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2013-03-06

淘汰とパターン化の間

slideshareにアップしてFacebookで共有したスライドと投稿コメントを、こちらにも記録かねて共有します。

スライド:中堅Webクリエイティブ職のキャリアを考える(序章)「変幻自在なキャリアを築く」

投稿コメント:とくに綿密な調査を経てまとめたスライドではないのですが(極論すると妄想)、身近でWeb業界の支援活動をしてきて感じ取ったものや仕入れた情報をもとに起こしたスライドです。「Webクリエイティブ職の30代後半から60代までのキャリア」について思うところある方、ぜひお話伺いたいです。情報・意見交換をしながら見立てを直したり対応策を肉づけたりしつつ、小さくとも実態に即した役に立つサポート活動をしていけたらいいなぁと思っています。「スライドがいまいち」なのは、先に謝っておきます…。ご容赦ください。

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で、このまま私的なブログに戻って話を続けますと、まず、なんだかものすごいたくさんの方に見ていただけてびびっているのですが、スライドの中身がどうあれ、キャリアに関するテーマが結構な人の関心高いテーマなのだなという実感が得られてありがたかったです。頑張り方を間違えなければ意味のあるサポートができるはずだ、と思うことができました。またFacebookを中心にさまざまな方のコメントを伺えて、これも本当にありがたい。それをいかに咀嚼して次に展開できるか、ですが。

さて、この問題に向き合うとき必ず挙がる道筋の一つが「淘汰説」じゃないかと思います。直截な(きつい)言い方をするなら、「誰かのサポートがないと前に進めないとか、変化が激しくてついていけないとか言ってる奴は早晩淘汰されるんだから、はなから放っておけばいい」という説です。

これは、この手の問いでは必ず挙がるものなんですが、「業界」ってくくりでみると、もう少し包容力のある見方もできるんじゃないかなぁという仮説も個人的にはあります。「業界」ではなく「職種」までしぼって考えたら、例えば職人系の仕事の場合、甘ったれたこと言うな!と一喝して済むとも思うのですが、「業界」ってくくりで考えると、もう少し関わる人の働き方に多様性をもてるのでは、その方が実は全体構造がつくりやすいのでは、とも思うのです。

寿司職人ってくくりでみると、甘ったれたこと言うな!ってことでも通じますが、寿司業界とか飲食業界ってくくりでみると、業種・業態も多様なら魚市場から店鋪開発・運営まで職種も職階もさまざまで、いろんな働き方の人に支えられて全体構造が成り立っているよなぁと。

まぁWebは新しい業界だし、機械がやってくれる仕事領域もぐんぐん広がっていく業界だと思うので、従来の業界とどれくらい類似し、どれくらい学ぶところがあるかわかりませんが(そして下手に真似ぶべきじゃないとも思いますが)、一気に淘汰説で話を終わらせず、可能性を少し広げて考えてみても無駄にはならんだろうなぁと。少なくとも、サポートを生業にする身の上としては。

具体的な支援策についても、例えば「主要なキャリアモデルをつくる」ことが従来の業界と同様に有効に作用するかは何とも言えません。すぐ古びてしまって役に立たないモデル化ならない方がいいかもしれないし、考えなしにモデルに従うだけになってしまっては不毛だし。Web業界とか関係なく「キャリアモデルなんてない時代だ」という前提に立って、個別のサポートを考えていったほうが有用なら、個別のカウンセリング窓口をつくって、そこでの運用体制を充実させたほうが助けになるかもしれない。

なので、具体策はこれからしばらくいろんな人の話を聴きつつ、それをいかに咀嚼してサポート体制をつくっていったら意味があるのか考えつつ、つくっては改めつくっては改め、やっていけたらいいかなと思っていますが。机上でみるかぎり論は正しいけど役に立たない…みたいなのにはなりたくないなと。

もちろん、サポートなんていらんわい!という人もいる前提です。全部でなくとも一定数の問題をそこに感知するなら、そこに対してできることを、それが先々の業界発展にもつながるような視野をもって取り組めたらいいなと思っている次第です。

あと一方で、パターンがない今の時代&この業界特有のおもしろさも大事にしたい。河合隼雄さんの話にこういうのがあって(「心の深みへ」)、ほんとにそうだよなぁって思いながら読みました。

自由度が高くなったということはおもしろいわけですよ。非常におもしろい。大昔の人で十五で大人になれない人は、おそらく死ぬか殺されるかしたでしょうね。つまり、社会のパターンに入らない者はとても不幸だったわけです。しかし、いまの世の中は可能性がすごく増えている。これはやっぱりいいことだし、社会的パターンにはまらない人でもいろいろおもしろい生き方ができる。

そういう時代に下手に規制やパターン化を持ち込むと、どんどんおもしろくなくなってしまう。最終的にキャリアっていうのは常に一個人にひもづくものなので、一人ひとりに焦点をあわせたところにサポートのあり方がそれぞれあるっていうのは見失っちゃいけないなと。そんなことを思っています。

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コメント

今日websigの後の飲み会でこの話になったので、忘れる前にポイントだけ書きます。

・「誰かのサポートがないと前に進めないとか、変化が激しくてついていけないとか言ってる奴」をサポートしても、どうせ3年で辞めていくんだったら、今の仕事だけやってくれたら良いや、と考える人が一定層いるかも。
・確かにそうだけど、(林さんが業界や職種にしぼってみて見ればと書いてる通り)その人が成長することは、回り回ってサポートした人にも返ってくるはず。
・個人的な体験では、昔一緒にした人たちは、その後(職場が変わっても)結構、パートナーとして組んだりしてます。

暫定結論としては一緒に働く人の成長をサポートするのも自分の仕事の一部としてとらえていきたい、と思っております。(どうやったら良いかはその時々で苦悩しながら)

トライ&エラーはどこかで報われると信じているので、サポートすべき人にもそれを続けてもらいたいですね。

エラーを極小化するためにできる事を考えだすと・・・それはむずかしいですね。

酔っぱらいのコメントでしたw

_takeshiさん
コメントありがとうございます!Websig後の飲み会でも話題になったとは。今度はその場で体育座りしてお話伺いたい…。
「サポート」って、すごく弱者救済的イメージがついて回りやすいんですが、カウンセリングも治療的なものと能力開発的なものに二分されるように、前進的な、戦略的なとらえかたもあると思っています。
実際、誰しもいろんな人のサポートを受けて今の力を獲得してきているわけで、自分は独学で…という人だって間接的には誰かに必ず学ばせてもらっいるはずです。
なので、三年でつらいとやめちゃう前提のサポート体制づくりじゃなくて、対象者をもっと可能性ある個人ととらえてどんな環境づくりをしていったら個人も業界も成長していけるかなぁというのを考えたらいいと思うんですよね。
またぜひお知恵拝借させてください!

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