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2016-02-24

課題を乗り越える3ステップ

大きいの小さいの、私たちは日々いろんな課題に直面する。人は新しい課題に直面したとき、3つのステップをたどって課題を乗り越える。

まずは、この課題に取り組むかどうかを決める(自律システム)。ここを通過すると、どこを目指してどう乗り越えるかという目標と方法を決める(メタ認知システム)。ここも定まると、関連する情報を処理して事を進める(認知システム)。ここもうまくいくとゴール!新しい課題を完遂した状態にたどりつく。

目の前のお菓子を食べずに我慢する課題でも、早寝早起きする課題でも、癇癪を起こさない課題でも、新しい知識や技術を習得する課題でも、何かに合格する課題でも。

「これは重要だ、必要だ」とか「自分にもきっとできる」とか「やってみたい、できるようになりたい」とか思わなければまず取り組まないし、取り組もうと思っても何をどうしたらいいかという具体的な行動計画が定まらないと動き出せないし、動き出したとしてもそれがうまくできなければ完遂まで至れない。

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※クリックすると拡大。スマホではきれいに表示できない…

この行動モデルのポイントは3つ。
(1)3つのステップは逆の流れにはならない
(2)上(先)のシステム要因の状態が、下(後)のシステム要因の状態に影響する
(3)いずれのステップも、自分がもっているナレッジの質・量から影響を受ける

とすると、新しい課題を人(あるいは自分)に課すときは、まずSTEP1の「自律システム」を突破することが肝要だ。重要だと思っていないとか、自分には無理だと思っている人に向けて、いくら具体的な指導を施しても身にならないし、計画を立てさせようとしても進まない。重要性を説くとか、ここで課題を乗り越えないとどんなリスクがあるかとか、興味がわくような刺激を与えるとか、まずはSTEP1施策が求められる。

本人が取り組む腹を決めたら、具体的な目標と方法を決める。わかっている、できる人間からすると、具体的な目標と方法を設定するのはなんてことなくとも、まだその道を通ったことがない立場からすれば、これが難しい。というのは、ホッケーでも漁でも狩猟でも、自分のできない分野のことに置き換えたら容易に想像がつく。

もし誰かに何かを教える立場なら、「やる気になったら後は頑張れ」と放置プレイに入る前に、具体的な目標と方法を一緒に考えてあげると能率良くなる。自分で考えさせてもいい。ただ、目標と方法がうまく設定できているかどうかを、始める前にレビューしてあげるといいと思う。「早寝早起きする課題」を乗り越えようというのでも、こちらは「1か月続けられること」をゴールイメージとしているのに、当人は「明日一日できること」を想定している可能性もある。ゴールがずれれば方法もずれる。放置プレイは、するにしてもこの後で。

(3)はこれだけで白米が十杯進みそうな話なのでここでは深く触れないが、各ステップをどう通過していくかは、その個人のもつナレッジに依存する。ということは、課題に向き合う人に同じ刺激を与えても、ある人には有効で、ある人にはうまく刺さらないということが起こる。

ゆえに各ステップでどんな施策が奏功するか、具体的なアプローチは相手次第だ。また、すべての施策がそうであるように、狙いによっても課題のテーマによっても異なる。施策を講じる人の力量やタイプ、相手との関係性によっても変わる。

ただ、こうやってステップを分けて状態を捉えることで、ちょっと解像度が上がり、洞察を深めやすくなる。もう一歩踏み込んで分析すれば、それぞれに適した答えは出てくるだろう。

ここでは「社内で部下や後輩を育てる」ケースをイメージして書いたが、それ以外でも、たとえばセミナーを企画するときに、「○○のテーマについて、身につける気はあるけど、具体的な目標と方法を設定できなくて困っている人」向けに、こういうセミナーを開催しようとか、ターゲットを明確にすると、シャープな企画構成に落とし込みやすい。

企業が人の採用基準を考えるときにも、最初は万能選手を採用したいと考えていたけど、それではなかなか人が採れない。大手ほど十分な報酬・待遇を提供できるわけじゃないし、ここは「しっかり自学自習に取り組んでいるものの、仕事経験はない層(STEP2後)」、あるいは「やる気はあるし勉強もしているんだけど、学び方が非効率で空回りしている層(STEP2前)」にも範囲を広げてポテンシャル採用してみてはどうかとか、代替策を展開できるかもしれない。というプチ共有。

参考文献:Robert J. Marzano, John S. Kendall (原著), 黒上 晴夫, 泰山 裕 (翻訳) 「教育目標をデザインする: 授業設計のための新しい分類体系」(北大路書房)

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