基調講演に始まり、マークアップ、アクセシビリティ、マーケティング・解析、スマホUIトレンドなど、それぞれのテーマで一線の方から講演があった。

Shiftには、Web制作に関わる人たちが毎年300名近く参加する。ここ数年で、古くから馴染みある参加者には「これに参加しないと、年が終わらない」と言われるまでになった。

ともすると、それは内輪感を生むことにもなるわけだけど、そこを閉じないよう、閉じないよう、オープンさをすごく大事にして主催、運営、登壇者の皆さんが関わっているのが肌感で伝わってくる。

それで実際、毎回一定数の初参加を維持していて、その比率は近年伸び続けている。私は、事後に参加者アンケートの結果がメールで届くと、この頃は真っ先に「初めて参加」の人の数を見にいっちゃうのだけど(マニアック…)、そういう数字をみては、改めて関係者の皆さんに敬服の念を抱く。私の隣りに座った方も、今回初めて参加とのことだった。

一定のオープンさを10年以上維持し続けるのは、けっこう大変なことだ。こういうことは、場を作る人たちの確かな信念と、日々の細やかな配慮の積み重ねのもと成り立ちうるものかなと、私は思う。

一方、事後アンケートのレポートで参加者の年齢層をみると、以前は少なかった40代以上の比率が高くなっている。CSS Niteが立ち上がった当時は20〜30代だった人が、今やアラサーを超えてアラフォーへ。私もまさにだが…。そこがまた、いいなと思う。

回を重ねるごと年齢層にも広がりが出て、年をおうごと参加者のキャリアが多様化していく。コミュニティが皆そうあるべきとは全然思っていないけれど、CSS Niteはそれを特長としていけると楽しいんじゃないか。この業界で、20代、30代、40代以上(今のところ一括り…)の比率がバランスよく参加しているコミュニティとかは、けっこう面白い気がする。先輩後輩が連れ立ってやってくるような。

私は2005年の立ち上がった当初からちょこちょこ足を運んでいるけれども、この10年あまりで、どんどん各種テーマが専門高度化していって、技術的なことはほんと手に負えなくなり、今はShiftで各テーマの大まかな一年の動きと、一線の方がどんなことを考えて仕事しているのか論点を把握するくらいがせいぜいなのだけど、そういう意味では、舞台袖で皆さんをサポートする立場の私に、最もフィットするのがShiftかもしれない。主催者、運営に携わる方々、登壇者の皆さまに、心から感謝と敬意を。来年もどうぞよろしくお願いします。

関連記事:CSS Niteについて(2012-12-16)

2017-12-15

スライド共有:クリエイティブの現場にひそむ、若手育成の落とし穴

昨日学生時代の先輩とお会いしたら、私がこの夏FacebookでシェアしたGameBusiness.jpの取材記事に、改めて言及くださった。業界違えど、ありゃいけるよー(どこへ)と。

ゲームクリエイターのステップアップに必要なものとは?教える側・切り開く側の視点で語られたキャリアセミナー

これは、DeNAさんがゲームクリエイター向けに開催した「Game Developer’s Meeting」キャリア勉強会Vol.2に呼ばれて登壇したときの取材記事。

確かに、私もこういう知識インプット自体は業界問わない文献で吸収していて、自分が実践したり反芻したり人に伝えるとき個別最適化して編集しているだけなので、もとのエッセンスは業界を問わないよなぁ、と当たり前のことを再認識する機会になった。

先輩は会計系?で、だいぶ畑が違うのだけど、そうした人にも意味をもってもらえるのは嬉しく、ありがたい。

で、そういえば開催当時スライドをネットに公開せずじまいだったのを思い出し、遅ればせながら今年のうちに、とSlideshareにアップロードした。

「クリエイティブの現場にひそむ、若手育成の落とし穴」

TechLION vol.25に登壇したときにITエンジニア向けにお話しした「今どきの若手育成にひそむ3つの思いこみ」に近しいのだけど、そこから1年半くらい経っていて、今回は講演時間も長かったので、バージョンアップしつつ、グレードアップしつつ、ゲーム業界のクリエイティブ職向けにアレンジしつつ、という感じに。

なのでTechLIONのスライドと、いくらか内容がかぶってはいるのですが、クリエイティブの現場で人材育成にあたっている方など、テーマにご興味ある方は、ぜひお目通しいただければ幸いです。何かしら考えるネタ提供なり知識共有ができれば嬉しいです。

