「風立ちぬ」とタバコの扱い
図らずもFacebook上に心のうちを長々書き連ねてしまったので、ここにも転載して残しておく(個人的記録です)。映画「風立ちぬ」でのタバコの扱いについて(要望)を読んで。投稿に対していくつかコメントを頂戴したのだけど、それに対する自分のコメントやら、編集後記もあわせて。
●投稿(思った)
こういうの、ほんとダメ。体に直接来る。心臓がどきどきして、喉のあたりが苦しくなって、目頭が熱くなってしまう。要望するのは勝手だが、「なぜこの場面でタバコが使われなくてはならなかったのでしょうか。他の方法でも十分表現できたはずです。」はダメ。どうしてそんなこと言えるんだ。それこそ、「この一文を含めずとも要望はできたはずです。」と言いたい。暴力だと思う。
●ご意見をいただいてのコメント1(考えた)
要望する人が出てくるというのは、事態としてあるだろうなと思います。それについては、私は静観です。ただ、「他の方法でも十分表現できたはずです」というのは、軽率だと思うのです。作り手の産みの苦しみを知らずして、決して述べられるものではないと思うのです。その分別をもつことは、人としてとても大事なことだと私は思います。
●ご意見をいただいてのコメント2(よく考えた)
この映画は、大人向けに作られたもののようですが、宮崎アニメともなれば子どもが観にくることは十分に想定範囲内。粋な感じで喫煙シーンを挿入するなら、年齢制限を設けるなどの配給側の対応があるべきではなかったかとか、そうした議論はあってしかるべきなのかもしれません。あるいは、そうした議論が実際にあったのかもしれません。その辺りのべき論については、私は世界の動向にもうといですし、積極的な主張はもちません。
「他の方法でも十分表現できたはず。」について私が反応したのは、私には、他の方法で表現することの難しさがいかほどか、想像もできなかったからです。作った当事者以外に、それについて想像が及ぶ人はいないのではないかと思ったからです。想像もできないことについて、安易に「はず」と言うのは、作り手に対して失礼だと感じたのです。
この映画では、単に時代背景を表すのにタバコの喫煙シーンを挿入しているのではなく、物語のなかでもっと重要な意味をもたせて意図的に挿入していると私は感じ取りました。映画全体に横たわるその役割を、1観賞者の私にはうまいこと言葉に表せません。
何かに置き換えて代替させることができるのか、映画を作ったこともなく、評論家でもない私には想像が及びません。ただ、それは決して簡単なことではないし、もしやるならまったく別の物語を作ることを意味するのだろうとは想像がつきました。
作り手には作り手の、観る側に対する期待や信頼があったのではないかとも想像しました。タバコより、もっと物語の本質的メッセージに焦点をあてて感受するだろう、観る側への期待や信頼があったのではないかと、私はそのように感じました。
私は、映画や小説などの物語というのは、切り取ったシーンの善し悪しで評されるものではなく、通してみてみて感じ受けるものが何だったかによって評されるものだと思っています。
ここに書いたことは、1観賞者の思いに過ぎません。私の考えや思いは、ごくごく個人的なもので、それが世の中の多くの人の考えと共通するものとも思っていません。なんというか、私なりに、自分が考えていることを言葉に表すことが、唯一自分ができる誠意の表し方ではないかと思って書きました。
個人的には、胸がどきどきして、とても素敵な映画でした。
●ふりかえっての編集後記(脱力)
SNSやらブログやらはバカ発見器とも言われる。こんな長文をしたためた後は、そうだよなぁ、自分の器をさらしているようなもんだよなぁと思ったりもする。いつか、この器のちっぽけさにうんざりされて、誰かを失ってしまうかもしれない。そんな不安がよぎって怖くなってしまったりもする。
けれど、結局はそれが等身大で本物であるから、離れちゃったら離れちゃったで、受け止めるほかないんだよな。仕方ないよな。そういうところで、納得している。納得して、引き続きこんなような文章をここにしたためていく。不安を抱えながら。人間って不思議なものだ。
« 主観的にとらえた世界の見え方 | トップページ | 「風立ちぬ」の感想のような »
変な心に残ってるモヤモヤは、何処かに出してしまうのが一番ですよ。
何にせよ、一方的な主張で駄目出しをしていることが受入れられない程に日本が思慮深い事が良く判った協会の表明に対するネット上などでの反応でしたね。
投稿: hirojk | 2013-08-16 04:26
hirojkさん、優しいメッセージありがとうございます。
いろんな人が、それぞれに大事なものをもっているのだと、こういう機会にふれるたびに学ぶところがあります。そして、私には私の、そうしたものがあるのだなぁと実感します。できるだけ水のようにありたいと思ってはいるのですが。
投稿: hysmrk | 2013-08-16 07:27