「点数をつけない」人事評価
ちょっと前に「ニューロマーケティング」なる言葉をどこかで見かけたけど、人材開発の世界でもニューロが熱いらしい。先日「ATD-ICE2015 人材開発国際会議」の報告会に参加してきたのだけど、今年のATD-ICEでは、Neuroscience(神経科学)の知見を活かそうという話が各所で語られていたとか。
ちなみに、ATD(Association for Talent Development)というのは、職場の人材開発をテーマに活動する世界最大の非営利団体。ATD-ICE(International Conference & Exposition)は、ATDが年に一度開催する人材開発の世界では最も大きなカンファレンス&展示会。今年は5月に米オークランドで開催。会期は4日間、参加者数は海外勢含め9,600名、セッション数300件、展示350件以上というビッグイベント。これの報告会が先日、日本支部主催で行われたので参加してきた次第。
ニューロサイエンスの話は300中17セッションで、数が多いとは言えないものの、昨年の11セッションから数を伸ばしていたそう。「ニューロとかそういうの、ほんと好きねぇ」と、おばちゃんのような一言をこぼしそうにもなるのだけど、組織規模も巨大になると、意思決定も何かとリスキーなのだろう。後ろ盾の確かさが相対的に重要性を増す感はある。「人事評価で人をレイティングするのは、脳の扁桃体を刺激し、本人の主体性をストップさせることがわかっています」と、脳の部位名称を持ちだすことで「人を点数をつけて評定するのはいかがなものか」論の説得力は大幅に増し、変革の意思決定が促進される効果も期待できそうな感はある。
一方で、「脳の扁桃体」など持ちださなくても、「人事評価で人のレイティングするのって良くなくない?」という問いを投げて、「なんか違うよね」「される側に立ったら嫌だよね」「なんかげんなりする」「それぞれ複雑で多様な業務をやってるというのに、横並びにされて上司1人の評価で順位とか点数つけられるのって納得感低い気がする」「評定にかけてる時間って、もっと別に有効活用できると思うんだけど」「評価ってそもそも、次のステップアップにつながるようなフィードバックを本人に返せることが大事なんじゃないの」「でも給与決める代替の仕組みがないとだめじゃん、いまさら年功序列に戻すのも違う気がするし」「じゃあ、それ踏まえて別の方法を検討してみようよ」というところまで5分で行ける組織なら、それで変革のスタート地点に立てる話であるなとも思う。
そういうところは、普通にそうやって決めたらいいと思う。っていうのは雑かしら。「多くの大企業がやっている手段やプロセスを(だからという理由で)採用する」のは、思考停止した組織がやりがちな意思決定だ。大企業でもないところが手をだすと、メリットはさしてなく、デメリットは大企業なみ、もう最悪…みたいな事態に陥りかねない。「中小企業の大企業病」は、ひかなくていい風邪を率先してひきにいってる感じがつらい。などとなんとなく思っている。
一節には、「人は人を、8割はバイアスで評価する」という話もあるんだとか。そんな中で「人が人をレイティングする方式はナンセンス、止めましょう」と人事評価制度を変革する動きが注目を集めているらしい。
GEは次の一年で止めるらしく、GAPはもう止めたとか。40〜50社くらいのレイティングを止める動きがあるらしい。帰ってネットで調べてみたら、2014年の記事で、GEの「スコアリングはしない」という話が載っていたから、日本のGEではもう導入が進んでいるっぽい。(*1)
ずばり、『どうなの、この人?』と当該組織のリーダーに尋ね、『パフォーマンスは可もなく不可もなくですが、どんなことも率先して挑戦するし、組織のロールモデルになっています。部下や他部署からの信頼も厚いです』などと返ってくる答えを元に位置付けていきます」。(中略)非常にアナログな方法ですが、結果的には相対的に納得感のあるものになる(*1)
[追記ここから]
つまり、後ろ盾のもち方として、「現実的な解として今多くの企業が採用している」もあれば、従来のやり方の納得性・妥当性の低さから「ニューロサイエンスの知見」を後ろ盾に変革を試みるも、「今先駆的な企業が試行している」ことを後ろ盾にするも、「それを社員との対話から導き出す」も、それは各社で妥当性と納得性の高い解の導き方をたどればいいことだ、という話を私は書いているのだろうか…。
そのとき、いろんな後ろ盾のもち方があることを、まず知っているのは確かに大事だ。人の認知活動の95%は無意識に行われているらしく、自分の判断で意思決定していると思い込んでいるものも、意識に上がる0.5秒ほど前に脳が意思決定して行動を起こさせているという話も。(*2)
この無意識に行われる意思決定で、最も重要なことは、脳は外からの情報よりも脳の中にある情報をより多く活用して意思決定を行うということだ。(*2)
いろんな情報が脳の中に入っているのは確かに大事で、だけど最終的にそこから何を妥当と判断して意思決定するか、何を後ろ盾にして人の理解を求め、納得感を得るかは、やっぱり自分とこで決めることになるんだろうな、という話を書いていたのか。
[追記ここまで]
この報告会に参加してメインで考えた個人的関心事はこれではなくて、実は別にいくつかあるのだけど、なぜか横っちょの一片が先にぽろり…。
*1: GEの人事部長に聞く タレントを見える化する方法(HITO総研)
*2: ニューロファイナンス~脳科学の金融・経済分野への応用(NTTデータ経営研究所)
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