2017-12-10

受託ビジネスの魅力 #websig

風邪っぴきでふらふらだったのだけど、以前より申し込んでいたWebSig会議にすごく行きたかったので、無理をおして参加。イベントタイトルは「2018年に向けたデジタル、Web受託企業の攻めどころ、守りどころ」

2000年代のFlash全盛、Webプロダクションに有無を言わさぬ勢いがあった頃とは、明らかに時代が変わった感ある中、時代変化に応じて形を変えながら今なお発展し続ける10年、20年選手のWebプロダクションがある。こうした組織を率いてきた人たちのお話は、エネルギッシュで刺激的。どんなふうに、どんな想いで、というのを、すごく率直に、赤裸々に語ってくれて、興味深く拝聴した。

内容は、2011年と2017年を比べて案件タイプにどんな変化が見られるか(何が減って何が増えた?)とか、社内の職種構成がどう変わった?とか、制作に留まらぬ「戦略から」の仕事をどう実践しているかとか、どういうふうに契約・見積もりしているのかとか、若手育成、中堅育成、定年前のキャリア、女性の育休明けをどうするかなど、話は多岐にわたって時間ぎれ。

いくつかトピックスをメモに。

●ここ数年の案件の変化
中川さん(アンティー・ファクトリー)いわく、2010〜2011年あたりと、2016〜2017年を比較した案件の変化としては、2010年頃は「表現力を重視したリッチなプロモーションサイト制作」が多くて、Flash、動画、コピー開発、絵作り、インタラクティブ重視、SNS活用など、どうバズらせるかが花形だった。

一方、今はリブランディングして、Webサイトもちゃんと作り直しましょうみたいな案件が多いとか。大規模コーポレートサイトリニューアル、CMSを活用したオウンド運用など、クライアント側がしっかり腰をすえた予算を用意するようになったということかなと。

●市場動向を読んで、新しい領域に守備範囲を広げる
確かさのある成長分野には、人を採用して体制づくりしていく、こうして時代変化に対応している様子も窺えた。中川さん(アンティー・ファクトリー)が話していたことでは、ここ数年で映像ディレクターを1人採用したとか。で、クライアント先で「CMディレクターを採用したので、映像の仕事あったら声かけてください」って働きかけるそう。ちなみに、これを言うと今は十中八九、映像の仕事がとれるのだそうだ。阿部さん(ワンパク)も、映像の仕事は増えていて、Web制作とセットで、ブランドムービーなどをよく手がけていると話していた。

どこを広げて、どこには手を出さないかっていうのは、組織ごとに答えが違うと思うけど、アンティー・ファクトリーのように「1ストップでWeb制作全般、一通り引き受けます」という100人プロダクションとかだと、映像できる人を採るのは堅い選択だよなぁと思った。

あと、アンティー・ファクトリーがここ数年の変化として、純粋なコピーライターを採用したことを挙げていた。リブランディングという軸でWebサイトの大規模見直しをするような潮流から、コピー開発の力が大きな価値として評価されるようになってきているんだろう。

●広告代理店の仕事は、どこで誰が請けているんだろう
ちなみに今回の登壇者は大方、広告代理店を挟まずクライアントから直請けしていた。2011年は多少代理店仕事もあったけど、2017年はほぼほぼ直請けとか、代理店仕事はゼロになったとか。果たして今、広告代理店はどこに発注して、どこで誰がそれを請けているのだろうか。

私の周囲は広告代理店の仕事を請けている人ってあまりいないのだけど、代理店からの仕事も世の中にはたくさんあるに違いなく、そこのWebプロダクション事情も語られると、対比できて面白いのだろうなぁと思う。

登壇者の界隈で代理店仕事が減っていく背景としては、阿部さん(ワンパク)いわく、広告的なWeb制作だと、コンペで勝率2〜3割が普通では?4割だったらいいほう、とのこと。これでコンペ3〜4連敗すると、キャッシュフローが相当まずいことになって小さい会社は疲弊していく。それよりは同じWeb制作でもサービスに寄せて、腰をすえて成長させていくもののほうが良い。

