研修で学んだスキルを仕事で適用した人は何%か
11/22(火)に開催された「ATD 2016 JAPAN SUMMIT」(*1)に参加。改めて意識したことは、もっと「研修」という前提から離れて、人材育成の施策を包括的に練って骨のある施策を提案できるようにならないとな、ということ。
次の図は以前、話の流れでクライアントに提示した資料の一部だけど、この研究成果を発表したBrinkerhoff教授が基調講演の話し手だった。
研修で学んだスキルを仕事で適用した人は、適用した人が15%、適用しなかった人が20%、適用しようとしたけど元に戻った人が65%。結局のところ、研修で学んだスキルを仕事に適用していない人が85%。
ちなみに、これは単純化した数字であって、技術スキルのトレーニングを受けた場合は適用した人はもっと多く、マネジメント系の研修だともっと低かったり。もちろん学習テーマによらず、研修のやり方によっても数字は変わる。
私は、クライアントから人材育成(主に研修)の相談をもらって、それをオーダーメイドで作って納めるという受託サービスを行っているのだけど、社内外で受ける相談の中には、「その問題の解決策を“研修”と決めてかかるのは早計では?」と思われるケースがある。
なぜ、こうしたことが起こるかという理由の一つが、「スタッフのパフォーマンスが低いのは、スタッフの能力が低いからだ」と、自動的に問題の要因を決めてかかってしまっているから。
「スタッフの能力は十分すぎて余りある」ということも、まぁあまりないわけで、ゆえに要因分析を挟まず、手っ取り早く解決策を指し示せる「研修」に頭がいく。
じゃあそれで、何を研修したらいいのかと分析にかかっても、「どれくらい何が足りないのか」という質問にはうまく答えられない。そういう場合には、今一度、何が問題になっているのかを「スタッフの能力」から離れて考えてみる必要がある。
「研修」も複合策の一つに加えるとしても、どういう問題の構造をしているから、どういう順序で施策を打って検証して様子をみていく必要があるか、その辺りを整理してかからないと、施策全体がうまく連携せず、施策がちぐはぐで合理性を欠いてしまう。
研修で学んだスキルを仕事で適用せずじまいになるのは、現場の業務環境(研修中ではなく、研修の前・後)に多く影響を受けている。上司が研修内容や目的を理解していない、学んだことを現場で使うよう促したり、そういう機会提供をしていない、本人も上司も研修はただの福利厚生だと捉えているような場合、やっても目覚ましい効果は得られない。
「研修」そのものの作り込みも引き続き大事にしたいし、その部分での責任逃れのような考えは一切持たずに取り組みたい。けれど、もっと包括的な仕組みづくり、実際的に役立つ人材育成の提案・提供ができる力を鍛え上げていきたいと、改めて認識する機会になった。言うは易し、本当に腰を据えてやっていかないといけない環境作りも多いだろうけど、できるところからやって、できるところを広げていきたい。
*1: ATDは世界最大規模の人材開発系の協会で、今回のイベントはATDが日経BP社とともに日本で開催する年1回のカンファレンス。詳細はこちら。
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