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2017-12-02

ツール共有:「勉強会の帰り道」問答10

人材開発の研究者によれば、組織が従業員向けに研修を行った際、参加者が「研修で学んだ内容を職場で活用する割合」は10〜30%に留まるそうだ。世の中の雰囲気を察するに、わりと「ですよねぇ…」と納得の数字だと思うのだが、どうだろう。

一方、こうした研究結果は20世紀から言われてきたので、人材開発の業界では長いこと「学びをいかに実践活用につなげるか」が注目テーマであり続けている。あれこれの工夫が、実践されては知見共有されてもいる。発展途上の道半ばという感じ。

さて、今は業界コミュニティが主催する大小の勉強会も活発。この種の勉強会イベントも、参加者が「勉強会で学んだ内容を職場で活用する割合」は、だいたい10〜30%くらいに留まるのではなかろうか。

比率はどうあれ、職場に持ち帰っての活用度合いに個人差があるのは間違いないだろう。どれくらいどんなふうに活用したりしなかったりするかは、参加者個人に委ねられるのが、多くの勉強会で一般的ではないかと思う。これをどう活かすか活かさないかはあなた次第、何か一つでも持ち帰って役立ててもらえるものがあれば嬉しい。構造上も、主催する側は、そういうスタンス以外とりづらいと察する。

業界コミュニティ主催の勉強会は、一組織が自社の問題解決のために催す社員研修とは趣きが異なる。参加者の能力開発と同等かそれ以上に、参加者同士の交流、コミュニティ活性を重んじるのが常だ。「がっつり勉強して、全員が○○の知識を確実に習得して帰りましょう」というよりは、多様なバックグラウンド、知識・スキルレベルの人が、共通の関心テーマをきっかけにしていろんな思惑で集まり、主催者も事前に計画し得ないそれぞれの価値を持ち帰ってくれたら良い。

それは人によっては最新情報かもしれないし、ためになるノウハウかもしれないし、ベーシックな知識体系かもしれないし、同業者との出会いや交流かもしれないし、熟達者との意見交換かもしれない。そこにこそ業界コミュニティ活動の一番の意義があると考えるなら、参加者の知識・スキル・経験レベルを合わせるより、むしろ多様な人が集まるように広く参加者を受け付けたいと考えるだろう(そこからの分科会的なものも発展的にあるだろうけど)。

また、実際どんな人が参加してくれるかは事前に詳細な把握が難しい。根掘り葉掘り、参加者一人ひとりが、どんなバックグラウンドで、どんな役割・職務範囲で、どんな規模感の、どんな難易度の仕事を手がけているかを事前に聞いた上で、勉強会の中身を準備するのは現実的ではない。

ゆえに、(○○の初級者向け、中・上級者向けなどの目安は告知段階で提示できても)参加者みんなにフィットするスコープ・規模感・難易度のお題を用意することも難しいし、それに対して丁寧に議論し、一人ずつ発表してもらい、適切な評価軸を設けて、一人ずつに適任者からフィードバックをしてもらうといったことも困難だ。時間的にも構造的にも、主催者の負担を考えても難しい。

が、私は業界コミュニティ活動を大変有意義なものだと思っているので、端っこで実務家の学習サポーターをする立場から、参加者個々の学習観点で1回の勉強会参加をより有意義なものにする支援はないか考えてみた。

そうすると、やっぱりコミュニティ主催の勉強会に足を運んだ参加者が、それぞれに自分なりの収穫を明らかにして、それをどう自分の現場に持ち帰って取り入れるかを考えるのが手っ取り早いし大事。と思ったので、それを補助するツール(のたたき台)を作ってみた。

「勉強会の帰り道」問答10(たたき台)by hysmrk

クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンス

別に毎回かた真面目に参加しないでいいと思うんだけど、勉強会にはわりと足を運んでいるものの、その後の自分の現場パフォーマンスにはさして変化なしで、ちょっとなぁと思っているという人がいたら、試しに覗いてみてください。勉強会の帰り道に、電車の中とかで、この問答をやって帰るとか。

ただ、それにしては、いまいち、いい共有方法が…。私のGoogleDriveからファイルをダウンロードして、ご自分のGoogleドライブとかにオリジナルのフォームを作って、必要に応じて手を加えつつ使ってもらったらいいのかしら…。難しかったら、コピペしてごにょごにょして使ってもらえたら…。

質問内容や評価尺度は仮。それぞれの勉強会にあわせて自由に変えたらいいと思うのだけど、ここに書いたものの設計意図を、いくらか補足しておくと。

*全部「うーん」と考えるコメント回答だと疲れちゃうので、質問数は増えるけど、ぱっと答えられる選択肢回答を挟んでいる。ざっくりした印象を自分の中でクリアにした上で、回答のリズムをつけて段階的に深掘りコメント回答に導く。
*質問4〜5:もともと「知っていたか」「実践していたか」を分けて尋ねることで、「知っていたけど、実践はしていなかった」自己発見機会を作るようにしている。
*質問4〜5:もともとの知識度(知っていたか)や実践度(実践していたか)を尋ねるとき、さらに細分化して「全く知らなかった」を作る必要はない。「全く」か「ほとんど」かを厳密に選別する意味は、おそらくないだろう。評価尺度は、さして意味が無いなら少ないほうがいい。
*質問6〜10:勉強会の参加を機に、自分なりの明確な収穫を持ち帰り、何かしら実践に取り入れられるよう、言語化に導く。実践に取り入れるときの障害についても、明示的に尋ねることで意識して乗り越えてもらえるにする。
*質問6〜10:今回の勉強会の収穫も、実践に取り入れていく上で障壁となるものも、障壁の乗り越え方も、参加者個々に異なる。それを明らかにしてもらい、それについて懇親会やSNS、社内外の交流を通じてさらなる議論の深まりに発展させられれば、より有意義。

参加者ではなく、勉強会の主催者が使う場合には、勉強会の名前や開催日程の項目はなくして、タイトルに記載しちゃうとすっきりすると思う。あと、参加した感想や意見をざっくばらんに書いてもらうフリーコメント欄を最後に設けるなどしてアレンジを加えると良いかなと。

クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスで提供ということにしたら、何らか活用いただけた場合に情報ももらえたりしつつ、商用利用も含めて自由に改変してもらいつつ、参加者個々にも、勉強会の主催者にも参考にしてもらえるかしら…と思い、勝手分からぬまま共有。まぁ良し悪しは別にして…、何かしらこの辺を考える一助になれば幸いです。

*クリエイティブ・コモンズとは

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