クライアント直請けの仕事をしていくと、そっちが厚くなっていって、結果的に代理店仕事を請けられなくなっていくという流れもあるとは、村田さん(ソニックジャム)。

Webプロダクションによっては、チームで代理店に常駐するサービスを提供していたりするのだろうか。フリーランスで常駐している人はけっこういそう。代理店側で(系列グループ内での)内製化の動きもあるだろうし。最近は、どんなスタッフ構成比で対応しているのでしょうね。

クライアント側が、Web制作とか、広くはデジタルマーケティング領域を、どういう業態に発注しているのかも気になるところ。必ずしも広告代理店を挟まず、各パートナーを厳選して直接発注する企業って、中にキーマンがいないとそうならないと思うんだけど、何割くらいあるんだろう。1〜2割くらいか、それは増加傾向にあるのかどうなのか。それこそ、こちら側の頑張り次第か…。

●広告代理店抜きの受発注関係に、どうやって移行する?
それにしたって、広告代理店とやりとりしているクライアントに、いきなり営業かけて直請け体制に持ち込むのは難しいわけで、まずはしっかりWeb制作の実績を作って、エンドクライアントとの信頼関係を築く。そこで終わらせないで、一歩踏み出して直請けの流れに持っていくよう働きかけ続けるって開拓者精神が大事なんだろうなぁと、登壇者の熱量ある話を聴いていて思った。

阿部さん(ワンパク)が、戦略からやる必要性を骨のあるロジックをもって「ずっと言い続けてきた」という発信力ってすごく大事で、この言葉に宿る信念と力強さには心動かされるものがあった。そういう活動の地道な積み重ねによって、今のクライアントとの信頼関係を勝ち得てきたんだろうなぁと、この5年、10年の尺での確かな飛躍を感じて改めて敬服した。そうして多様なクライアントの実績が積み上がっていって、それがブランドになっていくんだろう。

●即戦力が採れない問題
Web制作会社が手がける領域を「戦略から」に上流化していくと、それができる即戦力は事業会社側でも欲しい人材とかぶり、取り合いになる。しかし上場している事業会社が提示するほどの給与額は、さすがに提示できない。

それで、ワンパクでは新卒を採用して育てるという選択に出た。といっても、ビジネス戦略のところから、クライアントに乗り込んでファシリテーションとかできるまで育てられるかっていうと、そりゃあ簡単じゃない。結果、大きな案件では役員クラス3人が担うことになり、スケールしない…と苦笑いしてお話しされていた。

でも、これはもしかすると、育てる期間をもう少し長期で捉えないと仕方ないって話かもしれない。阿部さん(ワンパク)もファシリテーションとかしているときは、おそらく20年以上のキャリアを総動員して、いわば総合格闘技しているような感じだろうし、そういう多様な蓄積をもってこそ成し得る仕事だろうな、とも。若手がそこを「やりたい」「できそう」と思うスタート地点に立つには、もう少し時間が必要なのかもしれない。

●受託ビジネスの魅力
あと思いついたこととしては、そもそもデザイナー、エンジニアといった、これまでとは異なる層にも、こちら業界に就職先として関心を向けてもらうことかなと。デジタルマーケティング周りの受託ビジネスならではの面白さを、どう伝えて、こっちに来てもらえるか、という切り口はあるかなと思った。

受託ビジネスって目立たない裏方なので、広告代理店でもないと、なかなか若い人に知られない&興味をもってもらえない働き方だけど、ここの立ち位置ならではの面白さってあるし、あぁ性に合うなぁっていう人も、そこそこいると思うんだよなぁ。

確かに、受託側から事業会社への転職話ってよく聞くけれど、出戻り組もいるって話は、村田さん(ソニックジャム)からも共有された。やっぱり受託のほうが、いろいろな案件に携われて性に合っているなとか、事業会社側に行ってできることが増えると思ったら、本人にとって「つまらない仕事」が思いのほか多かったとか、職場にデザインとか技術に詳しい人がいなくて、受託側なら隣の席の同僚に聞けばすぐ答えが返ってくるようなことがわからない、そこにやきもきして帰ってきたとかいう話が出ていた。

事業会社と同等にお金出せるように、どうステイタスを上げていくかって話は、長期的な課題としてあるとしても、もう少し手近なところで、受託ならではの環境・働き方の面白みが情報として発信されて、多様な専門職の中で味わえる化学反応とか、いろんな案件に携われて飽き性にはもってこいだとか、「作る」に照準をあわせて試行錯誤したり侃々諤々できる面白さとかが、熱をもって伝わるといいのかなぁなどと思った。

