父と九州旅行
今年上半期の仕事の山が少し落ち着いた隙に、いざ九州へ。この間の話の経緯で、先週は金曜日にお休みをもらって、父とともに二泊三日の九州旅行に出かけた。九州はちょうど梅雨に入ったところで初日は雨に降られたけど、土日は好天に恵まれた。
旅程は、初日が福岡空港まで妹に車で迎えに来てもらって、福岡で新鮮なお魚ランチ→妹のお宅訪問→湯布院まで2時間ほどのドライブ→宿へ。2日目は長さ390m高さ173mの九重“夢”大吊橋を渡り→タデ原湿原を歩き→今回の目玉「阿蘇山」へ→湯布院の宿に戻る。3日目は、福岡に戻って妹のパートナーとランチ→福岡空港まで車で送ってもらう3日間。
湯布院といえば温泉だけど、今回は妹がけっこういい宿をとっていて、お風呂も贅沢だった。初日、宿に着くやいなや夕食前に一風呂浴びようと、備えつけの浴衣に着替え、足袋に下駄をはいて大浴場へ向かう。すると、中に誰もいない。3つの露天風呂をひとり占めだった。
これと別に家族風呂も2つあって、家族風呂と言いつつ、どちらも10人は入れる露天風呂。しかも「空き」となっていることが多いので、2日目と3日目は家族風呂に入った。2日目の夜中には星空を、3日目の朝方はお月さんを眺めながら一人で湯につかった。贅沢この上なかった。
2日目は朝から空が晴れわたり、阿蘇山に向かう道も、新緑の草原がずっと先まで広がっていて、そこにまっすぐの道がずっとずっとのびていて、とにかく気持ちよかった。
そして、阿蘇山のカルデラは圧巻。外輪山の北側に位置する大観峰(だいかんぼう)まで上ったのだけど、そこからの眺めが絶景。山に囲まれたカルデラ内に広がる家々と田畑を見下ろすと、自然のとんでもなさを感じずにはいられない。
つまり、今目の前で見下ろしている盆地は、9万年前の大噴火でできた陥没というわけで。この大噴火の火山灰は北海道や朝鮮半島でも確認されたというから、どんだけの大噴火…と唖然としてしまう。地球はやることがデカい。
景色の雄大さもさることながら、そこに吹く風を頬に受け、そこに薫る匂いをかぐことも、旅ならではのおいしさ。まさに今回は、大観峰の涼風と草の匂いを堪能した。父も感心して「来てよかった、命の洗濯になるな」と口にしていた。来て、本当によかった。
せっかく福岡まで娘の様子を見に行くなら、湯布院旅行と、できれば娘(妹)のパートナーとの食事会を、というのが今回の父のオーダーだったのだけど、部屋もお風呂もごはんも、妹の彼との食事会も、阿蘇山の大観峰からの眺めも、久しぶりの飛行機も堪能した様子。3日目に飛びたつギリギリまで、ぎゃあぎゃあとしゃべってボケて酔っぱらって楽しんでいた。最後は娘たちに日本酒のおかわりを阻止されてしょぼくれながらも、お吸い物をすすって落ち着きを取り戻し、満足げに福岡を後にした。
私も飛行機はけっこう緊張するのだけど、行き来とも無事に着陸。羽田空港に降り立ち、父と横並びでモノレールの座席に腰かけていると、浜松町にそろそろ着くぞというところで、それまで外を眺めていた父が口を開いた。一緒に行ってくれてありがとう。この歳じゃ一人で行くのも難しかっただろうし、一緒に行ったから楽しかったし、心強かった。どうもありがとう。
3日間さんざっぱら、わぁわぁと小学生男子のように軽口を叩いて騒いでいたのに、締めにはしっかり私の目を見据えて、こう礼を口にするのだ。参りました。私はただ、きちんと父の目を見て(といっても紫外線対策でサングラスごしだけど)言葉を受け取り、「こちらこそ、ありがとうございました」と頭を下げるしかできなかった。
この言葉を受けての自分の気持ちのありようというのを、しばらくうまく言葉にならないままいて、翌朝プールを泳いでいるときに、はたと思い当たった。私はこの父のもとに生まれて育ててもらえて、本当によかったと、感謝の気持ちで満たされていたのだ。
父は浜松町で私と別れた後、その足で近所の親せきの家までおみやげを持っていき、伯母(私の母のお姉さん)夫妻と晩酌を楽しんだよう。おみやげ話をたっぷり聞かせて帰ってきたらしい。伯母からも「いい旅だったようですね」と、その日のうちにメールがあった。よかった、よかった。
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