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2014-10-15

境界線を引く人

最近は人と会って話し込んだり、本を読んだり、考え事に至らぬぼんやりとした思索で時間が流れていっていて、インプット期間といえば聞こえはいいけれど、役立たずといえばそれまで…というような過ごしようだった。今日久しぶりに仕事の本を読んで、あぁしばらく現実世界の本を読んでいなかったんだなと自覚した。そろそろこっち世界に戻って役に立たねば。ということで、ここで一区切り入れるために、ぼんやりとした「境界線」関連の話をメモしておく。

僕たちが『存在している』と認識しているものはすべて、僕たち自身がそういうふうに存在するように『区別』しているからこそ、そういうふうに存在しているのであり、決して『そういうもの(実体)があるから存在している』のではない(*1)

というわけで、噛み砕いて言うと(言ってもらうと…)

本来、世界の真の姿とは、「AともBとも言えないような、どっちがどっちにとも言えないような、そんな全てがドロドロと混じりあった海のようなもの」なのだ。僕たちは、そんな「ドロドロの海(全てがつながった巨大な関係性)」の中から、わざわざ「これをA」「あれをB」として区別して切り出し、また、「A→B」という特定の方向の関係性のみを切り出し、「○○現象」などと名付けたり「AがBにした」などと語ったりしているのである。 もちろん、そのような「名付け」「語り」は、何らかの「価値基準」で切り取った世界の「一部分」にすぎないのだから、その「名付け」「語り」が世界(全体)を正しく表現するということはありえない。(*1)

というわけなのだなぁと…(お任せすぎる)。

境目のない世界に、境界線を引く。境界線を引くのは常に人間であり、人間が何らかの価値基準に従って、言葉を与え、どこかに境界線を引き、区別を生み出している。逆に言えば、そこに誰も何の価値も見いださない限り、そこはドロドロと混じりあった海のままなのだ。境界線は引かれないし、言葉は与えられない。

だから、どんなふうにも、境界線は引けるのだ。人力で境界線を引いて区別しているのだから、人力でその境界線を消して引き直すこともできる。混沌としたドロドロの海のまま、境界線を引かずにおくこともできる。不用意に、意味のない言葉を与えないこと、下手に区別を持ち込まないこともできる。人力でしか、境界線は引けないのだから。

どんなところに意味を見いだし、どんなところに価値基準をおくのか、その信念によって境界線の引き方が変わるから、そこんとこを、慎重にやりたいなぁと思う。明るい意味をもつほうへ。

そして、素はできるだけ無でありたい。用を果たしたら、もとに戻って価値基準をできるだけまっさらにする。そうやって案件、用件ごとに「行って帰る」ができるのが理想かなぁと思うんだけど、やりすぎると今以上に味気ない人間になってしまうのかもしれない。

それはとりあえず保留としても、最近読んだ別の本にも「境界線」という言葉が出てきて、上と重ね合わせるようにして味わった。いろんなところで境界線の上に立っている人がいる。自分だって、あるところでは立っているのだろうし、この先新たな境界線に出くわすこともあるだろう。そこに立つ人の気持ちに心を寄せる思慮深さを大事にしたい。

自然を守ろう、環境破壊はいけないことだというのは簡単で、まったく正しいことのように思えますが、電気を使い、文明がもたらす便利さを享受しているのは、ほかならぬ自分たちであることも、見逃すわけにはいきません。 境界線の上に立つ、というのは、たとえば、そういうことです。 どちらか一方が正しいと信じこんで、疑いもしない人間は、もう一方を、理解しがたい他者として糾弾して排斥しようとするかもしれない。理想を掲げて声高に自分の主張をする人間は、しばしば、そういう己の傲慢さに気づかないものです。 のぼせやすく、そのことで失敗ばかりしていた私は、自分が、そういう人間になってしまうことをなによりも恐れました。 自分は正しい。そう強く思うときほど、注意深くなろう。物事は、深く考えれば考えるほど、どちらとも言えなくなるのだから。 境界線の上に立っている人は、私に、そのことを教えてくれました。両側が見えるからこそ、どちらにも行けない哀しみがあるのです。 (*2)

そろそろ、現実世界に戻らねば。

*1「史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち」飲茶/マガジン・マガジン
*2「物語ること、生きること」上橋菜穂子(構成・文:瀧晴巳)/講談社

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