●私は受託の仕事が好き
私はWeb制作ではないんだけど、研修の受託ビジネスにずっと携わっていて、受託の働き方がすごく性に合うと思っている。

傭兵っぽさというか、手ぶら感というか。もちろん、いろんなツールは使っているんだけど、資本集約ではなく労働集約。基本は「中の人の腕」一本。それをクライアントに応じて個別最適化して価値化していく。自分たちの中から、どう価値を作りだしていけるか。製品ありきじゃない、箱物商売じゃない、手ぶらな状態で、人の内側から価値を創造していく感じが、なんだか好きだ。

※ちなみに私の傭兵像は、子供の頃に読んだ樹なつみの「OZ」のムトーで固定されており、だいぶ美しい感じに仕上がっております。

阿部さん(ワンパク)の話に、メソッド化する功罪(ノウハウをメソッド化して社内共有すると、案件ごとに最適化しないで、そのままメソッドを適用しちゃう負の面もあるという話)ってあったけど、ほんと受託ビジネスは、メソッド化しつつ、毎回それを疑ってかかって個別最適していくって両面を大事にする矛盾みたいなところがあって、そこも好きだ。

人間社会って矛盾を前提に成り立っているので、そこの矛盾を受け入れないほうが不自然で、そこを当たり前に許容して、メソッド化する基礎づくりと、案件ごとに個別最適の務めを果たしていくのと、両方走らせる感じが好き。すごく人間くさくて良いではないか。芯はどこにあって、どこははずさない、どこはこだわりなく変えてしまおうと分別することを、常に試されている感じ。よい、よい。

見ようによっちゃ、モノを抱え込むより、人のほうが柔軟性があって、変幻自在性が高い。時代変化に適応させるべく、どう自分たちの中身を変えていくかも一択ではなく、そこにもあの手この手と選択肢を作り出せる自在性がある。作っちゃった製品は、なかなか転用が難しかったりするけど、人は常に、いろんな方面に機会を見出して変われる可能性をもっている。そういうことを楽しめる若い人が、こういう働き方の魅力に触れる機会があったらいいんだろうか。伝えるのが難しいけど、一つにはそういうことを楽しんでいる人が、楽しんでるよーというのを生身の姿・声をもって伝えていくことなんだろうなと思う。

と、以上メモ書きでした。登壇者、主催者、参加者の皆さまに感謝。

途中でダメにならないように&人に風邪をうつさないように、マスクして言葉少なに終始省エネ状態だったけど、やっぱり行ってよかった。すごくいろんな実情や想いを聴かせてもらえて、それを受けて考える機会をもらえた。参加者も半分近く?が経営者で、濃厚な会だった。もっといろいろお話ししたかったなぁ。

ふらふらしながら電車に乗って帰宅。熱37度台で出かけたのに、帰ってきたら36度台に落ちていてほっと一息。一眠りすると35度台まで戻って、再び寝て今朝熱を測ってみたら、34度8分だった。下がりすぎだよ…。私、冬場は34度台をたたきだすのだった。一応、通常モードに戻ったということでいいのだろう、か。

2017-12-06

組織のパフォーマンスが上がらない理由

組織のパフォーマンスが、いまいち上がらない。その理由を、きちんと要因分析することなく「現場スタッフの能力が低いから」だけに着地させちゃうのは、わりと起こしがちなマネジメント層の早とちりだと思う。

組織のパフォーマンスを改善するのは、一般にマネジメントの役割。それこそマネージャーは、そこを主戦場にパフォーマンスを発揮することが求められる。その主戦場での働きっぷりで己の優劣を上から評価されるとあらば、これを真っ向勝負で受けて立つのは、なかなかしんどい。真っ向勝負を回避しようとする無意識が働くと、自分のマネジメント能力ではなく、現場スタッフの実務能力が低いことが、組織のパフォーマンスが上がらぬ根本原因であるというふうに話をもっていきがちになるのではないか。

あるいは、「組織のパフォーマンスが上がらないのは、現場スタッフの能力が足りないから。ゆえに対象スタッフを集めて研修を施す」というのは、かなりオーソドックスな打ち手。深く考えなくても打ち出せる定番の策であるがゆえに、持ち場の実態把握をスキップした場合、その施策「だけ」講じるというところに流れ着いてしまう側面があるのかもしれない。

