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2014-08-25

ウェブデザイナー不要論の感想メモ

「ウェブサービス開発の現場におけるデザイナー不要論と5〜10年後の生存戦略」という話を、テーマ的に興味深く拝読した。それの感想と疑問をメモったのだけど、疑問なとこは…、私の内容の理解が浅いだけかもしれないという不安が大きい。でもそれが等身大なので仕方なし。

●所感
エンジニアの職能領域が需要高まってる感、今後はさらに!という見通しはすごくあるし、啓発的なメッセージ、具体的なアドバイスについても刺さるところが多分にある刺激的な文章だった。

一方で、「優秀なエンジニア」と「非優秀なデザイナー」(あるいは「そこそこのエンジニア」と「ダメダメなデザイナー」)を比較している感じもよぎった。つまり職種関係なく、エンジニアでもデザイナーでも優秀だったら生き残れるし、優秀じゃなかったら生き残れないよ、という話のようにも読めた。

あと、エンジニアの職能のほうにも、けっこうマーケティングとかサービスデザイン的な職能が入っていると思うので、エンジニアもデザイナーもマーケティングとかサービスデザイン的な職能が必要になるよ、という話のようにも取れた。

●疑問1

「平均的には、エンジニア/プログラマーのほうが、デザイナーよりも学力が高い」
とあるのだけど、この「学力」は何の科目の学力なんだろう。

エンジニアが得意とする学問領域において、エンジニアの学力のほうが高いというなら、そりゃそうだろうなということになるけれども、じゃあデザイナーが得意とする学問領域で比較してみたらどうなのだろうと。

そうすると、デザイナーの職能と深い関連がある学問領域で、定量化して比較できるテストがない、ということになるのかもしれないが、だからといって、定量化しやすいエンジニア優勢の学問領域だけで学力比較して論ずるのもちょっとバランスが悪い気がするし。そこんとこの「学力」の学問領域って何なんだろうなぁというのが気になった。

「知能が高い」という比較結果があれば、そうなのかーと受け止める道筋もひけるんだけど、「知能」で選別していくならやっぱりエンジニアかデザイナーかの問題じゃなくて、職種問わず優秀な人材かどうかの問題?ということにもなってくる。

でも私たち人間て、「知能」という単一の序列評価を越えて、それぞれがバラエティ豊かな資質・能力を発揮しあって、もちつもたれつ生きていけるのが社会的動物としての良さじゃあないかって思うので、そっちに寄っていくのはちょっと参ったなぁという気持ちがわく。50年〜300年単位くらいの変化で、そうなるのかもなぁという気もしないではないのだけど。

●疑問2

「ウェブサービス開発に携わるウェブデザイナーの生存戦略」というドメイン(問題領域)の議論なので、その前提をしっかり意識したうえで読んでほしい。ウェブ制作全般の話をしているわけではない。
として、ここでウェブ制作のウェブデザイナーを対象外としている。これは、その領域であればウェブデザイナーは生存する見立てをしたからか。それとも、この後の「生存戦略」を2つに絞って分かりやすく提示する上で、解を散漫に広げることを避けたかったからか。

後者のような気がするんだけど…。もし前者だとしたら、ウェブ制作のほうでは今後、どんな見立てがあるだろう。例えばシステム・機能の開発は、一握りの天才エンジニアが作った汎用的な仕組みが世界中に出回って、個別のエンジニア需要は下火になる。一方で、各ウェブサイトごとに細部までチューニングしてインターフェイスを最適化できるデザイナー需要は生き残るとかって、Webサービス開発と真逆の読みもあるのかな、とか妄想した。

インターフェイスデザインのほうが、案件ごとに個別最適化の仕事需要がある感じもするのだけど、どうだろう。あまたある中小企業のウェブサイト運用を想定すると、インターフェイスを細部まで作り込んで、その場で形に起こせる人の数はけっこう必要な気もする。大きな仕事より、チューニングする感じが強くなるかもしれないけど。

「形を与える」というのは専門能力だと思う。どうしたいかというコンセプトがあって、評価や文句は言えても、だからこうしたら分かりやすいでしょ、迷わないでしょ、惹かれるでしょっていう「形」は与えられない、という人は(私もだが)巷に多い。これを生み出せるのはやっぱり特殊能力だなぁと思っている。それが顕在的な需要として、どれだけ成立するかはわからないけれど。

というわけで、ウェブ制作全般のデザイナーについて、今回は除いたけど、実は別の見立てがあるようだったら、ぜひ伺ってみたい話。

●疑問3
この文章は、最初はウェブデザイナー全般で書いていたんだけど、後からウェブサービス開発に領域を限定したのかなという感じもしたけれど、そういうわけではないのだろうか。

ウェブサービスのアートディレクターがやる仕事として、広告のキャンペーンのプロジェクトを挙げているところがあると思うんだけど、これは広告キャンペーンのプロジェクトもウェブサービスのうち、ということなのか。ウェブ制作のデザイナーと、ウェブサービス開発のデザイナーが、どんなふうに分類されているのか、自分の理解が足りていない気がする(まま、これを書いている)。でもWebサイト制作ならまだしも、Webサービス開発でBootstrap使って制作済ますイメージがあまり持てない。

●メモまとめ
適切な言葉を選べていない気もするが、ざっくり「アナログな人間の要件を、デジタルな機能に展開する」のがエンジニアとして、「デジタルな機能を、アナログな人間向けインターフェイスに展開する」のがデザイナーとすると、この変換作業は双方とも必要な気がする。

需要がどんな感じで変化していくかは、都市と地方、サービスとサイト、クライアントの業種・業態・規模感とか、想定を変えると見え方も違う気がするので、どの傾向はどこまでを範囲として見たときにそう言えそうか、みたいなことを吟味しながら丁寧にとらえていきたい。

それにしたって、変化激しい時代に、一人の人間に求める職能要件を言い出したら切りがないのだけど、いったいどれくらいのことを一人の人間に任せてチームを編成するのが社会システムとしてバランスよいのだろう(天才は除く)。まぁ、いろいろあって答えなんてない話か。理想と現実を照合しながらチューニングしていく感じになるのかな。エンジニアとデザイナーという職種分類も、今の時代の一時的な分け方に過ぎないっちゃー、そうなんだろう。とりあえず、丁寧にとらえて、明るい方へ。

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