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2013-12-17

研修の効果測定

一つ前に書いたgihyo.jp取材記事の後編が公開されました。研修の効果をどう測るのかとか、クリエイティブ職の能力を誰が評価するのかとか、その辺に問題意識をおもちの方に、ひとつでも拾ってもらえるものがあれば幸いです。

研修の効果をどう測る?メンバーの能力を誰が評価する?
~株式会社アイ・エム・ジェイ川畑隆幸氏が赤裸々に語る!IMJ人材育成への挑戦

研修の成果をどう評価するかは、多くの業界で難しい問題とされているテーマだけど、Web業界もご多分に洩れず。

ざっくり評価レベルを分けるなら、カークパトリックによる学習成果の4レベルというのがわかりやすいけど、多くの場合、効果測定はレベル1どまり。レベル2以上は、その効果測定にかける費用対効果ってどれだけあるのよ…ということも多く、なされないことが多いのではないかと。以下、個人的な理解で超ざっくり。

レベル1-Reaction(学習者の反応)
研修直後に受講者アンケートをとって、学習者の自己申告ベースで満足度や理解度なんかを調べる

レベル2-Learning(学習者の成績)
研修直後に筆記テストやパフォーマンステストを行って、学習目標とした知識・スキル・態度をどれくらい習得しているかを調べる

レベル3-behavior(学習の転移)
研修から3ヶ月とか半年とか期間をおいて、本人・上司・部下にインタビューするなどして実務での活用具合や成果を調べる

レベル4-result(組織の結果)
研修から一定期間をおいて、売上や利益への貢献を定量的に調べたり、ステークホルダーへのアンケート調査とかで定性的情報を集めたりして、研修実施がどれだけの経営的インパクトをもたらしたかを調べる

みたいな。しかしレベル3以上は、現場ですこぶる発揮されていたとしても、それが本当に研修のおかげかわからなかったり、学習したことを現場で発揮する機会がほとんどなくて身についているか測りようがなかったり、なかなか効果測定が難しい。

さまざまな変数でもみくちゃになった現場で、実際どれくらい意味があったのか調べていくとなると、やっぱりインタビュー調査を採用することが多いよう。IMJが事後インタビューで定性情報を集めているのは丁寧な仕事だなぁと感服。

あと効果測定で注意したいのは、やった研修のゴール設定に対応した効果測定をすることかなと。研修にかぎらず、何かの施策を打ったときって、結果への期待が過剰に膨らみやすいもの。でも、例えばその研修が、ごく短時間で「あるテーマの概念や手法を知ること」「その概念や手法を自分の仕事に活用する有効性に気づくこと」までをゴールにしたものであれば、事後調査して「実務で役立てていない→研修をやっても意味がなかった」と結論づけてしまうのは早計。そこまで講座設計に組み込んでいなかったのであれば、それは研修の効果測定として不釣り合い。

もし、その研修によって実際的なスキル獲得をもっと直接的に図りたいのであれば、その限られた研修時間内でスキル獲得が見込める層(一定の予備知識や経験・スキルをすでに習得済み)に絞り込んで受講者を集め、相応の時間を割き、「できる」ようになるための講座設計を作り込む必要がある。

また、研修当日に留まらず、職場に戻った後のフォロー体制によっても結果は左右されるので、この辺もどうするかが大きな問題。というのは、IMJの取材記事中の「批判的な声がまったくないわけでもなく〜もっとプロジェクトにアサインする仕組みを考えた方がいい」に通じるところかなと。

どこまで会社として学習を支援するかは、それぞれの会社の考え方や事情によってさまざまなので、私としては、それぞれの状況にフィットしつつ、きちんと成果の上がるサポートを志していきたいなと思う次第。

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