ペルソナとターゲットの混同
本を読んでいて、ペルソナとターゲットの同列化、置き換え、あるいはペルソナのほうが上位概念のように感じられる文章に触れたので、ちょっと整理をしたい。
こういうときは、精緻に言葉を扱う棚橋さんに…と思い、今やWeb業界だと「古典」の感もある棚橋弘季さんの「ペルソナ作って、それからどうするの?ユーザー中心デザインで作るWebサイト」をめくってみた。
そして、やっぱりそうだよなと整理がついたので、ここに書き留める。
まず「ペルソナ」とは。
ペルソナとは実在する人々の生活や仕事に関する調査データをもとに作った架空のユーザー像
ペルソナは「調査データをもとに作った」というプロセスを経ているものを呼ぶ。こういう人に使ってほしいとか、こういう人はきっとこんな生活を送っているとかいう推量にもとづくものは、それと区別する必要がある。
そして、「何に使うものなのか」と「ターゲットとの関連」を一言で示しているのが、ここ。
ペルソナ/シナリオ法そのものはターゲットユーザーを深く知り表現するための手法であり、ユーザーセグメントを行い、ターゲットユーザーを絞り込むためのツールではない。
つまり、ターゲットユーザーがすでに設定されている状態から、彼・彼女らを深く知るためにペルソナを作る。もう少しブレイクダウンして説明してあるところも引用させていただくと。
ペルソナ/シナリオ法自体には、ユーザーをセグメントしたり、セグメントしたユーザーグループから適切なターゲットを絞り込む手法は含まれていません。その作業を行うには、ペルソナ/シナリオ法以外の別の手法を用いなくてはいけません。手法もそうですが、それ以前にどんなユーザー層を対象にサービスを提供するのか、価値を提供するのかというサービスのミッションが明確になっている必要があります。ミッションは明確だが、どういうユーザーセグメントを具体的に行えばよいかをきちんと把握する必要があるというのであれば、まずはユーザーセグメントのための定量的な調査・分析を行うことが必要でしょう。
という話でいくと、そもそもの「誰に何を提供するのか」を決めないでペルソナの設定に踏み出すというのは、やっぱり違うかなぁと思う。違うというのは、「ペルソナ」と「ターゲット」という概念を、知識体系として頭に入れる上で。
あるいは、ペルソナの解釈が、この本が出た2008年当時から定義を広げていたり、軸足を移している可能性もないとはいえないけれども、だとしたら、これを読んでしまった方、ぜひとも突っ込みください。私はこの本の理解から止まったまま今日に至っている。
ともあれ、こういう人に使ってほしい、こういう人たちのこういう課題を解決したいといった「ターゲット」を設定する行為は、私の中では「ペルソナ」より先に明らかにするものであり、決してはずせない重要な位置づけにある。
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