それは知識不足の問題なのか
あるところで相談を受けた。スタッフの文章の質がいまいちなので、良くするために文章作成の勉強会を開きたいんだけど、そういうのを教えられる人を紹介してもらえないか?それが私がもらった相談だったが、いくつか質問を返して背景事情を聴かせてもらう。
文章の質はどんなふうにいまいちなのか。それで何が滞っていて問題なのか。その辺りを尋ねると、どうもまだ「個人の能力に起因する」ところまで分析できていないことがわかる。「○○力が足りないために、こういう文章になってしまっていて、結果○○というビジネス上の問題に発展している」という構造がつかめない。そうした場合は、研修や勉強会という施策を選ぶ前に、もう少し掘り下げて要因を探ったほうがいい。
問題の要因がスタッフの知識・スキルに起因するというのは、発想が楽なので安易に結論づけられやすい。確かに、それも一因であろうけれども、問題解決にあたる人間がまずすべきなのは、主だった要因をざざっと挙げてみて、そこから最もキーとなる要因を見定めることだ。
期待するパフォーマンスを阻害する要因というのは、一般に10~12はあると言われている。そこから、「これこそが真因!」を採るか、真因に食ってかかっても効果が期待できない場合は「最も効きそう!」な策と対称性をもつ主要因を採るかはやり方だけれども、とにかく解決のキーとなる要因を特定する。
そうやって探りを入れていく作業は、当事者の頭の中だけで自問自答するのが難しかったりする。そこを第三者として介入し、対話しながら一緒に掘り下げていくプロセスが、個人的に面白いと感じる。
例えば、そのスタッフは全力を使い果たして、その文章を仕上げているけれども、要件に満たないのか。それとも、そもそも時間に追われて「推敲する」という時間をとれていないのか。「推敲する」時間をとったら品質が上がる可能性はあるのか。そんなことを尋ねてみる。
すると、そう言われてみると「推敲する」時間はとれていないと思う、と返ってきた。スタッフはこれまでずっと、1件あたりの時間短縮を求められてきた。推敲すること、品質を上げることは明示的に求められておらず、時間を短くして仕上げる求めに応じてきた。
だとするならば、まずは「品質を上げたい」と方針をスタッフに示すところからやったほうがいいのではないか。そう返す。そして「品質を上げる」とはどういうことなのか、今のどういう状態を、どういうところまで引き上げたいのかという「規準」を明らかにして、言葉にして説明するところからやってみたらどうか。「推敲時間をもて」というなら、その推敲時間を、今のテンポを大幅に崩さずにどう実現できるのか、スタッフと一緒に知恵を絞るところから始める必要があるのではないか。
こうしたことをまずやっていくと、その過程で「今のどういう状態を、どういうところまで引き上げたいのか」のギャップ分析も自ずと組み込まれてくるので、そこも明確になり、その施策の一つとしてどういう勉強会が有効かも見えてくる。ここのところは皆で一緒に学習したほうが効率的だし、効果も期待できる。そういうものが浮き彫りになってくる。
一口に「書く力がない」といっても、てにをはからの文章講座が有効なのか、書くテーマの専門知識や表現力が足りないのか、フォーカスはいろいろだ。対象者が何人で、そのうちの何人が同質の課題を抱えているのかによっても、有効な施策は異なる。レベル差が大きければ、研修設計もそれを踏まえた構造が必要になるし、あるいは研修ではなく個別対応して指導したほうが合理的ということもある。
そんなこんなで、こういうことを精緻に考え込んでいくところに自分が熱くなることは理解しているので、そこんとこの研修枠組みにとどまらない、恰好よく言うとパフォーマンス・コンサルティングとか、ヒューマン・パフォーマンス・インプルーブメントとか言われるところの辺に軸足を移しながら働いていけるようにしたい。それを、ここのところよく考えるのは、そういう変え時ってことなのかなぁと、自分のことをぼーっと眺めている。
今は、書籍を読んで基礎固めしつつ、研修にとどまらず組織の人材課題についてクライアントにインタビューして分析レポートにまとめて出すといった仕事を、機会あればやらせてもらうようにしている。そうした経験を積んでいって、個人的に勉強も続けていって、できることを少しずつ広げたり深めていけたらいいなと思う。
だったら、こういうステップを踏んでいくといいよだとか、この本はオススメだよとか、こういうふうに一緒に組めるよとか、うちの組織の相談したいから壁打ち相手になってよとかいう方がいたら、ぜひお声がけください。来年はここんとこ深堀りして展開していけたらなぁ。
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