「モバイルIAシンキング」が出る
戦友?の坂本貴史さんが執筆した本が出る。「モバイルIAシンキング クロスチャネル時代のIA思考術」というタイトルで、以前出した「IAシンキング Web制作者・担当者のためのIA思考術」のシリーズ第二弾という位置づけ。前作の紹介は、ここでしている。
3年前の前作は、基本PCサイトをベースとしたIA実践書だったのに対し、今回はマルチデバイス時代に対応し、モバイルサイトに焦点化したIA実践書。2冊とも、演習を通じて知識以上のスキルを学ぶことをねらった本だ。
前作同様、本の奥付に「企画協力」というかたちで私の名前を入れてくださっているのだけど、今作はほんと、沿道で応援するおっさん状態の働きしかしていないので、ちょいときまりが悪い。
前作のときは、著者がその執筆に着手する前から一緒にIAテーマの講座づくりをしていて、こちらで演習の設計をした課題も書籍の素材として使われていたから多少の協力感があったのだけど、今回はひと通り書き上げたところで編集者にお声がけいただき、ゲラの演習部分を数個つまみ読み。
本作りも大詰めなら、こちらもちょうど仕事が半端なく立て込んでいる時期で、双方かなり切羽詰まった状態でのやりとりだったので、「課題」の出し方に焦点をしぼって、いくつかの演習に共通する改善提案を一つだけさせてもらった。言うだけ言って、そこからはこちら完全にノータッチ。ラストスパート、著者と編集者でその部分をひと通り書き直していったというから脱帽である。
そして本日、出来立てほやほやの書籍を編集者からいただいた。会社帰り、演習部分をつまんで仕上がりを見てみる。「課題」の出し方に多少もっさり感はあるけれど、やはりお題想定を置いての著者の「思考のプロセス」「回答例と解説」を読めるのは面白い。
実際の仕事の現場では役割分担が前提だから、たとえ同じプロジェクトメンバーでも、AさんもBさんも完全に仕事がかぶっているということはないだろう。一方、研修や勉強会、こうしたトレーニング本では、同じ課題想定で個々人が思考してアウトプットしたものを、複数の人で照らし合わせて吟味できるのがおいしいところ。同じ想定で課題にあたったのに、自分には持てなかった視点、表現できなかったアウトプットを突きつけられ、そこに痛みを伴う発見と学びがある。
演習部分をささっと読んだ感想としては、個々の演習体験から学ぶことより、IAシンキングの長期的な訓練方法を伝えるところに熱が入りすぎていて、演習まわりのポイントがやや抽象的な説明に寄っている感もある。ただ見方を変えれば、著者が日々どんな視点をもってさまざまなサイトを分析的にみているのかを知り、取り入れるヒントが注入されている文章だ。
あと、これは私の見立てにすぎないけれど、著者はIAの実践家然としている人物で、難しい概念をいかに正しく言語化して正しく知識習得するかというのではなく、実務にどう活かすかという実際的な価値に焦点を置く。なので、正確な意味を確認するための辞書的な位置づけではなく、より妥当性高い解の導き方を探るプロセスをたどって実務力を身につけたい人には、良いきっかけが詰まった本だと思う。
書店発売日は4月8日、ネット発売日は4月11日とのこと。興味のある方は、ぜひお手にとってみてください。
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