親知らずを抜く
歯を抜くとは大変なことですよ。「5分くらいで終わりますよ。そんなにたいそうなことではありませんから、大丈夫ですよ」、そうおっしゃいますけれども、いや、麻酔しないと痛いことなわけでしょう、なんかものすごいよくわからないやつでメキメキ、メキメキって顔ごと揺れましたでしょう、終わった後ぶくぶくぺってすると真っ赤でしたでしょう、「はい、終わりましたよ」と言われて、願わくばすぐ失礼したいのに腰くだけちゃって、こりゃすぐには立ち上がれますまいという感じになってしまいましたでしょう、「大丈夫ですか、ちょっと横にして、ゆっくりしていきますか」というので、目を閉じてしばらくじっとしていたら目から涙がこぼれてきましたでしょう、はぁ痛いというんじゃない、悲しいというのでも言い切れていない気がする、罪悪感、喪失感、この涙はなんだろう、意味づけの言葉を探してみるも、これという言葉が見つからない、かといってそう複雑な感情とも思われない、これこそ人間の真正な感情の表出のように感じられますでしょう、処置が終わった後も違う薬を3種類も処方されて、これ飲まないと平穏ではいられないというわけでしょう、「今日はお酒と運動は控えてくださいね」って、もう全然後までひきずってるってわけでしょう、たいそうなことが私の身に起こり、今なお起こっているというわけでしょう。やっぱり、歯を抜くとは大変なことですよ。
いやぁ、大変なことをしてしまいました。このたびは私の一存で、多大なるご迷惑とご心配をおかけしまして、合わす顔がないとはまさにこのことです。体内の小人諸氏におかれましては、怒るもの、嘆くもの、意気消沈するもの、さまざまあろうかと思われ、あるものはまた私が服用した薬によって、その感情の発露すら断たれている状況かと思うと、胸が痛みます。自分がしたことの事の大きさに、今さらながらびびっている次第です。しかしながら、まだもう2本抜く予定になっており、これをともに乗り越えていただきたく、どうかご理解賜りたい。
親知らず 抜いた歯に詫び 親に詫び
腰はくだけて 足もとゆらり
歯医者を出た後、うたわずにはいられず詠んだ一句。下手っぴなのもまた、ひとつの歯が全身、全霊に強大なる影響をおよぼす様をえがくエッセンスとして味わえるというものです。
読んで共感されているかた沢山いらっしゃると思います。
「虫歯を抜く」のと「親知らずを抜く」のでは、なぜか重みも痛みも(もしや罪悪感のようなものも?)、全然違うんですよね。
あとは親知らずは大人になってから抜くから、身体も心もダメージが大きいのかもしれませんね。
私は30代の頃、歯茎に埋まってて表に生えていない親知らずが隣の歯を刺激して痛んだので、切開して埋まっている親知らずをドリルで細かく砕いて抜く、、みたいな結構大袈裟なことをして、そりゃー熱も出たし物も食べられないし、数日大変でした。。
顎の骨格が小さいので、私も残り3本くらい親知らずが外に出られずに埋まっているはずです。どきどき。。
投稿: ベル | 2014-06-08 10:49
ベルさん、ほんと親知らずを抜くのは独特の痛みをもちますよね。自然にあらがう感じというんでしょうか。熱とか出ると、ほんと身体に無理を強いたんだな、歯だけの問題じゃないんだって痛感させられますね。私はこの後立て続けに2本抜く予定になっていて、どきどきであります。下のが一番大変そうなのですが…。はぁ、憂鬱です。ベルさんがそのままそっと過ごせるように祈っています!!
投稿: hysmrk | 2014-06-08 23:53