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2013-12-10

対象者と同業者のコミュニティ

私は、自分が生業とする人材開発系のセミナーやコミュニティ活動にほとんど参加経験がない。時折関心があるものに出かけたりはしてきたけど、相当消極的なもので、能力開発系、キャリアカウンセラー系は知り合いも少ない。

それに比べると、Web系のセミナーやコミュニティ活動にはよく参加してきた(あくまで自分比)。自分が能力開発・キャリア開発のサポートをする対象、つまり「人事の人」ではなく「Webの人」と関わってきた。意識的に選んできたというわけでもなく、気づいたらそうなっていたという感じなのだけど、その人たちの集うところに足を運び、話を聴いたり、運がよければ一緒に語らえることを大事に思った。

個人的に、Web系で出会う人たちには価値観や思想のようなものにシンパシーを感じることが多く、それも大きかったと思うけれど、それはまた別の話。

その人たちが今学ぶべきテーマや潮流、知識基盤として押さえておかなければならない概念を、専門的にはわからずとも大枠で理解しておくこと。その人たちが日々何をどんなふうに感じながら過ごしているのか、何を好ましく思い、何を大事にしたくて、何に嫌悪し、何に憤りを感じるのか。その人柄や指向を深く理解しておくこと。仕事あるいはキャリア上にどんな悩みや問題意識、課題認識をもっているのか。こうしたことに普段から触れていることが、サポートする人間には何より大事に思われた。

実際クライアントさんからご相談いただいたときに、その学習テーマにおいて何がハードルになるかを知っておくことはカリキュラム設計上重要であるし、それには日頃の洞察がものを言う。また、その案件の受講者に適した講師を引き合わせられるように、登壇者がたエキスパートと講師人脈を形成しておくことも大切だ。人見知りで、ここはなかなか、まだまだで反省なのだけど、そのときどき受講者にぴったりの講師を、ぴったりの出会い方・関わりあい方で引き合わせられたときは、舞台袖で本当に幸せな気分を味わう。

演習課題を作り込んだりするときも、普段から蓄積している背景知識がものを言う。学習効果を高めるためには、学習者にとって関連性と真正性の高い、彼らが没入できる課題を作り込む必要がある。学習者が自分のなかにある経験や関心事と自然に関連づけられるような演習課題を提示すること、学習者の仕事現場で「あるある!」と思える本物感が備わった演習課題を提示すること。

そのためには、よくよく彼らの生態を理解して丁寧に課題を作り込む必要がある。それは本当に創造的な仕事で、私も立派にできていると胸はって言える身の上じゃないけれど、とにかくそうしたところの重要性を認識して、丁寧に学習の場を設計し、道具立てを整えていくのが、ニッチな領域限定で人材育成に携わる自分のなすべき仕事だと思っている。

これと真逆の、全業種・全業態対応の汎用的研修に受講者として参加したことがあるが、あのとき体験した「しらけ感」を、自分の仕事で学習者に感じさせることはしたくない。それはつまり、私が横展開ビジネスにまったく貢献しない指向を表しているのだけれども…、こういう自分を生かしてくれる会社に感謝しながら、一つひとつクライアントさんにとって良い仕事を手づくりで納めていって、それが別の形で会社への貢献になったら一番だ。

という一方で、交流を「Webの人」だけに固執しているのは閉じた考え方ではないかと最近思い始めていた。もっとオープンに、人材開発系やキャリアカウンセラーの先輩がたから学び、また学びあえる自分に成長していくことで、私が「Webの人」に提供できるサポートも、広がり深まっていくのではないか。そんな折、私が最近で唯一参加経験をもつ人材開発系のコミュニティに足を運ぶ機会があり、思いを強くした。軸足を変える気はなく、こちらを大きく広げる気もないのだけど、この直感は大事にしたい。「深い直感をもって、日々を丁寧に生きること。」というハイネの言葉を知り、感じ入った木枯らしの頃。

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