「現場スタッフの能力」を理由に挙げたって、採用したのは君だろうとか、それをうまいことやるのが君の仕事だろうとか、マネジメント機能不全に返ってくる側面はもちろんあると思うんだけど、なんとなく直接的な「マネージャーの能力問題」からは、ちょいと横道そらして急所はずせた感があるというか、「間接的には私の不徳の致すところで申し訳ございません」としつつも、己の能力レベル問題からはちょっと逸れた安全地帯に移動できるというか。

業務プロセスなり業務システムなり、部下の業務管理なりがうまくできていないからだというと、もうどんぴしゃマネージャーがうまく機能していないからだ!みたいな感じで矢面に立ちそうだけど、これを現場スタッフの能力問題に焦点化して、ポテンシャル高いと思って採用した新人が期待したように伸びないとか、中堅どころが伸び悩んでいて…とかに振ると、わりと「まぁなかなか思う通りにいかないものだよね」的にマネージャー間の情の交換が、言葉少なに肌感覚で成立しやすいのではないかとか。

実際、現場スタッフが全員ものすごい能力を持っているなんて環境は、多くの組織がなかなか構築・持続できないので、「現場スタッフの能力問題」は、まったくずれたことを言っているという話にならない。それに、研修という打ち手も有効な一手であって、だからこそ(そうなるように)私も本業として、それに携わっている。

ただ、要因が「現場スタッフの能力」一辺倒に捉えられ、じゃあどうするんだというと解決策が「研修」一辺倒に講じられるのでは、もったいない。

物事がうまくいかない要因て、たいてい複合的なものだし、一つのソリューションが一発で万事解決するという単純な世の中でもない。

スタッフの能力以外の「何か」にも目を向けて、要因と解決策を考える視野とか、心の余裕とか、考える時間とか意識とかをもつことができれば、もっと打ち手にも広がりが出てくるし、あの手この手で継続的に施策を講じられるのではないかと思う。複合的に策を打とうとすれば、研修をやるにしても、これは研修の前にやったほうがいい打ち手とか、研修後に打てるように仕込んでおいたほうがいい準備なども、並行して計画的に進められる。

ということでの資料整理&共有。共有というには、ちょっと自分の頭の整理用に振れている一枚絵のシートではあるけれども、何かの参考になれば。

※下の図は、クリックすると拡大表示。モバイル端末でボケる場合、PC表示に切り替えていただくと良いかも…。

Photo

心の余裕がないときに、自分にとってしんどい認識を買って出ようとはしないもの。やっぱり情緒の安定というのは大事だ。研修の相談に限らず、こういうことをクライアントさんがゆったり考えられる話し相手、分析するときのパートナーになっていきたい。

*組織のパフォーマンス改善策をPDF形式で、Slideshareにアップしました。
*関連エントリー:人材育成施策は「研修」だけじゃない

2017-12-03

ヒートテックから綿に

人はひょんなところで舵を切るもので、私はMRIの検査を受けた後、肌着をユニクロのヒートテックから無印良品の綿に、総入れ替えした。総入れ替えといっても、1200円くらい×数枚の話なので、1万円いかない支出ではあるのだけど。

私は体のこと、美容・健康のことにはずぼらなタチで、「これは肌にいいか悪いか」とかには無頓着だし、「乾燥肌ですか?」と訊かれても自分の肌がどんな按配なのかよくわからず「どう思いますか?」とお店の人に訊き返すレベル。

ただ大変な寒がりであることには昔から十分な自覚があるので、「あったかいというなら買いましょう!」ということで、ヒートテックが流行りだしたときから、肌着はユニクロのヒートテックを買うように。それから十数年間?同じものを買い換え続けてきた。

総入れ替えのきっかけを作ったのは、先月頭が痛くなって受けたMRIの検査だ。ヒートテックの着用はNG、検査着に着替えて受けてくださいと検査技師に言われて、これまで普通に身につけてきた肌着が特別なもの、特殊な物質に見えた。

とはいえ、そのときは頭痛の原因が気がかりでそれどころではなく忘れてしまっていた。少し後になって、お客さんと会食している席で、MRIでヒートテックがダメだった話をしたら、そこで「やはり綿が良い、無印は良い」という話を受け、ほぅ…という印象を持ち帰った。それで、なんとなく、急に綿の肌着に切り替えてみる気分になった次第。

