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2017-01-28

寿命100年の時代

今週は仕事でへろへろになったので、できるだけ視線を遠くに向けて週末を過ごそう。と狙ったわけじゃないけど、読みかけの「LIFE SHIFT」(*1)をもって朝食に出かける土曜の朝。

「100年時代の人生戦略」と副題のつく、この本。著者は、ともにロンドン・ビジネススクールの教授で、リンダ・グラットンは人材論、組織論が専門。アンドリュー・スコットは経済学。グラットンは近著の「ワーク・シフト」でも注目された。人のキャリアをテーマに一つの「あるべき姿」を掲げて一方向に引っ張る系の本はあまり得意じゃないんだけど、「これは読んでおかねば」感が強く、頑張って読んでいる(途中)。

冒頭に、日本の読者に向けたメッセージがつづられている。日本では、長寿化を恩恵ではなく厄災とみなす論調が目立つけど、恩恵に目を向けなさいな、と著者。

そうはおっしゃいますけれども、出だしから前半、
1.これからは多くの人が長生きするようになる
2.人生が長くなれば、必要な資金は増える
3.資金をまかなうためには、長い年数働かなくてはならなくなる
4.働く時間が長くなれば、その途中で雇用環境は大きく変貌する
5.その不確実性を前提に将来を展望し、適応していかねばならない
というので、恩恵のわりに「ならなくなる」「ねばならない」という文末が多くないですか…と後ずさりしながら読む。

100年ライフの恩恵の一つは、余暇時間の使い方を見直し、消費とレクリエーション(娯楽)の比重を減らして、投資とリ・クリエーション(再創造)の比重を増やせることなのかもしれない。

とさりげなく主語を「恩恵」と位置づけているけれども、これを「恩恵」とするか「厄災」とするかは、人によって見方が異なる気も…。などと、おっかなびっくりにページをめくっている。

ともかく、まぁお金の話は気になるでしょうから、最初に話しておきましょうってことで、その後が雇用の話。仕事して稼がねばね、ということで。その後が、知識とかスキルとか仲間とかの話。雇用を成立させる資産も大事ねって話だろう。これらを話しきった後半から、こういうふうに新しい生き方をしていこうというイキイキした話を展開していくようなので、まずは前半を乗り切らねば。

が、私は読むのが遅いので、とりあえず「ねばならない」の渦中で、メモっておきたい箇所をメモっておく。

●平均寿命は大幅に延びる
要約:過去200年間、平均寿命は10年に2年以上のペースで延びてきた。いま先進国で生まれる子どもは、50%を上回る確率で105歳以上生きる。いま20歳の人は100歳以上、40歳の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上生きる確率が半分以上ある。

→長いっすなぁ…

●比較的最近まで、引退年齢はもっと高かった
要約:イギリスでは、1984年に職をもっていた65歳以上の男性は8%どまり、約1世紀前の1881年には73%あった。アメリカでは、1880年に80歳の人の半分近くがなんらかの職をもち、65〜74歳の80%がなんらかの形で雇用されていたが、20世紀に大幅下落。現在は、その潮流が逆転しつつある。

→進化とともに引退年齢は下がってゆくというより、時代とともに引退年齢は上がったり下がったり変動するという感じで捉えていたほうがいいかなと思った。もちろん、老後もあくせく働くというんじゃなくて、いろんな役割をもつ中に「人のために働く」「社会と公的に関わる」ところも残してバランスさせていくほうが健全に過ごせるのではないかなぁという理想イメージで。

●仕事と私生活は、もともとブレンド状態だった
引用:興味深いのは、工業化以前の社会では主に家庭が生産活動の場になっていて、仕事と私生活がブレンドされていたということだ。その後、工場が出現し、さらにオフィスが出現したことにより、必然的に仕事と余暇が明確に分離されるようになった。しかし将来は、新しいビジネスのエコシステムの中で働く機会が広がって、その境界線が崩れ、「ワーク」と「ライフ」が再統合されるだろう。

→これも上と同様。進化とともに仕事と私生活が分離していったというより、時代とともに仕事と私生活は分離したり、再統合したりするって見方のほうがいいかねぇと思った。ワークとライフを分離するのが健全というものの見方は、偏狭な気がする。そういう価値観の人もいて、そうでない価値観の人もいる。両者あって良いし、どちらも制限されずに両者とも気持ちよく働ける環境づくりが理想という感じ。

●「近さ」の価値はむしろ高まっている
引用:インターネットが登場した当時、この新しいテクノロジーにより物理的な距離が重要性を失い、私たちは自分の好きな場所で暮らせるようになると言われていた。しかし実際には、たしかに「遠さ」の弊害は問題でなくなったかもしれないが、「近さ」の価値はむしろ高まっている。

→”「遠さ」の弊害は問題でなくなったが、「近さ」の価値はむしろ高まっている”って、こういう表現で斬れるの、すごいよなぁって感服してしまう。すごいよなぁ。それだけのメモ。

なんか、全然気は休まっていない気もする土曜の朝。いやいや、のんびり読書なんて贅沢極まりない。いっぷく。

*1: リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)」(東洋経済新報社)

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