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2016-03-07

職種もロングテール

ちょうど今日、チームラボの猪子さんのインタビュー記事を読んでいて、最近考えていたことと重なるところがあったのでメモ。

ウェブサービスの会社というのは、理論上はやがて、すべてなくなると思っているんですね。たぶんグローバル・ワンサービスみたいになっていくと思うんだよね。(*1)

「一般性が高くて普遍的なもの」って、世界を牽引するごく少数の頭脳明晰で資金力ある人たちが研究し、発見し、社会に役立つようにひとつ大きな仕組みを作ってインフラサービス化しちゃったら、もう後いらないよなぁと。Google検索とかAmazonとかAWSとか。

一方、個別具体的なサービスというのは「数」を生み出しやすい。一つの普遍的な言説を、地域別でもカテゴリー別でもターゲット別でも、個別最適して価値化できる数だけサービス展開できる。

それに、人が発見した普遍的な言説をもとに始められるし、よそで個別最適化しているサービスに学んで、こっちでやってみても有効じゃないかと発想できる。その先の最適化の道のりはオリジナルにたどる必要があるけど、前者に比べればサービスの発想(発見)難易度は低いし、守備範囲も狭いから、実践の中で小さくPDCAをまわしていきやすい。それだって発展的に続けるのはもちろん難しいわけだけど、とにかく大きいのがひとつ普及しちゃったらおしまいってことにはならない。

そうすると、自分を含む多くの人たちの仕事は、グローバル・ワンサービスを活用したり差別化したりしつつ個別具体的な仕事をして「自分の傍(はた)を楽にする」(働くの語源だそうな)ことになるのかなと。

よく「何十年後になくなる仕事」とかがニュースになっているけど、今後の職種分類を考えると、わかりやすく一般化できる「これの専門」って職種の人は、ごく限定的になって、いろんな強みを掛けあわせた仕事、職種名が曖昧な仕事を担う人が増えて、自分が何かといろいろと役立つところで働いています、みたいな感じになるのかもなぁと考えた。職種より広義に、役割とか立ち位置とか活動拠点とか。

「これからはT型よりH型・π型人間が必要だ」とかもよく聞くけど、2コ3コ柱があるとかじゃなくて、この人は「A業界でのBの職務が人並みにできて、前職でC業界の経験があるからその辺の業界知識もそこそこあって人脈もある。学校ではD学を専攻していたからそっちも苦手じゃないし、友人関係でそっちの業界にも顔が利く。実家の稼業が○○県のE屋だからその辺の文化・風土も理解がある。愛嬌もあるし気も利くから、きっとこの辺に身をおいたら、いろいろやりたいこと、できることあるんじゃないの」とか、多くの人の仕事はそういういろんな小さな柱と、運やら縁やらをごちゃまぜにして、全人格的に関わっていくのかもしれないなぁなどと思う。

これまでも実際はそうだった気もする。そう考えると、これまでが職種分類を、実際より偏重ぎみに机上で扱っていただけなのかもしれない。

だいぶ雑に思いつきで書いているんだけど…。とにかく個別具体的で状況依存的な仕事なり活動は、世の中のそこら中にある。範囲は狭くとも、具体的な場所で、頭と体と心をくだいて人に役立つことに向かっていれば、ものすごい頭が良くなくても回転が速くなくてもそれなりにやっていける仕事・活動はバラエティ豊かにあるかなぁと。少なくとも、その数は「一般性が高くて普遍的なもの」を提供する仕事より数多く確保されるかなぁと、自分に都合のいい見通しを立てている。逆にいえば、「とにかくビッグな仕事」「多くの人の目にふれる仕事」とかにこだわっていると、仕事探しは昔よりも大変かもしれない。

「個別具体化したものの有用性は、その再利用性に反比例する」という再利用性のパラドックスがある。なにかを個別に作りこめば作りこむほど、その再利用は難しくなる。裏返すと、再利用性を重視して作りこめば作りこむほど、かゆいところには手が届かぬサービスとなる。

社会に価値提供できる範囲は狭くとも、一つひとつ作りこんで個別最適化したノウハウは自分の中にたまり、他での経験とも関連づいてシナプスが太くなっていく。そのままでは再利用性がないけれど、自分の中の一段上のレイヤーで暗黙知化されるそれは、「再利用できる汎用スキル」となる。そうやってニッチに手づくりで傍を楽にする仕事に人生をささげられたら幸せだ。その過程で形式知→システム化できるところも新たに出てきて、それはそれで後にプロダクトなりサービスなりに展開できるかもしれない。という能天気な脳内イメージをもっている。

*1:【亀山×猪子】猪子に出会ったから、自分は今のキャラになった┃NewsPicks

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