カガクにもオーガニックにも肩入れしていない、その辺の移り気な消費者とは、こういうものであるよな、と思う。ちょうど手持ちのヒートテックもだいぶくたびれていて(なのでヒートテック的な機能は果たしていなかった…)、手放すのに躊躇もなく、今年新たに買い足した新品もなかったので入れ替え決行。

それで、入れ替えてみてどうかっていうと、そこはよくわからないタチなので、よくわからない…。「ヒートテックより綿のほうが自然な肌触りでしょう!」と言われたら、「そうですね、そんな気もします」と言うような、一方「科学的な見地で言うと、そこに人は違いを見出さないはずですよ」と言われたら、「そうですか、そんな気もします」と答えてしまいそうである。

まぁでも、良いのではないかしら。とりあえず歳も歳だし、綿が好ましい頃合いなのではないかということで一件落着。しばらくは、これでいこう。

なにかを切り替えるときって、なんだかんだ、結局のところ、人生の中で一瞬のことなんだな。長いつきあいがあっても、あるところで、ぱたんと切り替わってしまう。風が吹いて。あっけないと言えばあっけないし、味わい深いと言えば味わい深いし。さようなら、ヒートテック。

追伸:しかし売り場でぼーっとみているかぎりは商品がたくさん並んでいるので気づかないんだけど、よくよく見てみると売れ筋は取り合いなんだな。いまや新宿の無印では、綿の八分丈の黒やグレイのMサイズの肌着がすっからかんなのだ。同種のものは束になって陳列されているので気づきにくいが、そのどれもがLやXLなどのサイズ違いで、Mは白しか残っていない。ひと月前にはけっこう在庫があったんだけど、2週間前に買い足しに行ったらもうなくなっていて、この週末行ってみても追加されておらず品切れ状態。新宿の別の店舗に行っても同じだった。黒やグレーのMサイズって人気で品薄のようだ。服のことはほんと、ぼよーとしてほとんど気にせず暮らしているので、目立たぬところでこんな争奪戦が繰り広げられているのかと新鮮な体験をした。

2017-12-02

ツール共有:「勉強会の帰り道」問答10

人材開発の研究者によれば、組織が従業員向けに研修を行った際、参加者が「研修で学んだ内容を職場で活用する割合」は10〜30%に留まるそうだ。世の中の雰囲気を察するに、わりと「ですよねぇ…」と納得の数字だと思うのだが、どうだろう。

一方、こうした研究結果は20世紀から言われてきたので、人材開発の業界では長いこと「学びをいかに実践活用につなげるか」が注目テーマであり続けている。あれこれの工夫が、実践されては知見共有されてもいる。発展途上の道半ばという感じ。

さて、今は業界コミュニティが主催する大小の勉強会も活発。この種の勉強会イベントも、参加者が「勉強会で学んだ内容を職場で活用する割合」は、だいたい10〜30%くらいに留まるのではなかろうか。

比率はどうあれ、職場に持ち帰っての活用度合いに個人差があるのは間違いないだろう。どれくらいどんなふうに活用したりしなかったりするかは、参加者個人に委ねられるのが、多くの勉強会で一般的ではないかと思う。これをどう活かすか活かさないかはあなた次第、何か一つでも持ち帰って役立ててもらえるものがあれば嬉しい。構造上も、主催する側は、そういうスタンス以外とりづらいと察する。

業界コミュニティ主催の勉強会は、一組織が自社の問題解決のために催す社員研修とは趣きが異なる。参加者の能力開発と同等かそれ以上に、参加者同士の交流、コミュニティ活性を重んじるのが常だ。「がっつり勉強して、全員が○○の知識を確実に習得して帰りましょう」というよりは、多様なバックグラウンド、知識・スキルレベルの人が、共通の関心テーマをきっかけにしていろんな思惑で集まり、主催者も事前に計画し得ないそれぞれの価値を持ち帰ってくれたら良い。

それは人によっては最新情報かもしれないし、ためになるノウハウかもしれないし、ベーシックな知識体系かもしれないし、同業者との出会いや交流かもしれないし、熟達者との意見交換かもしれない。そこにこそ業界コミュニティ活動の一番の意義があると考えるなら、参加者の知識・スキル・経験レベルを合わせるより、むしろ多様な人が集まるように広く参加者を受け付けたいと考えるだろう(そこからの分科会的なものも発展的にあるだろうけど)。

