人材育成施策は「研修」だけじゃない
先日お客さんとの打合せの席で話題にあげて、久しぶりに思い出したスライドがある。人材開発コンサルタントの Marc J. Rosenberg氏が作成したもので、人が熟達に向かうまでの学習ステージを4つに分けて図示している。「うまくできるようになるにつれて、学ぶ方法は変わるんだよ」という話だ。
"Learning Through Four Stages of Mastery" (*1)
まず4つのステージとは。スライドの左から、1.初心者/見習い(Novice)に始まり、2.有能な職人(Competent)になっていき、3.経験を積んで老練な職人(Experienced)となり、ついには4.熟練者/専門家(Master/Expert)になるまで。
1は、ほとんど何も知らない状態。2は、まぁベーシックなことは一通り自分でできる感じ。3は、定型からはずれるような状況でも柔軟に対応を変えて事をこなせる感じ。4は、新しいこと、より良いやり方を発明したり、他者に教えられる域。段階的に流暢にこなせるようになり、さらなる学習も俊敏にこなせるようになり、共有できるナレッジも増えていく。
こうして4ステージに便宜的に分けてみたとき、Novice寄りであればあるほど、一般的な学習ニーズをまずは持ち、Master寄りになればなるほどユニークな学習ニーズに変化していく。
とするとNovice寄りでは、公式の構造化されたトレーニングプログラムが有効に働きやすいが、Masterに寄るほど、ソーシャルな活動だったり、個々人や各々の職場に基づく非公式な学習が有効に働きやすい。
つまるところ、学習のアプローチとして、Novice寄りだと教育的なトレーニング、E-ラーニング、反転授業やシミュレーションなど、いわゆる「研修」っぽい構造化されたプログラムとの相性がいいけど、Masterに寄っていくと、実践機会の提供、コーチング、ソーシャルメディア活用、熟達に向けて欲しい情報にアクセスできる環境づくり、コラボレーションなどと相性が良くなっていく。
Masterに近づいていくと、研修の有効性は一切ないと断じるような話ではないので、そこはうまいように解釈してほしいが、組織視点で人材育成施策を考えるとき、若手には◯◯研修をやって底上げ施策を打つけど、中堅には何研修やって更なる戦力化を図るかと、研修一辺倒に考えている場合は、少し育成施策アプローチの幅を広げて考えて見るのに使えるスライドだと思う。ということで、プチ共有まで。
*1: Beyond Competence: It's the Journey to Mastery That Counts : Learning Solutions Magazine
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