情報のまちがいを見抜く目
言わずもがな、世の中は情報で溢れかえっており、いまや発信元は法人個人さまざま、権威友人知人他人もごちゃまぜで、発信者のバックグラウンドも多種多様だ。情報の根拠・精度もまちまちなら、情報が発信された背景にもいろんな人の思惑が絡み合っているふうで、書き手の文章力もさまざまなら、読み手によっても受け取るものがちがってしまう。「正しい情報とは何か」というのは、大変に難しい時世だなと思う。
だけど、だからこそといってもいいけれど、「まちがった情報とは何か」というのを一旦立ち止まって整理しておくのは悪くない。最近読み返した本に、これに言及する内容があって、なんだか身にしみたので、とりあえずリストを書き留めておく。
次のまちがいリストは、議論の技術や科学についての理論家や専門家によって整理された一覧(*1)を、R.J.Marzanoら(2003)が大きな4つのカテゴリーに分類したもの (*2)。私たちは情報を発信するときも、受け取るときも、こうしたエラーをおかしがちだ。
ほんとうは、いろんな具体例をひきながらまとめたいところだけど、あれこれ考えていると切りがなくて何時間も経ってしまうので、とりあえずここに項目だけ並べておく。都度、身のまわりの具体例と照らし合わせながら吟味したい。酒の肴にしたら、一項目で一杯いける感じがする。
4つのエラーカテゴリー
●論理のまちがい(7種類)
矛盾:相矛盾した情報を提示してしまう
偶然の一般化:例外をもとに論証していることに気づかない
原因の誤認:出来事が起こった順序が乱れて因果関係がおかしくなったり、出来事の背景を単純化しすぎる
先決問題要求:主張の根拠が、主張の言い換えにすぎない
論点回避:論点について触れないようにトピックを変えてしまう
未知論証:「対立する主張が立証されていない」ことを根拠にして主張する
合成/分割:一部しかわかっていないのに全体について主張する(合成の誤謬)/全体の傾向をもとにして、それがあてはまらない場合もあるのに、部分についてその傾向を主張する(分割の誤謬)
●攻撃(3種類)
井戸に毒を入れる:説明しようとする立場に完全に入れ込んでいるため、自分と反対の立場の人が示すものすべてを否定する
人身攻撃:人の主張を、(真実でも疑惑にすぎなくても)その人への評価の低さをもって退ける
権威濫用:主張の妥当性に権威を用いる
●参照における弱点(5種類)
偏見による判断:正しいと思っていることを支持する情報を受け入れ、それに反する情報は否定する
信頼性の欠如:対象となるトピックについて、信頼できない情報源を用いる
権威論証:論点に関して最後に権威を持ち出す
多数決論証:主張の正当性の根拠を、その人気に頼る
同情論証:かわいそうな話を根拠に主張する
●誤情報(2種類)
事実の混乱:正しそうに見えるのにすでに正確ではなくなった情報を用いる
概念や一般概念の誤用:概念や一般概念を誤解したり間違って使ったりして主張する
義務教育の情報リテラシーとかは、この辺をブレイクダウンした学習教材をつくって、まずは世の中にあふれる情報の読み方を学ぶと良さそう。大人社会は手をつけられないほど混沌としている気がする今日この頃だけど、情報に振り回されず、うまいことつきあっていきたい。
*1: Johnson-Laird, 1983; Johnson-Laird & Bryne, 1991: Toulmin et al., 1981
*2: R.J.マルザーノ、J.S.ケンドール著「教育目標をデザインする」(北大路書房)より
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