思いこみの検証項目
不安や恐怖心、憂うつな気分に捕らわれてしまったとき、それを下支えしている「自分の考え」が閉じたものになっていないか、背景を探ってみるのは有効な検証アプローチだ。
何かにチャレンジするときの「失敗するんじゃないか」って不安だったり、苦手な人を相手にしたときの「何を言っても取り合ってもらえないだろう」って恐怖心だったり、自分がどうにも無能で無価値に感じられて仕方なくなってしまったとき、その背景を探ると、どこか偏狭な考えに自分が絡み取られてしまっていることがある。
心理カウンセラーで臨床心理士の杉原保史氏の著書(*1)によれば、こうした不健全な考えって、自分の意志で考えた考えではなく、勝手に浮かんできてしまう考えであることが普通で、そのことについて本人はほとんど意識していないことも多い。というので、「自動思考」と呼ばれているのだとか。自動的に思いこんで、自動的に不安・憂うつになっちゃっている。
こうした不健全な自動思考は、正すまでせず、ただありのままに認識するだけでも、厄介な感情が和らぐことが分かってきたのだとか。自動思考を自覚することで客観的に見られるようになって、不安感情や気分に捕らわれることが減ってくればしめたもの。
自動思考の代表的なパターンは、次のものだそう。こうやって見てみると、自分が「一旦は落ち込んだものの、少し時間をおいて気持ちを持ち直す」ときによく使っている検証項目がずらっとランクインしていて、ですよねぇ…と思う。
[自動思考の代表的なパターン]
●全か無か思考…全か無か、白か黒か。中間を認められない考え方。こちらでなければあちらと両極に振れてしまう。
●破局視…常に大げさに破局的、破滅的に考える。
●肯定的側面の否認…肯定的な出来事や自分の側面に対して選択的に不注意で、否定的な出来事や自分の側面には常に選択的に注目している。肯定的な出来事や自分の側面を指摘されても認めない。
●感情的理由づけ…そういう感じがするからそれが事実である。
●レッテル貼り…単純で固定的なレッテルを貼る。
●読心術的思考…人の心理をあらかじめ決めつけてしまう。
●過度の一般化…一つの事例を不適切に一般化して断定する。
●自己への関連づけ…周囲で起きていることを不適切に自分のせいだと考える。過剰に自分の責任だと考える。
●べき思考…いつも自分自身に「〜べき」「〜ねばならない」と言い聞かせている。行動の背景にある考えがいつも「〜したいなあ」ではなく「〜すべき」である。
※先の書籍より引用。「例」は省略。
しかし実際落ち込んだとき、こうしたことは、なかなか一人での探索が難しい面もある。不安だからこうなるみたいな鶏と卵の関係にも感じられるし。とはいえ他人に探索を同行願うのも気後れしたりプライドが邪魔したり。こうした探索活動に、静かに同行して、穏やかに探り当てて、丁寧にほどいていくキャリアカウンセラーでありたい。その訓練も兼ねて、自分の検証は日常的に抜かりなくやり続けていきたいところ。
*1: 杉原保史「キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門」(北大路書房)
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