また、実際どんな人が参加してくれるかは事前に詳細な把握が難しい。根掘り葉掘り、参加者一人ひとりが、どんなバックグラウンドで、どんな役割・職務範囲で、どんな規模感の、どんな難易度の仕事を手がけているかを事前に聞いた上で、勉強会の中身を準備するのは現実的ではない。

ゆえに、(○○の初級者向け、中・上級者向けなどの目安は告知段階で提示できても)参加者みんなにフィットするスコープ・規模感・難易度のお題を用意することも難しいし、それに対して丁寧に議論し、一人ずつ発表してもらい、適切な評価軸を設けて、一人ずつに適任者からフィードバックをしてもらうといったことも困難だ。時間的にも構造的にも、主催者の負担を考えても難しい。

が、私は業界コミュニティ活動を大変有意義なものだと思っているので、端っこで実務家の学習サポーターをする立場から、参加者個々の学習観点で1回の勉強会参加をより有意義なものにする支援はないか考えてみた。

そうすると、やっぱりコミュニティ主催の勉強会に足を運んだ参加者が、それぞれに自分なりの収穫を明らかにして、それをどう自分の現場に持ち帰って取り入れるかを考えるのが手っ取り早いし大事。と思ったので、それを補助するツール(のたたき台)を作ってみた。

「勉強会の帰り道」問答10(たたき台)by hysmrk

クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンス

別に毎回かた真面目に参加しないでいいと思うんだけど、勉強会にはわりと足を運んでいるものの、その後の自分の現場パフォーマンスにはさして変化なしで、ちょっとなぁと思っているという人がいたら、試しに覗いてみてください。勉強会の帰り道に、電車の中とかで、この問答をやって帰るとか。

ただ、それにしては、いまいち、いい共有方法が…。私のGoogleDriveからファイルをダウンロードして、ご自分のGoogleドライブとかにオリジナルのフォームを作って、必要に応じて手を加えつつ使ってもらったらいいのかしら…。難しかったら、コピペしてごにょごにょして使ってもらえたら…。

質問内容や評価尺度は仮。それぞれの勉強会にあわせて自由に変えたらいいと思うのだけど、ここに書いたものの設計意図を、いくらか補足しておくと。

*全部「うーん」と考えるコメント回答だと疲れちゃうので、質問数は増えるけど、ぱっと答えられる選択肢回答を挟んでいる。ざっくりした印象を自分の中でクリアにした上で、回答のリズムをつけて段階的に深掘りコメント回答に導く。
*質問4〜5:もともと「知っていたか」「実践していたか」を分けて尋ねることで、「知っていたけど、実践はしていなかった」自己発見機会を作るようにしている。
*質問4〜5:もともとの知識度(知っていたか)や実践度(実践していたか)を尋ねるとき、さらに細分化して「全く知らなかった」を作る必要はない。「全く」か「ほとんど」かを厳密に選別する意味は、おそらくないだろう。評価尺度は、さして意味が無いなら少ないほうがいい。
*質問6〜10:勉強会の参加を機に、自分なりの明確な収穫を持ち帰り、何かしら実践に取り入れられるよう、言語化に導く。実践に取り入れるときの障害についても、明示的に尋ねることで意識して乗り越えてもらえるにする。
*質問6〜10:今回の勉強会の収穫も、実践に取り入れていく上で障壁となるものも、障壁の乗り越え方も、参加者個々に異なる。それを明らかにしてもらい、それについて懇親会やSNS、社内外の交流を通じてさらなる議論の深まりに発展させられれば、より有意義。

参加者ではなく、勉強会の主催者が使う場合には、勉強会の名前や開催日程の項目はなくして、タイトルに記載しちゃうとすっきりすると思う。あと、参加した感想や意見をざっくばらんに書いてもらうフリーコメント欄を最後に設けるなどしてアレンジを加えると良いかなと。

クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスで提供ということにしたら、何らか活用いただけた場合に情報ももらえたりしつつ、商用利用も含めて自由に改変してもらいつつ、参加者個々にも、勉強会の主催者にも参考にしてもらえるかしら…と思い、勝手分からぬまま共有。まぁ良し悪しは別にして…、何かしらこの辺を考える一助になれば幸いです。

*クリエイティブ・コモンズとは

« 2017年11月 | トップページ | 2018年1月 »